11-3.柱都親子
どう年に見ても30代前半が限界な女性、冴は憬教授の淹れたコーヒーを飲んだ。
そして目を閉じ、その匂いを嗅ぐ。
「うん、いい匂い。コーヒー淹れるの上手くなったわね、憬。」
「ヒマな時間に創作料理とかで練習しましたから。」
微笑み合う母娘。でも普通に見たらこの2人が親子だって思わないだろう。
高校生の妹にOLの姉といった感じか。
「…ええと、先生のお母さんだったんですよね。」
イマイチ釈然としない週一。
すると冴が微笑んで見せた。
「ええ。血の繋がった親子よ。ね、憬?」
「似てませんか?親戚からは私は母親似とよく言われるんですけど。」
…確かに似ている。
顔とかじゃなく、見た目と実年齢がまるで違うって点が。
「センセイって確か27歳(見た目は10代後半だけど)だったよね?その…冴さんが実の母親だとすると、どう考えても年齢がおかしいような気がするんだけど。というか、冴さんが27歳って言われてもおかしくないし。」
沙紀が苦笑混じりに言った。
「ふふっ。ありがとう、沙紀さん。」
冴は嬉しそうに微笑む。そんな彼女に憬教授が言う。
「お母さん。お世辞ですよ。」
「分かってる。もう、憬ったら野暮ね。」
お世辞じゃないって言いたい沙紀&週一だったが、それは何とか堪えた。
この2人を前にしていると、人間の年齢観念が吹っ飛びそうだ。
「あ、そうそう。こんなことしてる場合じゃなかった。」
突然立ち上がり、冴は声をあげる。
そして怪訝そうにする憬教授を見た。
「憬、今日はちょっと付き合ってもらうから。例のレポートが評価されて、また号が取れたみたいなの。それでさすがに本人が不在じゃまずいから連れて来るように頼まれたのよ。嫌とは言わせないから。」
「取れちゃったんですか。…う~ん、3日の研究で適当に作ったものだったのですが、テーマが珍しかったから良かったのかもしれませんね。分かりました。行きます。」
何かよく分からん話が纏まった柱都親子。
蚊帳の外に置かれた週一&沙紀が困っていると、親子は微笑みながら2人に向き直った。
「ごめんなさいね、週一君に沙紀さん。私はこれから出掛けなきゃいけなくなっちゃいました。ですから残りの3人のこと、お願いしますね。クルーザーの鍵は…そうですね、週一君か綾さんが預かっていて下さい。大学が始まったら返してくれればいいですから。」
◇◇◇
見た目は20代後半、でも実年齢は54歳の壮年女性が運転し、見た目は10代後半の少女で実年齢が27歳の大学教授が助手席に座ったカオス渦巻く赤いスポーツカーは去っていった。
「…改めて先生って凄いと思ったよ。きっと柱都家の遺伝子は普通の人間と違うんだ。老化を抑える何かムズかしい名前の物質が大量に分泌されてるんだよ。」
「かもね。センセイも冴さんみたいになるだろうし。」
2人は大きく溜息を吐く。
「まあ、世の中には科学では説明のつかないことがあるもんだよ。それよりみんなを起こそう。いつまでもクルーザーにいるわけにはいかないしね。」
「分かった。じゃああたしは綾さんを起こすから、センパイは鎖雪ちゃんをお願い。」
と、そこまで言った時、沙紀は週一を軽く睨んだ。
「な、何だよ?」
「まさかとは思うけど、あたしを起こしたみたいな方法で起こすんじゃないよね?」
「あれは普段からやってることだから別に、」
「…これからは禁止。いくら妹でもアレはダメ。やったら…、」
握り締めた拳を見せる。
週一はマジで怯えた。
「…やりません誓いますホントにマジで。でもどうやって起こせって言うんだ?」
「やさしく。」
「無理。」
「そう。じゃあ、」
ゆっくりと拳を振り上げる。
「もの凄く優しく紳士的に起こすと誓います。」
即答だった。
女子高生に脅される大学生。何て言うか、情けないを通り越して可哀相だった。
【初登場キャラ】
・柱都 冴 ・・・フルネーム初登場




