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下等生物戦隊ウゴクンジャー  作者: 深爪リオ
SECTION15-一大決心-
203/211

15-2.待ち人、来たる

『…まあ、緊張するのは分かるけど…しすぎよ?あれじゃ何が言いたいのか。』


苦笑いしながら水面が言う。

携帯電話を握ったままの沙紀は真っ赤な顔で俯いていた。

水面と電話を繋いで、見てもらいながら週一に掛けていたようだ。

不安だったのだろう。

普段の自信に満ち溢れた沙紀からは想像もつかない。


「う、でも…。やっぱり…。」


『はいはい、もじもじしないの。まあ、沙紀にしては上出来よ。さ、萌木公園へGO♪そこで挽回すればいいじゃない?』


「…わ、分かった。でもどんな格好で行けば…?」


まだ制服を着ていた沙紀は不安そうに訊ねる。

確かこの人の私服はオール和服。

しかも和服を着ると人が変わってしまう不便な性格なのだ。


『その格好のままの方が私は青春っぽくていいと思うけど…、葦和良さんとか持ってないの?』


「ダメ!…葦和良さんは無理。」


『どうして?葦和良さんなら沙紀の全面バックアップしてくれそうなんだけど…?』


「この件だとダメなの!そう決めたから…。」


…少し前の話し合い。

そういうことになっているようだ。

あれから動きがなかったので分からなかったけど。


『ふうん?よく分からないけど、そういうことなら…うん、やっぱりそのままの格好で行けばいいわ。大丈夫、妙に気合の入った服よりずっといいから。』


「…ミナがそう言うなら…。」


俯いて言う沙紀に水面は苦笑する。


『さあ!気合を入れて出発する!!待たせるのは女の特権だけど、こういう場合は待たせちゃダメ。急いで行く!』


「え?あ、うん!わ、分かった!」


頷き、電話を切る沙紀。

決意に満ちた表情をしていたけど…やっぱり何だか不安そうだった。


◇◇◇


カタン…


とりあえず蕎麦を食べ終えた週一は箸を置いた。


「…どうしよう。」


そして呟く。

何だか彼の脳味噌では処理しきれないような状況に陥っていた。

沙紀はどうやら自分に対してキレてらっしゃるようで、ビイは任せろって言って出て行った。

沙紀にキレられる原因なんて心当たりゼロだし、あのビイが任せろって言っても信頼度は限りなくゼロだ。

そして今、無人の蕎麦屋に彼は取り残されている。


「とりあえず…蕎麦は解決したな。食べ終わったし。次はあのビイって人を追うか、ここで待ってるかだ。」


何だか嫌な予感(肉体言語での会話とか)はするものの、今自分がビイを追えばこの店は完全な無人だ。

鍵すら掛けられないからセキュリティ面が不安すぎる。

で、残るにしてもやっぱり2人がどのような方法で解決を考えているかが不安すぎる。

殴り合いとか平気でしそうなお嬢さん方なのだ、ヤツらは。


「…よし!」


考えた末、彼は携帯電話を取り出した。

そして『ある』番号へ掛ける。

3度ほどのコールでその相手は出た。


「あ、僕。頼みがあるんだけど…、」


彼が電話した相手は誰なのか。

そしてその考えとは?

答えは後ほど。


◇◆◇


萌木公園に着いて数分。

待たせてはNGと水面に言われて急いできたのだが、待ち人の姿はまだない。

かつてあの憎たらしいデスペラード恋文の策によってこんな状況に追い込まれたこともあったが、今回その可能性はゼロだ。

だって自分から呼び出したのだから。

でもやはり…緊張は尋常じゃなかった。


「…。」


とりあえず、心拍数が異常だ。

体育でマラソンをやった後も、屋敷の道場で古武道の鍛錬をした時もこれほど早いビートを刻むことはなかった。

それに顔が熱い。

髪が乱れていないか、鏡で確認したいけれど…顔が真っ赤になってそうで、何か情けない顔をしていそうでできない。


「お、落ち着けあたし。大丈夫、いつものように。平常心で。」


目を閉じて自分に言い聞かせる。

そう、大丈夫だ。

初めて話す相手じゃないし、緊張するような相手でもないはず。

だって彼は…、


ドクン


「!!」


顔が頭に浮かんだ瞬間、強烈な鼓動と共に頭が真っ白になる。

平常心は一片も残らずにどこかへ消し飛んだ。


「…うぅ、どうしたら…。そ、そうだ!歐邑流古武道の奥義・氷錬心を使って氷の心に…。ダメだ、あんなの使ったら冷静通り越して冷酷になる!」


頭を抱える沙紀。普段ではありえないくらいの動揺だ。

学校での彼女しか知らない人間が見たら別人だと思うかもしれない。


ザッ…


と、その背後で音がした。


ドクン!!


彼女は目を見開く。

…待ち人、来たる。

全然平常心を取り戻していないけど、もうどうしようもない。

当たって砕けろだ。

葦和良さんには悪いけれど、先手必勝。

想いを告白する。

どんな結末が待っているか分からないけど、それでも。

決意を胸に、彼女は振り返った。

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