11-6.沙紀 VS シュウ
「分かった。じゃあ、勝負だ!!」
戦闘を開始しようとする週一。
しかし…。
「ちょっと待った!」
沙紀の声で止められた。
2人は素直に止まる。
「何?」
「何ヨ?」
「…ちょっと待って。その怪人、何て言う名前なの?」
「アタシ?アタシハいみていと沙紀。アナタノ偽物ヨ。」
自分で自分を偽者とか言うのは何かアレだが、イミテイト沙紀は素直に答えた。
「あ、あたしの偽物…。」
やたらショックを受ける沙紀。
無理もない。
イミテイト沙紀はハッキリ言ってダメロボットだ。
頭は悪いし顔色は悪いし、それ以前にツギハギだらけ。
腕とか脚の関節はロボット感丸出しだ。
それが自分の偽物を名乗っているなんて…。
「何ヨ、固マッチャッテ。ヤッパリ偽物ノ存在ッテしょっくナノカシラ。」
「そりゃそうだよ。僕だって自分の偽物が現れたら困るし。」
固まってる沙紀を後目に会話する2名。
と、週一が彼女に言った。
「でも安心していいよ歐邑。自分の偽物は分かっていても倒しにくいだろうから、僕が倒してやる。…そういうわけで沙紀、悪いけど瞬殺させてもらう!」
タッ…!
あんまり軽やかじゃないステップで飛び掛り、蟹ブレードを一閃させる。
「ン?戦闘開始ッテワケネ。返リ討チニシテアゲルワヨ、しゅう!!」
ヴンッ!
重低音を響かせイミテイト沙紀の右手甲に青い光のシールドが現れた。
そしてそれで蟹ブレードを受ける。
案の定、ぶつかり合った場所はバリバリと放電音みたいなのが鳴った。
「なっ!?そんな能力、前はなかったはずなのに!!」
「フフン、前ノアタシダト思ワナイ方ガイイワヨ?アタシハ究極ノあんどろいど。新タニ2ツノ能力ヲ身ニ付ケタワ。コレハソノ1ツ、『耐DCD兵器限定しーるど』。だーくきゃん・Dノ作ッタ兵器カラノ攻撃ヲ完全ニかっとデキルノヨ!」
「じゃあ、パンチ!!」
バコン!
シールドをすり抜けて週一のへたれパンチがヒットした。
「キャアァッ!?」
壊れにくいけどターミネーターみたくタフじゃないイミテイト沙紀はそんなパンチでもよろける。
シールドも消滅し、ポンコツの胴体はガラ開きになった。
「だあっ!!」
そのチャンスに週一は蟹ブレードで突きを放つ。
ブレードって言っても実はただのドライバーである蟹ブレードにおいて、最も攻撃力のある攻撃だ。
ガンッ!!
「アゥッ!!」
ドラム缶を叩いたみたいな音が鳴り響き、イミテイト沙紀は手摺りに叩き付けられる。
さすがに生身じゃないロボットだから突き刺さることはなかったようだが、それでも結構な手応えだった。
「クッ…、回路ガ…!!」
叩き付けられた手摺りに掴まり、イミテイト沙紀はよろよろと起き上がる。
大層なことを言ってた割にはあっけない。
もう半分くらい戦闘不能みたいだし。
「デモマダヨ!必殺、ろけっとぱんち!!」
バヒュン!
前に突き出した右腕が週一目掛けて飛んで来る。
でもスピードはあんまり速くなかったから簡単に避けた。
「ウワッ、外レチャッタ!?デモ左手ガ残ッテルワ!ろけっとぱんち!!」
バヒュン!
でもやっぱりノロかった。
週一はそれも避け、間合いを詰める。
そして蟹ブレードを振り下ろした。
ついにポンコツは名実共にスクラップに…と思ったけど、なってなかった。
イミテイト沙紀が死力を尽くして回避したのだ。
でも頭は守れたものの、右肩にヒットして大きくへこんでしまっている。
「くそっ、外したか。もう1回、」
「ヒァッ!?チョット待ッテ!」
「待たない!」
「爆発シチャウノヨ!コノ船ガ傷付イテモイイノ!?修理費ガ結構カカルワヨ!?」
「うっ!」
振り上げた蟹ブレードが止まる。
…確かに前回戦った時、コイツは腕とか爆発した。
ということは破壊されればそれなりの爆発が起きる可能性が高い。
「…蟹に偽蝶。どうやら千日手に入ったようだな。」
動けないでいる2人に冥介が静かに言った。
2人だけで戦われて暇していたのだろう。
やたらもったいづけて前に進み出て、甲板に転がっていたイミテイト沙紀の両腕を拾い上げる。
そしてそれをポンコツに向けて放り投げた。
「退け、偽蝶。お前は分が悪く、我々も早く帰りたい。…利害は一致するはずだ。」
「エ?退イテイイノ?ヤッタ!らっきー♪八又乃冥介、アナタイイ人ネ!」
イミテイト沙紀は安心し切った表情で言う。
強がりもしないところが素直…っていうか馬鹿なコイツらしい。
「ア、しゅう。腕拾ッテクッ付ケテクレナイ?両腕飛バシチャッタカラ自分ジャ嵌メラレナイノ。」
「仕方ないなぁ…。」
ばつが悪そうに苦笑して言うポンコツ。
敵にそんなコト頼むなよって感じだが、週一もコイツに劣らないお馬鹿さん。
落ちている右腕を拾ってやった。
「エエト、嵌メ込ンダラ左ニ回シテ。かちゃッテ音ガスルマデネ。」
「分かった分かった。ホラ。」
カチャッ
で、めでたく右腕がくっ付き、イミテイト沙紀は嬉しそうに笑う。
「アリガト!ソレジャ今日ハオ疲レ様。」
「次は絶対倒すからな、沙紀。」
「ソレハコッチノ台詞ヨ、しゅう。…ジャアネ♪」
そして左手を抱えたポンコツは、笑顔で手を振りながら消えていった。
「…何だか、よく分からないロボットだったね。」
「強くないことだけはよく分かったがな。」
しばらくして綾と冥介が呟く。
「あんまり歐邑さんに似てませんでしたね。あ、制服が同じだからイミテイトなのかな?」
いつの間にかヴァンカ=ヒールを異空間に収納した鎖雪も微妙な顔してる。
やはり奴の存在は今までのダークキャン・D怪人と比べてもいろんな意味で異質なのだ。
と、週一はさっきから沙紀の反応がないのに気付いた。
「歐邑?」
「…。」
沙紀は少し俯いた格好でいる。
表情は無表情…というか怒気を放つ無表情だ。
「センパイ。」
「ん?」
「あのポンコツを『沙紀』って呼ぶの禁止。」
「え?でも…、」
「お願い。」
お願いとか言いつつ、拳はグーで固く握られている。
「うっ!」
「お願い。」
グーがもっと固くなった。
当たったりしたら、もの凄く痛そうだった。
「OK!やっぱり敵をフレンドリーな呼び名で呼ぶなんて間違ってるよね。うん。」
再び女子高生に脅される大学生。
何て言うか、もう可哀相を通り越して終わりだった。




