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下等生物戦隊ウゴクンジャー  作者: 深爪リオ
SECTION10-夏だ!海だ!!全員集合だ!-
153/159

10-12.夜の甲板と語り合う二人

「…。」


週一は甲板の手摺りに片手を置き、遠くを見詰めていた。

空には満天の星空が広がり、心地よい揺れと夜の潮風が彼の頬を撫でていく。


「…。」


波の音以外は聞こえない空間。

遠くに街の明かりが見えるものの、海の上には彼の乗る船の他には人工の光はない。

彼は無言のまま、夜空を仰いだ。


「…夜は、全ての色が眠りにつく。鮮やかな色彩も優しい闇に包まれて今は夢の中だ。頭上の星の光が子守唄を歌い続ける限りはな。」


背後から声する。

振り向くと、風にジャケットを旗めかせた冥介が立っていた。


「お前も多くを背負っている。そうやって黄昏る姿も、初めて会った時よりは様になって見えるぞ。」


そしてフッとニヒルな笑みを浮かべる冥介。

確かにさっきの週一の行動は彼に通じるものがある。

真面目な顔してりゃ2枚目とはいかなくても2.5枚目くらいには見える週一だ、甲板に1人佇んでる姿はそれなりにカッコよく見えなくもなかった。


「…予定が狂っちゃったからどうしようって思ってただけですけど…。」


…そういうことらしい。

まあ、カッコつけようとかそういう考えが脳味噌にない週一君が黄昏てるわけないとは思ったが、やっぱり違ったようだ。


「海って日帰りの予定でしたよね?だからサブ太とアジ美のエサ、1日分しか与えてこなかったんです。それが不安で…。」


くだらない心配。

それでこそ週一だ。


「それはお前の飼っている蟹だったな。案ずるな、1日くらいエサがなくても生きていける。ペットを愛するのはいいことだが、甘やかしは危険だ。」


「…蟹に甘やかしも何もないような気がしますけど…。」


「フッ、照れることはない。…時に蟹よ、俺は思うのだ。」


「全然照れてないけど…もういいです。ええと、何を思うんですか?」


ちょっぴりぐったりして訊ねる。

自己中モードに突入した冥介には何を言っても無駄無駄無駄ァ!なのだ。

冥介は目を細め、星空を仰ぐ。

そして口元に笑みを浮かべた。


「この戦いは熾烈を極める。死を覚悟したことなど、1度や2度ではないだろう。」


「…。」


突っ込みたい週一だったが、我慢して続きを聞くことにした。


「しかしな、ただの1度たりとも逃げようなどとは思ったことはない。蟹よ、なぜだか分かるか?」


「カッコいいからですか?」


冥介ならそれが1番の理由だろう。

ってか、それ以外考えられない。

でも彼はかぶりを振った。


「かつてはそうだった。しかし、今は違う。護るべきものが出来たのだ。」


「…はあ。」


「それが何か、知りたいか?」


「少しだけ。でも言いたくなかったら別にいいです。」


「特別に教えてやろう。」


…きっと言いたくてたまらないんだろう。


「じゃあ、聞かせて下さい。」


「この街、この街に生きる人々、そして仲間たち。フフッ、月並みかもしれんが、それでも以前の俺なら理由ではなかったろう。…だがな、あいつに言われてしまった。『この街を、仲間を護って』とな。あいつに言われてしまってはどうしようもない。全く、男とは何とも不器用な生き物だ。」


「あいつ…?」


「ああ。俺には勿体無い助手だった。」


日和。

彼女のことだ。

彼女がダークキャン・Dの怪人に殺された(壊された?)ことは後日になって彼から聞いていたが、詳しくは語られなかった。

鈍感野郎の綾でさえも冥介が落ち込んでると思って深く追求しなかったし。

それを彼から口にするとは…。


「日和が…。」


「消滅の直前にな。あいつはその時に初めて俺を俺の名で呼んだ。…俺が駆けた時、いつものように顔は笑顔のままだったが、声は震えていた。流すことはできない涙を、あいつは確かに流していた。」


彼は小さく微笑み、夜空を仰ぐ。


「蟹よ。お前には心の底から護りたい者がいるか?」


「う~ん、家族とかですね。あと蟹。」


「フッ…。」


バサッ…


冥介が踵を返すと同時にジャケットがマントみたくカッコよく翻る。


「俺は、それが護りたい者と気付いた時にはもう失ってしまった。…お前は護り通せ。護れなかった俺にそれを言う資格はないかもしれないが、な。」


で、潮風に髪を靡かせながら去って行く。

何だか今日の冥介は言動がマトモだった。

カッコつけてることは変わらなかったけど。

このまま船内へ入って行くかと思いきや、彼は立ち止まった。

そして振り返らずに言う。


「…家族か。まあ、それも1つの道だ。しかしいずれお前にもできるだろう。血が繋がらずとも、心を傾ける相手が…。」


「…。」


再び歩き出す。そして今度はもう立ち止まらなかった。

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