15-5.思わぬ仲裁
「だぁッ!!!」
沙紀のストレートが放たれる。
古武術特有の『気』が篭ってそうな鬼殺しパンチだ。
「やぁッ!!!」
ビイも掌抵を放った。
綾と互角ぐらいの実力で放つ掌抵だ。
きっと痛いだろうけど沙紀のストレートには及ばない。
どっちも勝負を決する一撃っぽい攻撃。
で、現在週一&綾は萌木公園から徒歩10分の距離、やっぱり間に合わなかったようだ。
これで勘違いから生まれた勝負は沙紀の勝利で終了…しなかった。
ぱしっ
突然間に割り込んできた腕が2人の攻撃を軽く受けたのだ。
「!?」
「なっ!?」
驚く2名。
特にビイの驚きは大きかった。
抜けたとはいえ、彼女は元ダークキャン・D怪人だ。
ウゴクンジャーかダークキャン・D以外には攻撃を止められるはずない。
しかもウゴクンジャーの残りメンバーって言えば実力皆無の男性2名に、やる気ゼロの綾。
そいつらがこの場に颯爽と登場するはずない。
…ってことは。
「カ、カイネっ!?」
2人の腕を掴んだまま不敵な笑みを浮かべるそいつは…ダークキャン・D四天王、破甲のカイネその人だった。
「くっ!!」
「は、放すアルっ!」
驚きの表情から我を取り戻し、2人はカイネから手を振り解く。
カイネは別に腕を捻ろうとか思ってなかったらしく、すんなり解放した。
「久し振りとでも言っておこう、ウゴクンジャー蝶。そして蕎麦屋の小娘。」
「え…?」
またしても驚くビイ。
カイネは自分がクリティカル定食・ビイっていう怪人と知っているのに、まるで人間相手のように『蕎麦屋の小娘』と言った。
何だか他人(沙紀)にバレないように配慮してくれてるみたいに感じる。
「ッ!!何でこういう時にコイツが!!…変な勘違い娘とやり合ってる場合じゃないね。あんたは逃げな、この軍服女はあたしが戦る!」
カイネのお陰でビイが怪人だってバレなかったため、沙紀はビイを庇うようにしてそう言った。
しかしカイネは鼻で笑い、軽く手を振る。
「吠えるな小娘。伸してやってもいいが、今日は別件だ。」
でも沙紀は構えを解かない。
まあ、これくらいの警戒心は普通っていうか当然だ。
週一とかが馬鹿すぎるだけで。
「そう、別件だ。…そうだな。さて、何かないか…。」
意味ありげに登場し、別件とか言っておいて考え込むカイネ。
沙紀&ビイは眉を顰めた。
普通ならツッコミとか入れたいところだが、相手が相手だから黙って待つ。
しばらくしてカイネは手をポンと叩いた。
「そうだな、助言を1つずつ。…ウゴクンジャー蝶、お前は受験生だそうだな。徹夜をする時も多いだろう。そういう時は頭のツボを押すといい。酔いそうな時も有効だ。」
「…。」
「次に蕎麦屋の娘。斎月書店という本屋に『季刊・私の蕎麦』という雑誌がある。それを読めばお前に足らないものが見えてくるだろう。」
「…。」
不思議そうにしている2人だったが、カイネはそれだけ言うと満足そうに1人頷く。
「以上。ではな。」
シュイン…
で、例の瞬間移動で去って行った。
全くもって来た意味が分かんなかった。
何となく意味不明な空気の流れる中、カイネが消えていった方向を見詰めたままビイが口を開いた。
「…アナタ、さきワタシに逃げろ言たネ。もしかして悪女違うアルか?カニさん殺害する気、ホントにないカ?」
「何でそう思われてるのかあたしの方が聞きたいよ。ってかさ、ええと…、」
「ああ、ワタシはビイ言うネ。寛和蕎麦ていう蕎麦屋の店員ヨ。」
「ビイはセンパイ…蟹令李週一とはどういう関係?カニさんとか呼んでるけど。」
「カニさんは恩人ネ。この国来たばかりで右も左も分からないワタシを救てくれたヨ。それにメタルハムスターとかいう怪人からも助けてくれたアル。」
「で、あたしを悪女呼ばわりした理由は?」
「昼食、カニさんは寛和蕎麦で食べてたアル。その時、アナタ電話したネ?それでカニさんが怯えてたから悪人違いないと思たアル。」
「…ミナの言った通りだったってことね。」
そこでやっと沙紀は全てを理解し、溜息を吐いた。
どうやら緊張して言ったせいで、週一は自分が怒っていると勘違いしたようだ。
で、怯える彼を見て恩があるビイが自分を追い払いに来た…というわけか。
「ひょとして…ワタシの早とちりカ…?ワタシ、悪人アルか?」
ビイも少し頭がまとまってきたらしく、申し訳なさそうに上目遣いで沙紀を見る。
「あたしももう少し冷静になってたらこんな事にはならなかっただろうし…多分、どっちも悪いね。」
「…。」
「…。」
少しの沈黙。
やがてビイは突然ぺこりと頭を下げた。
「待ち合わせだたネ?邪魔者は失礼しましたアル!!」
で、彼女は一目散に走り去る。
沙紀はその様子を苦笑しながら見送り、息を吐いた。
「…さてと。何だか変にトラブったけど…よし、もう問題はないね。」
うんうん頷き、そして拳を握り締める。
「大丈夫!もうリラックスできてる!これなら…いける!!」
希望に満ちた言葉を呟いた。




