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下等生物戦隊ウゴクンジャー  作者: 深爪リオ
SECTION1-夏だ!海だ!!全員集合だ!-
145/150

10-4.夏と言えば海水浴…ですよね?

「どうなってんの!?何でこの海岸にいるのに、釣りとか潮干狩りとか…しかも蟹探しとか意味分かんないコト言ってるのよ!?」


すっかり被っていたネコが剥がれた朝倉が、ヒステリー気味に声を荒げる。

他のクルー達はグロッキーだ。

海岸から少しだけ歩いた所にある道路に着いた時だった。


キッ!


路肩に停めてあったテレビ局のヴァンのすぐ近くに、何とも高級そうな車が停まる。

もちろん窓は真っ黒スモークで中の様子は不明だ。

…もしかしてあっち側(ほっぺに傷があったり背中に派手なペイントがあったり)の方か?と思ったクルー達だが、運転席から現れたのは薄緑の着物を着た女性だった。


「何で海岸に和服着た人が?」


田辺が眉を顰める。

そりゃそうだ。

その女性はかなりの美人だが、海とか日焼けとかそういうアウトドアは似合いそうもない。

お茶とかお花とかやってる方が相応しい、インドアな人だ。


カチャッ…


と、後のドアが開き、水着の上に白いシャツを羽織った少女が現れた。


「葦和良さん…こんな所まで送ってくれなくても良かったのに…。」


少女が苦笑しながら言うと、和服の女性はかぶりを振り微笑む。


「海の家には更衣室があるそうですが、さすがに着物から着替えるのは大変だと思いましたので。それに和服状態のお嬢様では水着に着替えようとしないかもしれません。」


「まあ、それもそうだけどね…。ありがとう。」


少女…っていうか沙紀はそう言い、どこまでも続く砂浜を見た。


「時間は…まだ5分前か。じゃあ行って来るね、葦和良さん。」


「一応、着替え用の着物はこの鞄の中に。ですが着替えるのは大変でしょうから、連絡を下されば迎えに参ります。それでは、行ってらっしゃいませ。」


深々と頭を下げる葦和良。

やっと見付けた海水浴目当ての人(水着を着てるし間違いないだろう)なんだけど、富清テレビの面々はその2人にレポートしようとはしなかった。

この海岸に高級車で乗りつけるお嬢様と、やたら優秀そうな女性使用人。

どっかの社長令嬢とかならまだいいけど、ヤクザの娘って可能性もある。

渡るには危険すぎる橋だ。


しかし勇気ある奴…っていうかそんなの該当者1名だけど、その橋を渡ろうと歩き出したのがいた。

レポーターの朝倉だ。


「あの~、すいません、富清テレビです。」


「え?」


気付いた沙紀にマイクを向ける朝倉。

その瞬間、そこら辺にいた鳥が一斉に飛び立った。

理由は…まあ、反応したってことだ。


殺気に。


「ああ、テレビね。…葦和良さん。」


「…。」


沙紀が目配せすると、葦和良は穏やかな笑みを湛えたまま頷いた。

でもその手は自分の背に回っている。きっと苦無か短刀か握っているのだろう。


「?…ええと、インタビューにお答えしてもらえますか?」


一瞬、命の危険に曝されたんだけど知らぬが仏の朝倉が少し怪訝な顔をしたものの、続けて言う。


「2、3分なら。」


「そうですか!ありがとうございます!今日はこの臨界海岸へ海水浴の傾向についてリサーチしに来たんですよ!それで、あなたはもちろん海水浴目当てですよね?」


「一応その予定だけど。」


沙紀の返答に、テレビクルー一同は心の中で歓喜の涙を流した。


「うぅ、そうですよね!夏と言えば海!海と言えば海水浴ですよね!?」


目を潤ませた朝倉が声をあげる。

もちろん、なんでコイツらがこんな感激してるのか沙紀は知らない。

その原因が自らのアホな仲間にあることなんてもっと知らない。


「それで今日はお1人で?それとも彼氏と待ち合わせ?」


「友達に誘われて。あ、ちょうどあそこに見えるよ。」


そう言って彼女は砂浜方面を指差した。

テレビカメラがその指先を追う。


そして…凍りついた。


「…。」


朝倉の肩がガクリと下がる。

他のクルーも同じくだ。


「?…どうかした?」


怪訝そうな沙紀だが、朝倉達は何も応えなかった。

何だか自殺しそうな顔してマイクを引き、テレビカメラを肩から下ろす。


「どうも…ありがとう、ございました…。」


「え?もうインタビューいいんだ?」


「ははっ、ええ、もういいです、何でもいいです。あはは…。」


壊れた笑みを浮かべながら去っていく富清テレビ御一行。

沙紀はしばらく首を傾げていたが、やがて気を取り直して海岸へ歩いて行った。


◇◇◇


「あの子は大丈夫だと思ったのに…、水着だったからマトモだと思ったのに…。」


ブツブツと精神いっちゃったみたいな感じで朝倉が呟く。


「何で…何で待ち合わせの相手が『あいつら』なのよ…。断言できるわ、あの子もきっと海水浴目的じゃない。あれは水着じゃなくてレオタードの派手バージョンか何かで、きっとビーチバレーならぬビーチバレエでもやろうと…、」


「おい、朝倉が壊れてるぞ、田辺。」


きっとディレクターか何かだろう男が彼女の様子を見て言った。


「気持ちは分かるッスよ。それより、思ったんですけど…、」


田辺が少し申し訳なさそうにディレクターを見る。


「何だ?言ってみろ。」


「別に到着した人にインタビューしなくても、泳いでる人にインタビューすれば間違いなかったんじゃないスか?」


「…。」


沈黙が流れる。

さっきよりもう一段階嫌な沈黙だった。


何で、気付かなかったんだろう…。

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