2-6.緊急招集
翌日は金曜日だった。
ほとんどの学生が明日は授業がないってことで、微妙にテンションが高く、あんまり真面目に講義を受けてるのがいなかった。
まあ、それも今時の大学生だからしゃあないといえばしゃあないが…。
そんなこんなで講義終了になったのは世の無常だった。
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「失礼しま~す。」
週一は欠伸をしながら社会情勢学研究室もといウゴクンジャー本部のドアを開けた。
花の金曜日。
普通の大学生ならすぐにでもバカンスに繰り出すというのに、そんなこととは無縁の彼は無意識に本部に向かってしまうのが悲しい。
「眠そうですねぇ、週一君。コーヒーでもいかがですか?」
「ああ、蟹か。お前も食うか?」
「週一君、コレけっこうイケるよ。イクラ煎餅。」
にこにこ笑顔でコーヒーポットを持ってる憬教授。
そして怪しげな煎餅を齧る冥介と綾が出迎えてくれた。
さすがに沙紀や水面の姿は見えない。
やっぱり高校生や社会人はそうヒマじゃないのだろう。
「はい、どうぞ。」
椅子に座った週一の前に憬教授がコーヒーを置いた。
「あ、どうも。…でも珍しいですね、先生がまともな飲み物くれるなんて…。」
今までがアイスミルクソーダとかだったから週一は感心していた。
でも。
「お砂糖がなかったので味の素を少々入れてありますが、美味しいですよ~?」
「…。」
感心したのが間違いだった。
週一は良くダシがとれてるコーヒーをすすると、一息つく。
「ふぅ。昨日は酷い目に遭ったよ。結局集まったのが僕と歐邑だけだったし、昨日の敵は凄く強かった。僕が1発でやられたほどだった。」
「週一君はいつも1発前後でやられるから強いって言っても実感ないよ。」
もっともなことを言われ、週一はちょっとヘコんだ。
でも綾になじられるのはいつものことだし、彼女に悪気がないのは知ってるからすぐに気を取り直した。
「それにしても昨日は八又乃さんドコ行ってたんですか?連絡取る方法もないし…携帯電話持ってないんですか?」
冥介はニヒルな笑みを浮かべる。
でも手にはイクラ煎餅がしっかり握られているし、口元には海苔がついてるもんだから微妙だ。
「携帯電話か。そんなものは必要ない。俺は助けを求める声をどんなに離れていても聞き取れるからな。それがヒーローだ。」
「…。」
何も言う気になれず、週一は肩を落とす。
そんな時だった。
ペンペンポン♪ペペペンポロン♪
マヌケそうな着信音が彼のポケットから鳴り響く。
「あ、誰からだろ?」
2つ折りタイプの携帯電話を取り出し、開いてみる。
ディスプレイには紫色の蝶が舞っていた。
これは電話してきた相手が誰かを示す個人エンブレムみたいなもんだ。
…一応現在は2222年。
あんまり文明は目覚しい発展はしてないものの、こういうしょうもないサービスとかは進んでいるのだ。
「あ、そのエンブレム初めて見た!誰?」
イクラ煎餅片手に綾が携帯電話を覗き込む。
エンブレムを登録するってことは結構親しいか、どっかの企業ってことだ。
「これは…歐邑か。何か用なのかな?」
通話ボタンを押すと、画面に沙紀の顔が映った。
テレビ電話みたいなもんだ。
『ああ、センパイ?こっちに四天王とかいうヤツが現れたんだけど。なかなか強敵そうなんだ、あたしとミナだけじゃちょっとヤバそうだから綾さんの力を貸して欲しい。それまで時間稼ぐから。急いで来て。』
けっこう切迫しているようだ。
週一は頷いた。
「分かった。で、どこにいる?」
『町野中公園。あ、それとセンパイと八又乃サンは来なくていいから。どうせ役に立たないだろうし。』
「…ど~いう意味だよ。まあ、とにかくすぐ行く。」
週一は携帯電話を閉じる。
そして憬教授に顔を向けた。
「先生、っていうことです。」
「分かりました。じゃあ、正門へ。車を回してきますね。」
憬教授は笑顔で頷いた。
懐かしの2つ折り携帯電話です。
2222年にはスマホが廃れて2つ折りが息を吹き返したって設定でもいいかも…。
結局電話だけなら2つ折りで十分だし、AIの発達で情報の氾濫(Web上に偽情報が溢れる感じ)が起きて…みたいな裏設定。
どうでもいいけど。




