2-9.四天王『破甲のカイネ』3
「それで、カイネは本当にウゴクンジャーと戦っているのですか?」
例の要塞、テーブルでココアを片手にコノハは訊ねた。
盆栽をいじっていたウェキスが振り変える。
「ああ。何か知らねぇけど、挨拶がてら一度軽く手合わせするだとか言ってたぞ。まあ、あいつのことだから軽くって言っときながらマジになっちまうんじゃねぇか?」
…チョキン
剪定バサミが伸びた枝を切り落とす。
「本気で、ということはあの技を…?」
コノハの片方しかない瞳が細まる。
ウェキスは口元を綻ばせた。
「だろうな。…『ストリップ・レイ』。あいつが『破甲のカイネ』と呼ばれる由縁になったあの技をな。」
ちょっと沈黙が流れた。
ウェキスは剪定バサミをボロ布で拭くと、テーブルに腰掛ける。
コノハは自分の隣に座ったウェキスを一瞥し、残ったココアを飲み干した。
「しかしなァ、あいつも美人なんだが…ああ性格がキツいと台無しだぜ。なあ?もうちょっと女らしくできないかねぇ。」
苦笑しながらウェキスはコノハの肩に腕を回す。
でもコノハにペシッてその手を引っぱたかれる。
「ウェキス、こういうのをこの星ではセクハラというのですよ。」
「それは違うぜ。俺は上司じゃないからな、愛情表現ってコトで。純愛ならいいだろ?」
にやにや笑って言うウェキスに、コノハは無表情で言った。
「我がダークキャン・Dは職場内恋愛も禁止です。」
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「そ、そんな…!!」
ウゴクンジャー蝶は呟いた。
というか、もう彼女はウゴクンジャー蝶じゃない。
タクティカルフレームを装着してない歐邑沙紀だった。
「我が『ストリップ・レイ』は相手の装甲を1層、強制的に解除する。私が『破甲のカイネ』と呼ばれる由縁だ。」
焦ってる沙紀を余裕の表情でカイネが見据える。
せっかくホバリングを使った戦いを覚えたのにこれじゃもう特殊能力は使えない。
「チッ!!もう一度、接ちゃ、」
バキッ!
もう一度変身しようとした沙紀の腹にカイネの蹴りが叩き込まれた。
接着の『く』を言えずに彼女は派手に吹っ飛ぶ。
「かはっ…!!ま、まだ、」
空中で一回転して体勢を整える沙紀。
でも彼女が顔を上げた先にはカイネはいなかった。
「ここまでだ。」
いきなり背後で声がして沙紀は振り返る。
その首にカイネの手刀が振り下ろされた。
…ドサッ
ついに卒倒しちゃった沙紀。
そんな彼女をカイネは見下ろす。
その表情は勝利の喜びに浸っているというより、何だか物足りなさそうだった。
「よ、よくも沙紀を!!」
変身を自分で解いたらしい水面が気合のこもった体当たりを仕掛けてきた。
やっと変身したままだと戦いの役に立たないって気付いたのだ。
「ふむ、まだ残っていたんだったな。」
ペシッ
でもカイネの手刀で簡単にのされてしまった。
まあ、沙紀が勝てない相手に挑んでど~にかなる問題じゃなかったのだが、その勇気と根性は素晴らしい。
「…これで確か最後だな。紫の女はまあまあだったが…つまらんな。」
そう呟き、倒れているウゴクンジャー達を見渡す。
…足元に転がってる女2人。
向こうのベンチの横で伸びてる女1人、公衆便所から落ちて勝手に気絶してるアホ男1人、そして最初にパンチ1発で倒した男が、
「…ん?」
1人、最初に倒したはずの赤いヤツが消えている。
「うぉぉぉぉぉっ!」
動くドールの時と同パターンだった。
何とか覚醒した蟹は沙紀との戦いに夢中になってるカイネに忍び寄り、必殺技をかまそうっていうわけだ。
しかも前回みたく一か八かという必死の攻撃じゃなく、前回うまくいったことで調子に乗ってる攻撃だった。
脳味噌が蟹味噌な彼は動くドールが何故に逃げ出したか分かってないのだ。
というか、自分の攻撃の威力のおかげだって錯覚してるほどだ。
「ふん、ストリップ・レイ!」
こいつにストリップ・レイなんて使わなくてもいいってことは承知しているんだけど、何となくカイネは破甲の光を放った。
凄まじい光がカイネの額にある妙な紋章から出るのを目に映しながらも、蟹は叫ぶ。
「喰らえ!蟹ハサミ!!!」
カイネは余裕の表情でその光景を見ていた。
ストリップ・レイを喰らったウゴクンジャー蟹のタクティカルフレームが砕け散っていく様子。
そして装甲を破られただの人間になったヤツが、自分の装甲がもうないってコトにも気付かず、そのまま突っ込んでくる様子。
(…ふん、どれほどの攻撃か。)
蝶の猛攻だってあんまり効かなかったカイネだ。
戦闘開始早々に1発でKOされた蟹ごときの攻撃を喰らっても構わないっていうことだろう。
避けようとも防御しようともしなかった。
がしっ。
そして、ウゴクンジャー蟹…いや、蟹令李週一の技は見事にきまった。




