10-1.偽物!?
萌木公園からアパートまでの距離はそんなに長くない。
でも、体力のなさには自信がある週一にとっては結構な重労働だ。
「…本格的に運動とかしよっかなぁ…。握力鍛えるとか。」
握力はスタミナ増強には向いてないような気がするが、彼は呟く。
と、何だかホンワカしている彼の前に陰が差した。
「!?」
飛び退く週一。
差した陰がどう考えても人間のモノじゃなかったのだ。
「…オノレがウゴクンジャーか。」
ゴリラみたいなガタイのゼリーだった。
半透明で向こう側がちょっぴり透けて見える。
「そうだけど…やっぱりダークキャン・D?」
「ワレはゼリー阿修羅。オノレのタマ、取らしてもらいやす。」
ゼリー阿修羅。
まあ、確かに見た目は阿修羅みたく強そうだ。
でもゼリー。
週一はちょっと迷った後、素手でそいつに殴りかかった。
「ていっ!」
ドグシャ!
「ぱぎゃ!?」
水を殴ったみたいな音がしてゼリー阿修羅に大きな穴が開く。
やっぱり防御力もゼリーだったようだ。
「…やっぱり弱いや。えい!」
ベチャ!
「でゅあ!?」
「とりゃ!」
ドベチャ!
「べおっ!?」
3発殴った時点でゼリー阿修羅は崩れていった。
もの凄い弱さだ。
未だかってないほどのザコ、あんまり弱すぎて同情したくなる。
「…ふぅ。こんな相手だったら僕だけでも楽勝だな。」
ブスブス煙を上げて消えていくゼリー野郎を見下ろしながら彼は呟く。
すると、消滅寸前のゼリー阿修羅の表情がニヤリと歪んだ。
「ウゴクンジャー…、か、かかったな?ワレは、た、タダの鉄砲玉や。オ、オノレの力は…見切った。あとは、ワレの仲間…が…。」
バシュッ!
意味深な台詞を残し、ゼリー阿修羅は消滅した。
「…僕の力を見切った?」
眉を顰める週一。
「ソウイウコトヨ。」
「!?」
背後からのメタルっぽい声に彼は振り返る。
そこにいたのは…微妙に沙紀っぽい造型のロボットだった。
もちろん、ロボットだってバレバレだ。
顔色がやたら悪くて、しかもツギハギがあるし、手足もマネキンっぽくてネジとか見えてる。デキの悪い超合金人形みたいだ。
で、服装はというと、どこからか盗んできたのだろう四神女子高の制服だった。
そこだけは本物と同じだ。
「…何だか訊かなくても分かる気がするけど一応訊く。お前は何者だ!?」
「アタシハいみていと沙紀。うごくんじゃー最強ノ戦士、歐邑沙紀ヲ模写シテ造ラレタあんどろいどヨ。」
捻りのないネーミングだ。
もしここに沙紀本人がいたら、コイツは瞬時にスクラップにされるだろう。
「蟹令李週一、アナタノ力ハ見切ッタ!アタシハうごくんじゃー全員ノ力ヲ見切リ、最強ノ戦士トナルノヨ!」
「ええと、じゃあお前は歐邑くらい強いロボットってわけじゃないんだよね?」
「ソリャソ~ヨ。マダ歐邑沙紀ノ力ハ見切ッテナイカラネ。姿ハ沙紀ニ似セタンダケド。」
「蟹ブレード!!」
週一は例のロングドライバーを抜き、斬り(殴り)掛かる。
沙紀くらい強いなら無理だけど、このポンコツが見切ったのは自分の…しかも素手のパワーのみ。
自慢じゃないが、腕力の弱さにかけては自信があるから怖くない。
バコン!
「キャアッ!?」
殴ったらドラム缶を殴ったみたいな音がした。
さすがロボットだ。
でもダメージはあんまりないっぽい。
「痛イジャナイ!ドウシテ攻撃デキルノ!?アタシハうごくんじゃーノ仲間ト同ジ姿ナノニ!!シカモ女ノ子ナノニ!!」
「その姿を見て女の子だって思うヤツはいないと思うよ。あと、それで沙紀と同じ姿だとか本人の前で言わないように忠告してあげる。確実に殺されるから。」
週一が言ったが、イミテイト沙紀は聞いちゃいなかった。
「モウ怒ッタワヨ!アタシノ本気ヲ見セテアゲルワ!…セイッ!!」
ロボットのくせにやたら表情が豊かだ。
さっき週一がやったのと同じくらいのスピードで殴りかかってくる。
これで沙紀の偽者って言うんだから命知らずなヤツだ。
「だから僕のパンチを見切ったくらいじゃ意味ないって!」
週一は苦笑すると蟹ブレードでイミテイト沙紀の腹をブン殴った。
ベコン!!
またドラム缶を殴ったみたいな音。
で、イミテイト沙紀はよろける。
「痛ッ!?チョット!オ腹ノ部分ガヘコンジャッタジャナイノヨ!?アアッ!?シカモ今ノ一撃デ、セッカク見切ッタアナタノ力ガ消エチャッタジャナイ!」
…酷い能力の持ち主だ、コイツ。
腹を攻撃されると見切った能力が消去される。
確か日和もそんな弱点があったけど…こっちの方がデキが悪いようだ。
「モウ!信ジランナイ!!アナタッテ本当ニ酷イ奴ネ!」
「…あえて反論しないでおくよ。疲れそうだから。」
そう言うと、彼は溜息を吐いた。
そして訊ねる。
「ああ、そう言えば相手の力を見切るとか言ってたけど、どうやって見切るの?」
「簡単ヨ。アタシノ中ニハ小型ちっぷガ入ッテテネ。ソレヲ入レタ怪人ガ戦エバ、ソイツノ力ヲ見切レルノヨ。凄イデショ?」
そんなこと敵に言うなよって感じなんだけど、イミテイト沙紀は自慢げに答えた。
「それで…その小型チップって何個くらいあるの?」
「うごくんじゃー全員ブンダカラ…5個ヨ。デモ、サッキ1個使ッチャッタカラ残リ4個カシラ。」
「見せて。」
「ドウシヨウカシラ…。マ、イイワ。見セタッテ減ルモンジャナイシ。ハイ。」
頭が悪いくらい素直(きっと頭が悪いだけだろう)なイミテイト沙紀はそう言ってポケットから妙なチップを取り出して見せた。
「凄イデショ?1個1個でざいんガ違ウノヨ?特ニコノ星型ノハオ気ニ入リデ…、」
バキッ!
台詞の途中で週一は彼女(?)の見せたチップを叩き割った。
イミテイト沙紀の顔色が変わる。
「ナッ!?何スルノヨ!?壊シタラモウ見切ル能力ガ使エナイジャナイ!?」
「だから壊したんだよ。僕の力を見切るのなら平気だけど、沙紀とか綾の力を見切られるとヤバいから。…これでお前は脅威じゃなくなったね。」
今日の週一君は冴えている。
卑怯って言えば卑怯だけど、知能プレイって言えば知能プレイだ。
「…クッ!デモマアイイワ。ソモソモ、他人ノ力ヲ見切ッテ戦ウコト自身ガ間違イナノヨネ。うごくんじゃーゴトキ、アタシノ本来ノ力デ十分ヨ!」
前向きだ。
ここまで前向きな怪人は他にいないだろう。
「デハ、蟹令李週一!改メテ勝負ヨ!今度ハアタシ自身ノ力デ行クワ!!」
で、再びヘタレヒーローとポンコツの戦いが始まった。
【初登場キャラ】
・ゼリー阿修羅
・イミテイト沙紀




