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下等生物戦隊ウゴクンジャー  作者: 深爪リオ
SECTION2-破甲と双剣-
32/69

2-17.ピンクと緑のブチ

日はまた昇って翌日。

今日は平日ってことで、週一はいつものように講義を受けていた。

ちなみに今は3限目で近代歴史学。

社会情報学と違って綾はこの講義を受けてないから週一は喋る相手もなくぼけ~っとしていた。

講義を真面目に受けてないのは問題だけど、他の学生みたいにお喋りや携帯いじりをしてないだけマシだ。

それに教授は半分ボケてるおじ~ちゃん教授で、生徒を無視して勝手に授業している。

たまに飛び出す時代錯誤のギャグに自分自身で笑ったりと、頭がかなり平和になってらしゃるようだ。

と、週一の携帯電話が震えた。

一応マナーモードだ。


「…何だろ?」


ねぼけまなこで携帯電話を開く。

ディスプレイにはうさぎが前転していた。

綾だ。

週一は筆記用具とノート1冊しか入っていないザックを背負い、蟹印のハンドバッグを手にして教室から出る。

そして通話ボタンを押した。


「もしもし。綾、僕は今授業中だぞ。もう少し考えて…、」


『それどころじゃないって!』


映ったのはすでにウゴクンジャー甲虫に変身した綾だった。


『峪紫短大に今すぐ来て!何だか知らないけど、変な怪人が現れて短大生の髪をピンクと緑のブチに染めてるの!』


…またアホ怪人が現れたようだ。


「どうせデスヘアカラーとか毛染めボンバーとかそういうのだろ?僕が行かなくても倒せよ。綾は強いし。」


この講義は真面目に聴かなくていい反面、終了時に出席をとるというアウトローな講義だ。

テストで出席点が考慮されることを考えると、抜け出すのは何としてでも避けたかった。


『そういう問題じゃないの!確かにバトルヘアカラーは毛を染めるだけしかできないみたいだけど、向かっていくと染められちゃうのよ!しかも凄くダサいピンクと緑のブチに!私、そんなの嫌!!』


「い、嫌ってあんた…。僕だってそんな色に染められるのはやだよ!」


『週一君!正義のヒーローなんだから多少の犠牲は払わなきゃだめ!ホラ、こうしてる間にも哀れな短大生の髪が…!』


「…でも、出席のこともあるから、」


『来なかったら後で四の字固めだから。じゃあ、待ってるね。』


一方的に電話は切れた。

数秒後、固まっていた週一が力なくうなだれる。


「…うぅ、何で僕が…。」


その声はいつにも増して情けなかったという…。


-----------------------------------------------------

「ありがとう週一君。でも、いいよね?週一君の髪も染められずに済んだんだから。」


峪紫短大の片隅に卒倒しているウゴクンジャー蟹に綾は語りかけていた。

その傍にはべコベコにへこんだ巨大スプレー缶…もといバトルヘアカラーが転がっている。

そう、彼らは辛くも敵に勝利したのだ。

…ウゴクンジャー蟹に変身して登場した週一。

甲虫は嫌がる彼を持ってジャイアントスイング。

バトルヘアカラーに投げつけたのだ。

石ころではダメージを与えられなかったバトルヘアカラーだが、週一の捨て身の体当たり(綾が投げたのだが)はクリーンヒット。

ヘアカラー光線を出す余裕なくして倒れた敵に、綾はマウントパンチを繰り返し、勝利したのだった。


「…本当にありがとね。意識取り戻したらハンバーガー、おごってあげるから。」


弾として使用された哀れな蟹に綾は手を合わせる。

その時だった。


「ッ!逃げるなっ!このっ!!」


どっかで聞いた覚えのある声が正門の辺りから聞こえた。

そして破壊音。


「逃げるなって言われて逃げないヤツはいないらしいモン!」


声のしてきた方向を綾が見ていたら、足が生えた巨大なティシュ箱がこしゃまっくれた声で叫びながら逃げてきた。

それを追って沙紀が駆けて来る。

響いていた破壊音は、彼女がそいつを殴ろうとして避けられ、どっかの壁か何かをブッ壊した音だった。


「オイラは体内のティッシュを捨てれば捨てるほど軽くなるモン!だからお前がオイラに攻撃を喰らわせることなんて無理だモン!」


よく見たらティッシュの一面に顔がついていた。

機関車トー○スみたいな顔だ。


「このっ!!いい加減にしないと…承知しないよ!!」


「ぎゃはははは!このスペクトラルティッシュ様のスピードに、」


そこまで言った時、ティッシュ野郎は躓いて転んだ。


「ひっ!?ま、待つモン!!オイラはまだ死にたく、」


怯えた表情で振り返るスペクトラルティッシュ。

でも、それ以上言う前に沙紀の膝が顔面にめり込んでいた。


「…ふぅ。弱いくせに手間掛けさせて…。」


昇天したティッシュ怪人を見下ろし、沙紀は呟いた。

そして自分を見ている綾に気付く。


「あれ?綾さんじゃない。どうしてこんな所に?」


「私はここでアレと戦ってたの。ホラ、そこに転がってるスプレー缶。」


バトルヘアカラーの遺体を見て沙紀はふうんと頷き、そいつの近くに卒倒してる蟹を見た。


「ああ、週一君?見ての通り気絶してるよ。」


「またアホ怪人に1発でやられたってワケ?」


苦笑して沙紀は言った。


「ううん、今回は活躍したよ。捨て身の体当たりが勝利に繋がったんだから。」


「…へぇ。やるじゃない、センパイ。」


自分がぶん投げたってことはちゃっかり言わない綾。

沙紀は少し目を見開いたものの、疑いもせずに納得した。

まあ、彼女の場合は動くドール時にも週一の活躍を見てるから余計にだろうけど。

笑いながらウゴクンジャー蟹の元へ歩み寄る沙紀。

しかし彼女は突然立ち止まる。


「…凄いね。あたしも今まで気付かなかったよ。」


沙紀はそう言って建物の陰を睨み付けた。


「ははっ、バレちまったか。」


物陰から明るい男の声がした。そしてゆっくりと1人の青年が歩み出てくる。

臙脂色の着物のような服を羽織り、背に刀を2本差した青年。

それよりも何よりも目を引くのが、そいつが植木鉢を帽子みたいに被ってたことだった。

でも、深く斜めに被って片目だけ出してるその姿はけっこうカッコよかった。


「…また変なのが…。」


綾が溜息を吐く。

こんな仰天格好してるヤツっていえばダークキャン・Dくらいしかいないだろう。


「初対面相手に変なのってのはねぇだろ。傷つくぜ。」


青年は苦笑し、どっかの国の紳士っぽく帽子…ならぬ植木鉢を取って礼をした。


「俺はダークキャン・D四天王の1人、双剣のウェキス。よろしくな、お嬢さん方。」


…こうして新たな四天王との戦いの火蓋が切って落とされた。

【初登場キャラ】

・バトルヘアカラー

・スペクトラルティッシュ

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