10-10.ダーク・キャンDの実力
迷彩服姿や装甲服姿の兵士たちの中、軍服姿の女性が立っていた。
兵士たちが一斉に銃を撃つ。
しかし放たれた銃弾は彼女の服を破くことすらできなかった。
全てその女性に当たった瞬間、スポンジに当たった石ころみたいにポトリと地面に落ちるのだ。
装甲服姿の兵士が撃った最新レーザー銃のレーザーも、ニセモノっぽい煙を上げて消滅する。
「学習能力がないのか?近代兵器は効かんと言ったろう?…まあ、もし無力化されなくとも、こんなオモチャでは私に傷1つ負わせられんだろうがな。」
女性は鼻で笑った。
そしてゆっくりと格闘技特有の構えを取る。
「武器には武器を、と思って銃を用意したのだがな。…弱すぎる。使う気も失せた。右手だけで伸してやろう。」
風に揺れる豪奢な金髪。
言わなくてもバレバレだけど、この女性の正体は破甲のカイネに違いなかった。
◇◇◇
「ったくよ、なんでこのオレがこんな地味な仕事やらなきゃなんねぇんだ?」
こしゃまっくれた高い声が静かな部屋に響く。
そこはやたら巨大なコンピューターが大量に設置された部屋だった。
「そうだね、ボクも戦闘の方がよかったなぁ。でも、これはこれで楽しいよ。」
子供っぽい舌足らずな声もしていた。
と、そこらじゅうに設置されていたディスプレイに赤い文字が表示される。
日本語で表記すると『セキュリティ解除』だ。
「いっちょあがりだぜ。これでこの国のデータはオレらの管理化に置かれたぜ。ったく、メンドくせぇセキュリティしやがって。5分もかかっちまったじゃねぇか。」
「こっちも終わったよぉ。主要な軍事施設はこれで麻痺したと思う。さっき作った自己進化性のコンピューターウイルス入れておいたから、もうボクら以外じゃ手が付けられないよ。」
国の中枢にあるスーパーコンピューターを5分で制した2名。
何だか意外だけど、それは機動野菜キヨスク&超戦略型自律兵器カライドその人(?)だった。
◇◇◇
『ファルコン中隊、及びイーグル中隊、現在、第98区画の上空にいます。これから太平洋にある敵の基地を爆撃します。』
司令室に通信が入った。戦闘機団からだ。
壁の地図ディスプレイには5つ戦闘機マークのランプが点滅しながら南下している。
その1つづつが10機ほどの1個中隊で編成されている。
禿の長官は頷き、指令を出そうとした。
『!?なっ…、何だアレは!!』
その時、突然通信にノイズが入った。
2222年の通信技術でノイズが入るなどありえない。
やたら強力な妨害電波があったとき限定だ。
「どうしたファルコン中隊!?何があった!?」
長官が問うが、相手側は答えない。
『う、うぁ…、ば、化けも、』
ブツッ…
怯えきった声と同時に回線が切れ、ディスプレイ上から全ての戦闘機マークが消えた。
そして他の電波が介入してくる。
司令室に緊張が走った。
『…皆さんはもう通信できなくなりましたので、私が代わりにお話しましょうか。』
女性の声、抑揚のない口調だ。
「なっ!?何だ貴様は!!」
『今の部隊を全滅させていただいた者です。飛行機を“1個”捕まえたので、通信機を使わせていただきますね。』
「戦闘機を捕まえた…!?そ、そんなことができるわけ…、」
『…次に送って来ても結果は同じです。もう、抵抗をやめることをお勧めします。』
女性は静かに諭すように言う。
と、他の通信機から相次いで部隊全滅の報告が聞こえた。
禿の長官は机を激しく叩く。
「だ、黙れ!!我々が、この超大国の我々がお前たちのようなワケの分からん敵に屈してたまるか!!」
『…残念です。』
次の瞬間、司令室の全てのコンピューターがフリーズした。
そしてディスプレイに大根畑の映像が映し出される。
「!?」
「ちょ、長官!全コンピューターが麻痺しました!!手が付けられません!!」
「衛星通信も使用不能です!!他の基地との通信が!!」
パニックになる司令室。
と、1つだけ生き残っている通信機から再び女性が言った。
『全ての軍事、政治関連の施設を制圧しました。兵器も使用不可能です。もはや、あなた方に残された戦力は皆無です。』
「なっ…?」
ディスプレイに映った大根畑の映像が切り替わり、何だかよく分からない紋章が映し出される。
『…この国は、我々ダークキャン・Dの支配下に入りました。』




