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下等生物戦隊ウゴクンジャー  作者: 深爪リオ
SECTION2-破甲と双剣-
27/69

2-12.約束の訪問

同じ頃。


「…ええと、この角を曲がって…直進約200m…。」


携帯電話に表示された地図を見ながら週一は閑静な住宅街を歩いていた。

ここは彼が住んでる町の隣町。

駅周辺はいろんな店があって都会っぽかったが、この辺りは古くからある日本家屋が立ち並ぶ住宅街で、静まり返っている。

よく言えば小京都、悪く言えば時代錯誤の田舎さんだ。

でも未だにIT化に対応できていない週一の脳味噌にはこういう感じの町の方がビルジャングルの都会より癒し効果があった。


「でも、隣町ってこんなにいい場所あったんだ。…凄いな。」


それまで休日はアパートでゴロゴロだった週一は、ウゴクンジャーになって以来、外出するようになっていた。

だから最近の彼の情報感度は以前の鉱石ラジオレベルから100円ショップのラジオ並に向上している。

まあ、得た情報を活かす能力は別としてだが。


「…と、ここか。」


立ち止まった週一は目の前にある門を見上げた。


…デカい。


巨大な日本家屋。お屋敷だ。

堂々とデカい門に掲げられている表札は『歐邑』。

その横に『歐邑流華道家元』とか書いてあったけど、週一にとってそんなのはど~でもいいことだった。

重要なのはここが沙紀の家であること。

でも、別に沙紀に用があるワケではない。

…動くドールを倒した帰り道で彼女が言ったのだ。


『サワガニが欲しいんだったらウチの庭にある沢で採れば?いくらでもあげるけど。』


その言葉でこうしてやって来た。

その証拠に週一の持つ蟹印バッグ内には虫カゴがしっかり入っている。


ピンポ~ン。


早速インターホンを鳴らす。

と、塀の上にあった監視カメラが動いた。


『はい。どちらさまでしょうか。』


若い女の人の声が返ってきた。


「ええと、蟹令李といいます。歐む…じゃなくて沙紀さんと約束を…。」


『…お嬢様のご友人の方ですか。お入り下さい。』


カチャって音がすると、門がゆっくりと開き始める。

入れって言った声は何だか警戒心丸出しって声だったが、そういうことには鈍感100tの週一はのほほん顔で入っていった。


-----------------------------------------------------

歐邑家の敷地内に入った週一を出迎えたのは、和服姿の中年男性だった。

何でか知らないけど品定めするような気難しい顔で週一を見ている。


「…ええと、あの?僕は沙紀さんとの約束で…。」


無言で自分を見ているその視線に耐え切れず、週一は声を掛けた。


「…蟹令李君、とか言ったね。下の名は何と言うんだね?」


「週一、です。」


「ふむ。」


中年男性はそう言うと週一の身なりを凝視した。

僕の顔とか服に何かついてるんですか?って言いたい週一だったが、今日はこの家の沢からサワガニを採らせてもらうんだから失礼なことは言えないので黙っている。

まあ、それ以前にちょっぴり頑固親父っぽいこのヒトに何か言えるほどの度胸は持ち合わせていなかった。


「週一君、私は沙紀の父、蝶滋郎ちょうじろうだ。娘とは…親しいのかね?」


「いえ。最近知り合ったばかりですけど…。」


「…なるほど。まあ、確かに髪も染めていないし、ピアスなんぞもしていない。それに服装も質素で派手でない。最近の若者にしてはまともだな。」


…髪を染めないのはめんどい&将来ハゲたらやだからで、ピアス穴を開けないのは痛そうだから。

服装が地味だったりアクセサリーとかゼロなのは慢性的な金欠病&センスがないだけなんだけど、そう答えるのは何かマズそうだったから週一は無言で蝶滋郎の言葉を聞いていた。


「しかし…。」


そこまで言って蝶滋郎は押し黙った。

何故に沙紀の父親がこんなことを言ってるのか分からない週一は、さっさとサワガニ採集を始めたいから勇気を振り絞る。


「あの、僕は、」


「今、娘は外出している。申し訳ないが今日は、」


お引き取り下さい♪って言われる前に週一は言った。


「今日は沙紀さんに用があって来たわけじゃないんです。」


僕はただサワガニを採りに…と言おうとしたけど、それ以上言えなかった。

なぜか蝶滋郎の表情が固まったのだ。

っていうか、何か怒気を帯びてるような…。


「…分かった。そういうことか。」


蝶滋郎は1人で頷くと週一を真っ直ぐ見据える。


(あ、僕がサワガニ採りに来たって分かってもらえたんだな。)


そう思った週一はホッと安堵の息を吐く。

…しかし蝶滋郎の表情からして絶対そうじゃないんだが、鈍感さんの週一君には分からなかった。


「…君の気持ちは分かった。今まで娘が異性の友達を家に招いたことはないのでね。来るとすればこのような時だと思っていたよ。」


厳しい顔で言う蝶滋郎。

沙紀が招きそうな男友達はみんなサワガニ採りに来る系なのか?そんなアホな疑問を感じながら、週一は頷いた。

んなワケないのに。


「はい。許していただけますか?」


沙紀はいいって言ったけど蝶滋郎の許可も必要なのかなと思い、彼は訊ねる。


「…気軽に言うものだな。君のその若さでどうにかなるものではないだろうに。」


…蝶滋郎は自分が若いからサワガニを採っていっても面倒を見切れないと思っているのか。

週一はそう解釈し、今までのほほん顔だった表情を真剣なものにした。

普段はあんまり締まりのない顔してる彼だが、蟹のことになると真剣なのだ。


「若さは関係ありません。それに僕は大学生です。1人暮らしだってしています。それなりの責任感はあると自覚しています。」

【初登場キャラ】

歐邑蝶滋郎おおむらちょうじろう

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