2-2.共闘!蟹と蝶
「うそぉ!憬…じゃなくて憬さんって教授だったの!?」
社会情勢学研究室に水面の驚きの声が響く。
ようやく憬教授が大学教授だと知り、沙紀と水面はびっくら仰天したのだ。
「そ、それで27歳?どう見てもあたしらと同じにしか見えないんだけど…サバ読んでない?」
「ふふふっ、サバっていうのは実年齢より若く読むんですよ?年上には読みません。」
でもやっぱり親しげに話している。
自分より10歳年上だと分かっても、やっぱり見た目が同じくらいだから話しやすいようだ。
ちなみに現在、この研究室には彼女ら3名しかいない。
週一ことウゴクンジャー蟹の能力は『蟹ハサミ』。
自らの両腕をハサミに見立てて相手を捕獲するというその能力を試すとか言って、どこかに消えた。
下手をしたら翌日新聞に載るかもしれない。犯罪者として。
綾ことウゴクンジャー甲虫の能力は『センサー』。
10km先の樹液のありかさえ分かるという能力に感激し、早速虫を捕まえに出掛けていった。
冥介ことウゴクンジャーヒュドラの能力は『リストア』。
1.05倍に増加する回復力が能力だが、あんまり意味ないのでふてくされて帰ってしまった。
…要は3人とも勝手に行ってしまったわけだ。
「でも今日はもう週一君たち帰って来そうもありませんね。私たちも解散しましょうか。」
「このままただ帰るのって芸ないね。どっか寄ってこうよ?」
「そうね。憬さん、この辺りでいい店知りませんか?」
「そうですねぇ…。そうだ、駅前に美味しいケーキ屋さんができたんです。連れて行ってあげましょう。」
仲良く笑う女3人。
見た目は同年齢だけど、実は1名10歳年上。
でも気が合ってる。
この中に綾がいたら浮くこと請け合いだ。
そして談笑する3人が出て行くと、研究室は沈黙に包まれた。
…机の上には相変わらず1本の大根が転がっている…。
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その夜。
草木も眠る丑三つ時…にはまだ時間があるけど、それでもけっこうな夜。
もう街の明かりもあんましなく、居酒屋やクラブとか街が完全にアダルト化している時間。
ビルの屋上に3つの人影があった。
「またアドバルーン上げるのか。ったく、こんな仕事チンパンGにやらせろよ。」
1つの人影がぼやきながらアドバルーンを膨らませている。
頭に帽子のようなモノを被ったシルエットだ。
「在庫がもうないのだ。今工場をフル稼働させて作っているのだが、間に合わん。」
もう1つの人影が、アドバルーンを膨らませるのを手伝いながら言う。
何だかとってもナイスバディな女性のシルエットだ。
「だからって俺にやらせるなよ。一応幹部だぜ?雑用なんかしたかねぇ。」
「文句を言うな。このアドバルーンは1人じゃ膨らませられないんだからな。」
「じゃあそこにいる怪人に手伝わせりゃいいだろ?」
「…できると思うか?この怪人に。」
帽子を被ったシルエットは最後の人影を一瞥する。
「…すまん。無理だな。」
そうして溜息を吐きながら答えた。
「だが、それで俺が手伝う理由にはならねぇぞ?コノハに手伝わせりゃ…、」
「ダメだ。私のプライドが許さん。」
帽子を被ったシルエットが大きく溜息を吐く。
「ったく、女ってヤツは…。」
「うるさいぞ。ゴチャゴチャ言ってないで真剣に手伝え。」
「はいはい。…あ~あ、明日ちゃんと起きれるかなァ…。」
こうして夜は更けていった。
3つの人影はその後はしゃべることもなく、黙々と作業を進めていったという…。
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「あ、歐邑さん。」
翌日。
週一はコンクリートブロックに腰を掛けている沙紀を発見し、手を振った。
ここはとある廃墟。
どっかの成金がゴージャス極まりない豪邸を建てようとした矢先に貧乏人へ転落し、作りかけのまま放置されてる。
その成金はどっかへ逃亡したため、この土地も廃墟もそのまま手付かずで残っており、何だかありがちな心霊スポットみたく見える。
でもここでは誰も死んでないから幽霊が出たという話は聞かない…そんな場所だ。
「あんたは…確か週一センパイ。例のアドバルーン見て来たの?」
そう。
今日、前回のカカシタゴサークの時のようにアドバルーンが浮かんでいたのだ。
メッセージは『決闘だ。場所はこの街の豪邸廃墟。来い。』という至極明快かつ命令口調でちょっぴり頭にくるものだった。
で、例の如く学校が終わってからのんびり指定場所にやって来たのだった。
「そうだよ。綾は少し遅れるって。冥介さんは連絡不能で、柱都先生は眠いから欠席。」
「ふぅん。あ、水面も今日は来ないよ。店が忙しいんだってさ。」
…随分と出席率の悪い決闘だ。
ヒーローにあるまじきコトではあるが、本人らにそういう熱血ヒーロー根性は皆無なので仕方ない。
「じゃあ今日は僕と綾、そして歐邑さんだけか。ま、僕はともかく2人とも強いから何とかなるかな。」
冥介はいてもいなくても意味ないし、週一は足手まといになるのがオチだろう。
唯一、憬教授がいないのが痛手だ。教授がいないと、決闘の後に夕飯おごってもらえない。
「あのさ、その『歐邑さん』ってのやめてもらえないかな?あたし、さん付けとかされると何かムズ痒いんだよ。あんた年上なんだし、呼び捨てで呼びなよ。」
「あー、OK。分かった。」
週一が答えた時、彼の携帯が鳴った。
「あ、メールだ。…綾からだ。ええと、道に迷ったから今日は帰る、だって。」
…ひでぇ。
いくら相手がダークキャン・Dだからって、そんな理由でスッポかすとは。
2人してリアクションに困っている時だった。
「あのぉ?」
間の抜けたような女の声がした。
振り返ると、そこには黄色いワンピースを着た少女が立っている。
手を後ろで組み、2人を興味ありげに見詰めている。
「ん?何か用?」
週一が訊ねると、少女は彼の持つ蟹バッグに視線を向けた。
「変身、してくれませんかぁ?もうこれ以上、お仲間来ないんだったらぁ、決闘開始したいんですけどぉ~。」
「へっ?」
少女の言葉の意味が一瞬理解できず、週一は眉を顰めた。
「私ぃ、怪人・動くドールっていいますぅ。ホラ、実は身体が人形なんですよぉ?」
後ろに組んでいた手を少女、『動くドール』は前に出す。
…昨晩、帽子のシルエットがアドバルーンを準備するのが無理って言った理由がそこにあった。
お手々がドラ○もんのようなお団子なのだ。
これじゃ何も掴めない。
「あ…ホントだ。人間じゃない。」
なるほど、と感心する週一の頭に沙紀の拳が炸裂した。
「センパイ、アホ言ってないで戦うよ。…接着ッ!!」
十字にクロスした腕から右腕を引き抜くっていう、けっこうカッコいい変身ポーズで沙紀は変身した。
「い、痛いなぁ…。何だか綾の強化バージョンみたいだよ…。接着。」
続いて殴られた頭をさすりながら、週一が蟹のバッグに頭を突っ込むっていう酔狂な変身ポーズで変身した。
多分最強のウゴクンジャー、歐邑沙紀ことウゴクンジャー蝶。
そしてきっと最弱だろうウゴクンジャー、蟹令李週一ことウゴクンジャー蟹。
そしてそんな最強最弱コンビに対峙するのはドラ○もんお手々のアホそうな少女こと怪人・動くドール。
…緊張感があんまりないけど、こうして戦いの幕が切って落とされた。
【初登場キャラ】
・怪人・動くドール




