2-16.リバースドール
ポコッ!ペシッ!
へっぽこな打撃音が響く。
夜の街、とあるビルの屋上で2つの影が戦っていた。
「…フッ、やるな。」
片方は冥介だった。
紺のやたらと長いジャケットをまるでマントのように翻し、よく分からん構えを取る。
かなりカッコいい構えだ。
でも、カッコいいだけで実戦には全く不向きな格闘ゲーム的な構えだってことは周知の事実だった。
「おにいさんもお強いですねぇ♪私ぃ、ちょっと感心してますぅ♪」
そう言う声は、少し前に週一と沙紀が戦い、ダンプにパコッって撥ねられて逝去するって言うアホな最期を遂げた動くドールのものだった。
しかし、その姿は前と違っている。
前回はタートルネックのTシャツにGパン、そしてスニーカーっていう運動的な格好だったが、今回は何とも妙なひらひらデザインの白い服にスカートっていう、激しい動きには不向きな格好をしている。
しかもドラ○えもん的なおだんごお手々だったのが、ちゃんとした5本指の手になり、背中には白い翼が生えて、おまけに頭上には輝くワッカがあった。
「リバースドール、お前の目的は一体何だ…?この世界をどうするつもりだ?」
構えたまま冥介が訊ねる。
するとリバースドールと呼ばれた怪人は人懐っこい笑みを浮かべた。
「さあ。何をすればいいんでしょうか?」
…少しの沈黙が流れた。
「ご主人様に言われたんですぅ。『ウゴクンジャーを1人でもいいから倒せ』って。で、さっきおにいさんを転ばしましたよね?戦って倒すのも転ばして倒すのもどっちも倒したのには間違いないからそれで任務完了なワケなんです。私、ご主人様の次の命令がないと何にもできないんですぅ。」
あははって感じで笑うリバースドール。
冥介は眉を顰めた。
コイツに会ったのは今から10分ほど前。
レバー煎餅を買ってコンビニから出てきた彼をいきなりコイツが転ばした。
それで何で自分を転ばしたか聞いたところ、ダークキャン・Dの怪人だって自己紹介したもんだからこうやって闘うことになったのだ。
ちなみに何で屋上でやってるかっていうと、冥介がカッコよくネオンをバックに戦いたいって言って、リバースドールが快くOKしたからだった。
「…信念がないのかお前は。」
溜息を吐き構えを解く冥介。
同時にリバースドールも戦闘態勢を解除して微笑んだ。
「だって私ぃ、人形ですよぉ?信念とかそ~いうのはご主人様が持ってますよ。」
「どんな信念だ?」
「ええと…さぁ?なんでしたっけ?ああ、そういえばメモがありました♪さっそく確認してみますね。」
小首を傾げて笑うリバースドールは本当に何も分かっていないようだった。
彼女は笑顔のまま服をたくしあげる。
そこには青年男子が期待していたような女体の神秘はなく、マネキン人形みたいな木製の身体があった。
何する気かと冥介が見詰めている中、リバースドールは胸の部分をパカッと開く。
そこには小さなカプセルが設置してあった。
その横に100円ショップとかで売ってるメモ帳が置いてある。
彼女はそれを手に取った。
「…ええと、『我々ダークキャン・Dは崇高かつ紳士的な態度で他の宇宙人に接し、例えそれが侵略行為であっても…、』」
何やら長い文章を読み始める。
と、長い間ヒトの話を聞くのが苦手な冥介はメモ帳の横にあったカプセルに目をつけた。
「おい、話の途中で悪いが…そのカプセルは何だ?」
「え?ああ、コレは私のコアですよ。この中にご主人様の毛を入れてるんですぅ。まぁ、ぶっちゃけた話、この毛の持ち主がご主人様になるんですよ。そのヒトの言うコトしか訊けないんです。ちなみに今のご主、」
「そうか。じゃあ、取るとどうなるんだ?」
冥介はつかつかと歩み寄ると…言葉の途中だったリバースドールの胸からカプセルを取った。
途端にリバースドールの動きが停止した。
まさにビデオの一時停止状態。
「…おい、生きてるか?」
動かなくなったリバースドールをポンポン叩くが、やっぱり反応はゼロ。
しかも取り出した拍子にカプセルの蓋が外れ、中に入ってた毛がどっか行っちゃった。
流石の冥介もちょっと困った顔をする。
(…どうしよう?)
少し考えた後、彼は何を思ったかカプセルに自分の髪の毛を入れる。
そして彼女の胸に元通りセットした。
「…人様はぁ、コノハ様でしたぁ♪」
言葉の途中から再起動したリバースドールはそう言い、冥介に向き直る。
そして笑顔で言った。
「それで…次は何をすればいいんでしょうかぁ?新しいご主人様♪」
【初登場キャラ】
・リバースドール




