9-11.めでたしめでたし
5分が経過した時点で残っているPマーモセットは2体だった。
ビイとカグヤはそのPマーモセットを同時にやっつけると、羅刹ロケットを睨み付ける。
「歯応えないネ。Pマーモセットごときじゃワタシを倒せないアルよ。」
「もう貴方お独りですね。」
周りで消滅していくザコ戦闘員を一瞥し、羅刹ロケットは鼻を鳴らした。
「フン、こんなので勝てるなんて最初から思ってなかったHO。直接このIがケリをつける予定だったHO。」
「強がても無駄ネ。アナタ、どう見ても鈍そうアル。速攻で攻めてお終いヨ。」
「…言い忘れてたがHO、Iの能力は…宇宙へ行けることHO。」
…まあ、ロケットだしね。
ウゴクンジャーだったら『あっそう。じゃあ勝手に行ってらっしゃい』とかで済みそうなんだけど、その台詞にカグヤが反応した。
「宇宙!?では月にも…!!」
「楽勝HO。Iは店の外で聞いてたHO?オマエ、月の世界へ行きたいらしいHO。連れてってやってもいいんだけどHO~?」
誘惑する羅刹ロケット。
狙いは何だ!?とか訊ねりゃいいのに、カグヤは別のことを言った。
「わ、私を月へ連れて行って下さい!!」
「カグヤ!?」
ビイが声を上げる。
これは罠に違いない!とか言うと思ったけど、やっぱり彼女も別のことを言った。
「刺客がそんな親切してくれるわけないヨ!法外なお金、請求されるアル!」
「タダだと言ったらHO?」
「!?」
その言葉にビイとカグヤが息を呑んだ。
「タダで月に送ってやるって言ってるHO。Iの目的は裏切り怪人の処分、カグヤ、オマエはドリーム童話が童話の世界から呼び出した者HO。童話の目的が成就すれば消滅するんだHO。だからオマエの願いを叶えることは、即ち裏切り者を1体始末することにも繋がるってわけHO。」
羅刹ロケットは加えて言った。
「さあ、どうするHO?始末とは言っても、オマエにとってはそれが目的HO。利害は見事に一致しているHO!」
「そ、それは…!」
うろたえるカグヤ。
確かにロケット野郎の言っていることは正しい。
自分は月の世界に帰れ、奴も裏切り者を1人排除できるのだ。
「…ワタシは何も言えないアル。カグヤ、決めるネ!アナタが帰りたいて言たら、ワタシは何もしないヨ。でも、戦う言たらコイツ倒すアル!」
「わ、私は…!!」
カグヤは俯き、そして顔を上げた。
「私は、帰ります!月の世界へ!!」
「交渉成立HO!では、Iに掴まるHO!」
高らかに笑い、羅刹ロケットは手を差し伸べる。
カグヤはその手を取ろうとして…そしてビイの方を向いた。
で、しおらしい顔をして言う。
「…おばあさま。」
「ワタシ、お婆さんじゃないアル!」
「言わせて下さい!!」
「うっ!」
いつになく大きな声にビイは黙る。
それを確認し、カグヤは続けた。
「今まで本当にお世話になりました。おじいさま&おばあさま。私は月の世界に帰ります。どうか、悲しまないで下さい…。」
どうやら童話の通りにやってるようだった。
でもそこは月夜の翁宅じゃなく、朝の蕎麦屋前。
見送るのはお婆さんじゃなくてエセ中国娘だ。
それに月へ連れて行くのが使者&馬車じゃなく、ロケット怪人。
ムードもへったくれもない。
「カグヤがいなくなると、店の仕事が大変になるネ。でも仕方ないアル。悲しくはないアルけど。」
「これは今まで育てて下さったお礼に置いていきます。」
そう言って例の扇子を差し出した。
ビイは受け取る。
「くれるて言うなら貰うヨ。どうもアル。あと、育てた憶えはないネ。」
「では、さようならです…。月の世界からおじいさま&おばあさまの健康を祈っています…。」
一通り言い終えたカグヤは、すっきりした顔になって息を吐いた。
「ふぅ。これで私もようやく元の世界に戻れそうです。ではロケットさん、お願いしますね。」
「…よしHO。では行くHO!」
羅刹ロケットはカグヤの手を取り、下に付いてるブースターから青い光を放ち始める。
大気がブルブルと震えた。
「任務完了HO!!クリティカル定食・ビイ!次はオマエHO!!首を洗って待つがいいHO!!!」
ドンッ!!
凄まじい衝撃と共に、羅刹ロケット&カグヤは飛び上がった。
そしてそれはみるみる小さくなり、やがて青空の向こうに消えていく。
「…さよならアル、カグヤ。お店のことは任せるよろし。」
もう点も見えなくなった青空を見上げ、ビイは呟いた。
…そして何だかよく分からないうちに、何だかよく分からないキャラのカグヤは消えていったとさ。
めでたしめでたし。




