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下等生物戦隊ウゴクンジャー  作者: 深爪リオ
SECTION14-日本終了のお知らせ-
193/233

14-2.集中治療室にて

その頃、週一の街にある警察署の一室で男が取り調べを受けていた。

茶髪で鼻に絆創膏を貼ったガラと頭の悪そうな男。

久々登場のヒサ君、そう権下ごんもと ひさしだ。


「だから言ってんだろ?アイツが飛び出してきたんだって。俺はちゃんと青信号で渡ったんだ。信じてくれよ、刑事さん。」


ガムをくちゃくちゃ噛みながら弁解(?)する。

…厨を襲ったバイクに乗っていたのはどうやらコイツらしかった。

本当に週一と縁がある男だ。

前世からの因縁かもしれない。


「通行人が証言した。お前は時速100km以上でカーブを曲がり、減速もせずに横断歩道に突っ込んだとな。」


「誰だ!?その証言したヤツってよ!!ブッ殺す!!」


「…それにだ、ブレーキで溶けたタイヤ跡を調べたんだが、あれはどう見ても異常なスピードで急ブレーキをかけたとしか考えられない。証言者がいなくてもお前の違反は確かなものだ。」


「…。」


権下は舌を鳴らし、大きく息を吐いた。

そして取り調べ机に足を乗せる。

態度最悪だ。


「弁護士呼べ、弁護士。呼ばねぇんだったら話さね~よ。」


◇◇◇


「コノハさん?コノハさん?」


いきなり切れた携帯に向かって鎖雪は呼び掛け続けた。

病院の待合室、他に人はいない。

前面ガラス張りのお洒落な窓から差し込む夕日も、何だか寂しげだ。


「鎖雪さん!!」


「えっ!?」


いきなり後から声が掛かり、彼女は振り返る。

そこにはたった今まで電話で話していた相手、コノハが立っていた。


「え…?電話で話してたのに…?」


「そんなことよりもっ!!厨さんは!?」


血相を変えて言うコノハ。

いつもは乱れひとつない髪型が少し崩れ、息も荒い。

普段の彼女からは予想できないような姿だ。

鎖雪も泣き腫らしたみたいな顔をしていたが、コノハに会ったことでまた緊張感が切れたのだろう、涙をポロポロ流し始めた。

そして俯く。


「ちゅう兄は…今、集中治療室の、」


「っ!?そ、そんなっ!!」


ダッ!!


コノハは息を呑み、集中治療室がある棟へと走り出した。


◇◇◇


…厨さん。


コノハは病院の廊下を駆けながら、心の中で必至にその名を呼び続けた。

頭に浮かんでくるのは、これまで2人で過ごした短いけど幸せな日々。

そして厨の笑顔。

考えたくないと思いながらも、脳裏をよぎる最悪の結末。

…まだ生きてくれているのなら、病院関係者を蹴散らしてでもダークキャン・Dの要塞に彼を運び、宇宙最先端の治療を受けさせる。

その時に自分の正体が知れてしまっても構わない。

彼が助かるのなら、それでも。


「厨さんっ!!」


涙は流れなかった。

泣く余裕すらなかった。瞬間移動を使おうにも、正確な位置が分からなくては移動できない。

走るしかない。

ただ、早く。彼の元へ。


コノハを迎えたのは中年の医師だった。

集中治療室の10mほど前にガラス張りの扉があり、その前に立っていたのだ。

そして彼の背後に見える集中治療室のランプは消えていた。


「…お待ちしていました。ご家族の方、ですね?」


コノハは彼の前で立ち止まる。

そして頷いた。

走ったせいだけではない動悸が廊下に響くような錯覚を覚える。

彼女は自分の胸に手を当て、次の言葉を待った。

数秒にも満たない時間なのに、永遠にも感じられる時間。

医師は辛そうな表情をしてかぶりを振った。


「残念です。手は尽くしたのですが…あの状態では…。」


「!!」


コノハの目が見開かれる。

瞳孔が開き、輝きが失われていく。

そして彼女の表情は感情のない、無表情なものになっていった。


ピシッ…


壁に亀裂が入る。

医師はその音に顔を壁に向けた。


「…?ああ、そうです。お亡くなりになる直前、あなたに言伝を頼まれたのでした。」


彼は思い出したように言い、そして再びコノハの方を向く。


「『食い過ぎで死ぬなんて末代までの恥。難病とかで死んだと子供には伝えといてね』…だそうです。」


そこまで話した時、医師は目の前にいたはずの女性が消えているのに気付いた。


「あれ?」


「先生!!ウチの人は!?」


首を傾げる医師に太った女性が駆け付けて来る。

すると医師は再び辛そうな表情をして、かぶりを振った。


「…お待ちしていました。あなたがご家族の方、ですね?…残念です。」


「そんな!!いやぁぁぁぁぁぁぁ!!太脂ふとしぃぃぃぃぃぃ!!!」


泣き崩れる太った女性。

死んだってのはその女性の夫らしき人らしい。

ってことは厨は…?


◆◆◆


少し戻って…。

鎖雪は泣き疲れていたのだが、コノハに会ったことでまた緊張感が切れ、再び涙をポロポロ流し始めた。

そして俯く。


「ちゅう兄は…今、集中治療室の、」


ぐすっ…


嗚咽を飲み込み、彼女は疲れ切った笑顔で顔を上げた。


「集中治療室の前の角を曲がった所にあるトイレに行ってるの。軽い擦り傷で済んで…ホントに良かった…。」


そこまで話した時、彼女は目の前にいたはずのコノハが消えているのに気付いた。


「あれ?コノハさん?」

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