2-7.四天王『破甲のカイネ』
「…これでよし、と。」
沙紀は携帯電話をバッグに入れた。
そして今まで踏んづけていたチンパンGから足を離した。
彼女の周りには数十体の戦闘員の皆さんが転がっている。
「連絡は取れた?じゃあ、それまで頑張ろうね。」
足で道に卒倒してるチンパンGをどかしながら水面が微笑む。
こんな時でも店のロゴ入りエプロンを装着しているのが何ともアレだ。
そして2人は公園のベンチを見た。
「…ん?チンパンGは全滅したか。」
そこには金髪碧眼の女がモデル顔負けの長い脚を組んで座っていた。
端正な顔立ちにナイスバディっていうまさに大人の女って感じなその女は、軍服っぽい服を着ている。
そっち系のマニアさんが見たら泣いて喜びそうだ。
彼女は読んでいた本を閉じると立ち上がる。
「まあ、やつらは単なる前フリだ。では、私が相手になろう。」
不敵に口元を綻ばせ、その女は沙紀と水面を見据えた。
その視線はやたらと挑発的で、多分気の強さは沙紀以上だろう。
顔立ちが整ってるから怖い顔すると余計に迫力があるし。
「私はダークキャン・D四天王、破甲のカイネ。小娘ども、軽くのしてやろう。」
ザッ…!
何かの格闘技っぽい構えを取る。同時に沙紀と水面も構えた。
「ふん、四天王だか何だか知らないけど…潰してやるよ。」
「沙紀、油断は禁物よ。」
対峙する女3人。
で、今から駆けつける援軍も女。
男も一応2人いるけど、ヘタレ大学生(週一)とハッタリ作曲家(冥介)だからクソの役には立たないだろう。
まあ、足を引っ張ることはあっても。
…こうして女たちの戦いが幕を開いた。
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「取ったッ!!」
沙紀の拳がカイネの腹に沈む。
カイネは少し動いたが、特に効いたふうもなく、自分の腹で止まっている沙紀の腕を掴んだ。
「…ふむ、いい突きだ。少々重さが足らんがな。」
ガッ!
腕を掴んだままカイネは彼女の足元を蹴り上げた。
重心を失い沙紀はバランスを崩す。
よろけた彼女をまるで人形のように投げ飛ばした。
「えいっ!」
直後に離れたところにいた水面がけっこう大きな石を投げつける。
しかしカイネはその石を手刀で叩き割る。
「そんなものが私に当たると思うか?まあ、銃でも私に傷1つ付けられんがな。」
そう言い、胸ポケットからペンを取り出す。
そしてそれを水面に軽く投げつけた。
ペシッ!
「痛っ!?」
額に命中して水面は声をあげる。
ブン投げられたのに声1つ漏らさなかった沙紀とはえらい違いだ。
でもこれでも週一よりかはマシな方ってのが、ウゴクンジャーの情けないところだろう。
「余所見してる暇、ないよっ!!」
転んだ沙紀が足払いを仕掛ける。
でもカイネは簡単に避けると、その足を掴んだ。
「今度は空でも飛ぶか?」
…上に投げる気だ。
とっさに沙紀は空いた方の足でカイネの顔に蹴りかかる。
それに気付いたカイネは口元を綻ばせ、手を離した。
そして蹴りを受け止め突き飛ばす。
昨日の動くドールより無茶苦茶だ。
しかもまだまだ余裕がある。
「脆いな、これがウゴクンジャーか?つまらんぞ、早く変身しろ。」
余裕の表情で沙紀と水面を見下ろすカイネ。
変身しろって言っても、変身したところで別に何も変わらないのだ。
まあ、服1枚分の防御力と、あんまり凄くない特殊能力はあるんだけど…。
「ちっ…!昨日の人形に今日の軍服女、何だってこう…!」
「いきなり敵が強くなったわね。今までは沙紀が1発KOで終わらせれたのに。」
ウゴクンジャー2人は小さく毒づく。
今までが今までだっただけに、いきなりのレベルアップは堪ったもんじゃない。
そんな時だった。
「急かすな、蝶とクラゲは俺たちが到着するのを待っていたんだ。」
背後からの声にカイネが振り返る。
そこには冥介が…公衆トイレの上に立って腕組みしていた。
「…ほう、揃ったようだな。」
カイネの表情に笑みが浮かぶ。
でも駆けつけた援軍のうち2名はそんなカイネには注意がいってないようだ。
「冥介さん、無理して登ったのはいいですけど…降りられますか?」
冥介を見上げて週一が苦笑する。
「まあ、戦いが終わるまでには降りられるだろう。大丈夫だ。」
…どうやら登場した瞬間に1名戦闘不能になったようだ。
やっぱりウゴクンジャーヒュドラは役に立たなかった。
「私はタコヤキを買ってきますから。後でみんなで食べましょう。」
送るだけ送ってさっさと買い物に行こうとしている憬教授。
まあ彼女はチーフっていっても、ただいるだけのヒトだからどうでもいいけど。
「沙紀ちゃん、水面ちゃん、もう大丈夫だからね!」
でも綾だけはまともだった。
拳をボキボキ鳴らしながらカイネの前に立ちはだかる。
予想通り、この戦いは女4名の戦いになりそうだ。
と思ったけど、週一が目的を思い出し、冥介からカイネに注意を向けた。
「よし、行くぞみんな!変身だ!!」
別に変身しなくてもよかったが、何となくノリでみんな頷く。
「接着。」
水面が空中にクラゲの絵を描く。
「正義!接着!!」
どうせ降りられないから戦えないんだけど一応変身する冥介。
「ウゴクンジャー甲虫!接着!」
麦藁帽子を被る綾。
「…接着ッ!!」
そして腕で十字を作り、右手を引く沙紀。
「はぁぁぁぁぁぁぁっ!!接着っ!!!」
やたらと気合が入った声で週一が蟹バッグを頭から被った。
3つのしょぼい光と2つの眩い光が煌く。
「進化の筋道逆走し、脊椎蹴って無脊椎!下等生物戦隊、ウゴクンジャーッ!!!」
ここに結成されて初めてタクティカルフレーム全てが集結した。




