10-2.約束の日
「クッ!うごくんじゃー蟹ハ最弱ダッテ聞イテタノニ話ガ違ウジャナイ!!」
あれから10分。所々がヘコんだイミテイト沙紀は損傷が激しい左腕を押えて叫んだ。
「うぅ…僕、最弱だって言われてるのか…。でも、一応僕だって正義の味方なんだから!お前みたいな怪人には負けない!」
精神的ダメージを負った週一だけど、そこは不屈(っていうか最近は負け犬根性)のヒーロー。
足を踏ん張って蟹ブレードを構える。
「コウナッタラ最後ノ手段ヨ!いみていと沙紀、最強必殺!!だぶるぱんち!!」
イミテイト沙紀は掛け声と共に両腕を突き出して走ってきた。
ダブルパンチ。
どうやら両腕をいっぺんに突き出すパンチのようだ。
「いくら僕でもそんなのは当たらないって!」
あんまし速くない&隙だらけなその攻撃をかわし、週一はイミテイト沙紀の背中を斬り付ける。
ドラム缶を叩いたような音がして、ポンコツは前のめりに吹っ飛んだ。
「キャアッ!?」
ごろごろ転がるイミテイト沙紀。
2mくらい転がってから電柱に激突して停止した。
「…ウゥッ!しすてむガ…チョピリばぐッテキタ…。電力モ危険値ニ!」
よろよろと立ち上がりながら、ポンコツは呟いた。
「ドウヤラ今日ハアタシノ負ケミタイネ。」
そしてポケットから妙なリモコンを取り出す。
ポチッとボタンの1つを押した。
ボンッ!
「キャアァァッ!!?」
右肩の関節の所が爆発し、そのまま腕は胴体からサヨウナラした。
…何だか嫌な沈黙が流れる。
「…ええと。」
困っている週一を、イミテイト沙紀はびしっと指差す。
「次ハ負ケナイワヨ!首ヲ洗ッテ待ッテルコトネ!」
「自爆するんじゃないの?」
「瞬間移動デ消エヨウトシタンダケドネ、間違エテ爆破ノすいっちヲ押シチャッタノ。アタシハマダ死ニタクナイワヨ。」
やれやれとばかりに肩を竦め、今度は慎重に選んでスイッチを押した。
今度はちゃんと正解のようだ。
イミテイト沙紀の姿が薄れていく。
「ヤッタ!今度コソ間違エナカッタワ!ジャアネ、バイバイ♪」
「え?あ、うん。じゃあ。」
最後の最後で手を振って消えていったポンコツ。
週一は微妙な気分でそれに応えた。
…それにしても。
本当に素直って言うかバカっていうか…変わったロボットだった。
完成度も低いし、どう考えても失敗作だろう。
あんなモノを誰が造ったのか?どうでもいい謎が、また1つ増えた。
◇◆◇
約束の日がやってきた。
もちろんカッコいい意味の『約束の日』じゃなく、海に行く約束の日だ。
「みなさんこんにちは。朝倉喜美です。今私は臨界海岸に来ています。」
丸い眼鏡の女性レポーターが穏やかな口調で言う。
そう、かつてクリティカル定食・エイ&ビイを取材しようとしてウェキスに服を切り刻まれ、生中継ストリップをしてしまったあのレポーターだ。
でも雰囲気がやたら変わっている。
ちなみにかつて生中継でストリップをした人ではありません、断じて違います。同姓同名の人違いです。私は新人で、あの人とは何の関係も…、」
「朝倉さん、ちょと落ち着いて下さい!そんな説明はしなくていいですって言うか、しないで下さい!またヘマしたら今度こそクビですよ!」
そう横から口を出したのは…茶髪男、カメラマンの田辺だった。
コイツは別に変わってないようだ。
朝倉も見た目だけ変えているようで、中味は変わってないっぽい。
「え?あ、そ、そうね。じゃあ今のはカットしといて。」
朝倉はゴホンと咳払いをし、話を戻した。
「この臨界海岸は、20kmの長さを誇る海岸で、海水浴のできる砂浜とヨットやクルーザーが停泊できるほどの港、そして釣り人に欠かせない防波堤と岩場があるという、海の全てを詰め込んだような夏のパラダイスです。夏も本場な今日、ここは多くの人で賑わっています。」
カメラが海岸や港を映し、再び朝倉に戻る。
「今日は夏休みの特集として、今年の海水浴の傾向について若者を中心にリサーチしてみようと思います。あ、ちょうど今、いかにも凡人…失礼しました。どこにでもいそうな大学生がやって来ましたね。彼に取材してみましょう!」
朝倉が海岸の入り口を指差し、カメラはその先をズームアップする。
そこに映っていた大学生っていうのは…週一だった。




