13-8.ウゴクンジャーキラー
ゴトリ…
綾に数十発殴られ、ビイに数十回蹴られた青年は力なく倒れる。
「武器ないとただのザコだね、この怪人。」
「いいざまアル。カニさんに変な言いがかりつけるからこうなるネ、ザコ助が生意気ヨ。」
見下すような目で青年を見下ろし、綾は鼻で笑った。
ビビらされたからその腹いせもあったのだろう、妙にスッキリした顔をしていた。
で、ビイは青年の背中を踏み付け、グリグリしている。
「でも、どうしよう。怪人なんだろうけど人間そっくりだし…やりにくいよね。チョコボールとかあの辺のなら蟹ブレードで突き刺したりしてトドメ刺せるんだけど。」
週一が困った顔で呟く。
青年の気絶と共にプロトレイヤー軍団は逃亡していった。
だからこれ以上の戦闘はないだろう。
…問題はコイツの処理だった。
「あう…、た、たすけ…ろぅ…。俺様を…見逃せぁ…。」
ピクピクしながら青年が呻く。
一応意識は残っているようだ。
でも、こんなザマで命令口調とは…何かムカつくヤツだ。
「…凄くトドメ刺したい。でも殺人みたいで何か嫌だな…。」
「だね、週一君。ちょっと寝覚め悪くなりそうだね。」
「カニさんが殺れ言うなら、ワタシ殺てもいいヨ?コイツ負けたくせに生意気ネ。」
3人は揃って青年を見下ろす。
そういや名前を知らなかったけど、誰も気に留めていない。
っていうかもう倒したから知る気もないようだ。
「ホント…どうしよっか。見逃すとまた襲ってくるだろうし、」
「倒したらトドメ。基本中の基本ですよぉ?」
週一が言いかけた時だった。
何だか間の抜けた声が響き、何者かが屋根の上から飛び降りてくる。
そして。
ダンッ!!
手にした角材を倒れていた青年の胸に突き立てた。落下の威力と相成って青年の体が激しく弓なりになる。
そして小さな呻き声を漏らし、ぐったりと脱力した。
「!?」
消滅していく青年。
彼に角材を突き立てたままの姿勢でいた新手に3人は身構える。
「…はじめまして♪ウゴクンジャーの皆さん。今日は私、来る予定じゃなかったんですけど、何か心配で来ちゃいました。」
脳天気そうな声で笑いながら立ち上がる新手さん。
その顔を見た週一&綾は息を呑んだ。
「なっ!?日和…!?」
「日和ちゃん!?」
そいつは…ずっと前に刺客に殺された(壊された?)はずの元リバースドール、日和に違いなかった。
◇◆◇
週一達が衝撃の邂逅を果たしている頃、ウゴクンジャー最強の女、沙紀は広大な中庭に存在する茶室にいた。
きっと週一なんかじゃ一生飲まないだろう高級茶葉使用の抹茶を手に、庭園を眺めている。
服装はもちろん和服。
…まあ、和服沙紀じゃなけりゃ落ち着いて抹茶なんて飲んでるわけないんだけど。
「沙紀。」
声が掛かり、彼女は振り返る。
襖の向こうに蝶滋郎がいるようだった。
「はい、お父様?」
「最近…週一君が遊びに来ていないようだが?喧嘩でもしたのかね?」
そうだった。
この人は週一と沙紀がいい仲だって勘違いしてるんだった。
しかも、すでに結婚とか考えているとすら思っている。
「蟹令李さんと私が…?いえ、喧嘩だなんて。」
「ならいいのだが。彼にまた訪ねてくるよう言っておいてくれ。彼とはじっくり腰を据えて話してみたいからな。」
「お父様がそんな事を仰るなんて。ふふっ、とても珍しいです。」
「彼は世間の男どもとは違った何かがある。まあ、頭や腕は期待できないようだが、それを差し引いても余りあるモノがあると私は踏んでいるのだよ。」
もの凄く過大評価だ。
確かに世間の男と違い、異性より蟹に恋愛感情を感じるし、変人に好かれるっている妙なスキルを持っている。
でもそれはダメな方の『違った何か』だと思う。
「…ああ、それと沙紀。」
少し間を置き、蝶滋郎が言った。
「はい。」
「反対はしないつもりだ。いつでも2人で来なさい。」
何だかしんみりした、しかし吹っ切ったような声だった。
でも沙紀には蝶滋郎が何を言っているのか分からない。
分かるわけないってもんだ。
「…はい?」
遠ざかる足音。
高級な茶の香り漂う湯飲みを持ったまま、沙紀は1人首を傾げていた。
◇◆◇
「日和?あのぉ、誰です?それ。」
日和にしか見えないその怪人は、やっぱり日和の専売特許である鉄の笑顔をしていた。
だからやっぱり日和以外の何者にも思えないのだが…?
「…まさか、記憶が…?」
綾が呟く。
日和が怪人に倒されたって話は冥介から聞いただけで実際に見たわけではない。
だから彼女が再びダークキャン・Dの怪人になったって可能性も考えられる。
元々は敵だったわけだし、その可能性は大だ。
「ダークキャン・Dに戻っちゃったとか!?」
「…あ、もしかして裏切り怪人のリバースドールと間違えてるんですか?」
少し考えた日和っぽい怪人は手をポンと叩いた。
「違いますってぇ。確かにその怪人のデザインを使ってますけどぉ。私は全然別の怪人ですよ。あ、ついでだから自己紹介しちゃいますね♪」
日和っぽいけど違うらしい怪人は軽く会釈をする。
「ウゴクンジャーキラーが1人、ゼペトパペットですぅ。動くドール、リバースドールみたいなデク人形じゃなくってカラダは人工皮膚&人工血液♪あんなのと一緒にしないで下さいねっ♪」
「ゼペトパペット…。日和じゃないんだ。」
週一は呟いた。
もし日和だったら八又乃さんが喜ぶかな?とか思ってたけど…どうやら感動の再開はないらしい。
「よろしくお見知りおきを。じゃあ、私も~帰りますね。今度会ったらその時は戦いますからぁ、…首洗って、待ってて下さいね♪」
ゼペトパペットは手を振りながら消え去った。
例の瞬間移動だろう。
余韻も何もあったもんじゃなかった。
【初登場キャラ】
・ゼペトパペット




