1-12.集え!正義の味方
「ぐえ。」
砂浜にタゴサークは頭からダイブした。
そして例の自殺志願者は…。
「ウ、ウゴクンジャー!?」
驚きの声をあげる週一。
タゴサークの傍らには、地上20cmほどにホバリングする紫のタクティカルフレームがあった。
しかも…カッコいい。
戦隊モノの全身タイツではなく、身体のあらゆるパーツに装甲が付いており、何かやたらと強そうだ。
戦隊モノには本物より2割り増しくらいカッコいい偽者が出てくるが…あんな感じだ。
「…ミナ、トドメ。譲るよ。」
その元自殺志願者、現在紫のウゴクンジャーが呟くように言うと、塔の陰からエプロン姿の少女が現れる。
何が起こってるのか理解できるような優秀な脳味噌を持ち合わせていない週一と綾は、その光景をアホみたく口をポカンと開けて見詰めていた。
「じゃあ、生まれ変わったらウチのお店に来てね。」
よく分からんことをのたまったエプロン少女は砂浜に埋まってピクピクしているタゴサークの上に立つ。
そして、空中にゆっくりと何かの絵を描き始めた。
少女の指からの淡い光が、その少女の絵を浮き上がらせる。
…ポップ調の可愛らしいクラゲの絵だ。
横に☆なんかも描いてる。
「それでは、接着。」
カッ!
やっぱり蟹や甲虫とは差別的な閃光が煌いた。
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「あたしは歐邑沙紀。見ての通り、タクティカルフレームは蝶ね。」
紫のタクティカルフレームから変身を解いたセーラー服姿の少女は、まだ唖然としてる週一たちに簡単な自己紹介をしていた。
「そして私がクラゲのタクティカルフレーム。名前は海月水面です。」
エプロンの少女も営業っぽいスマイルで頭を下げる。
ちなみにカカシタゴサークにトドメを刺したのは彼女だ。
砂浜に刺さったタゴサークに飛び降りながら変身し、やたらと重装甲のタクティカルフレームの重量でプチって潰したのだ。
セーラー服の少女、沙紀とのコンビネーションは見事の一言に尽きる。
「あ…僕は蟹令李週一。ウゴクンジャー蟹だよ。」
「私は彩綾。カブト虫だよ。よろしくね、沙紀ちゃんに水面ちゃん。」
「そして私が柱都憬です。はじめまして。」
こっちも自己紹介しとかなきゃと、週一たちも頭を下げる。
ちなみに冥介はまだ寝ている。
「今朝、例のアドバルーンを見てね。あたしら宛だと思ってたんだけど…まさか他に4人も仲間がいたなんてね。」
セーラー服着てるからどう考えても中高生のくせにタメ口で喋る沙紀は、変身もしないでタゴサークにいいようにバカにされていた4人に不敵な笑みで話し掛けてきた。
しかも憬教授もウゴクンジャーだと思ってるらしい。
「僕らもまさか2人もいっぺんに仲間が増えるなんて…。でもありがとう、ピンチを救ってくれて。」
感謝の言葉を口にする週一だが、沙紀と水面は苦笑いしただけだった。
…ピンチ、ではなかったような…。
しかしそんな些細なことはうっちゃって、憬教授が切り出す。
「まあ、ここにはカカシさんの遺体もあることですし…まずは戻りましょう。沙紀さんも水面さんもウゴクンジャーの本部を紹介しますね。」
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憬教授の車は4人乗りということもあり、車を一応運転免許を持っている週一が運転。
助手席に綾、そして後部座席2つを使って寝続ける冥介を寝かせたまま積んで行くことになり、唯一財布を持ってきていた憬教授が電車で沙紀と水面を連れて行くこととなった。
「大学が本部ねぇ。ってことはあのトロそうな蟹は大学生?…う~ん、この国の教育レベルに疑問だね。」
電車の中、3人は他の仲間のことで盛り上がっていた。
「週一君もそうですが、綾さんも大学生なんですよ。でも冥介君の年齢は不明です。」
「冥介さんって…あのずっと寝ていた人?けっこう美形だったよね。」
沙紀と水面は憬教授とタメ口で話している。
憬教授は実年齢より10歳以上若く見えるのが原因なのだが、服装こそバラバラにしろ年齢は同じくらいに見える。
傍から見ても仲良し3人組という感じだ。
無理もない。
「ああ、そうだ。さっきは簡単な自己紹介だったけど、あたしは四神に通ってんの。隣町だけどこっちには買い物とかでけっこうやって来るんだ。」
「四神って…あの四神女子高ですか?有名進学校じゃないですか。凄いですね。」
「そうよ。沙紀は凄く頭いいの。私たち、小学校からの親友なんだけど、学校ではずっとトップ10の中には入ってたんだから。」
水面が自分のことじゃないのに得意げに言った。
「そういう水面さんは沙紀さんと同じ高校に通ってるんですか?」
そう訊ねると水面は首を振った。
「ううん。私は中学までで学校はやめたの。今は実家のペットショップを継いでるのよ。あ、隣町の熱帯魚店『Jelly Fish』ってお店、私のお店なの。今度寄ってね。」
「まったく、ちゃっかり宣伝して。」
沙紀が笑いながら水面の頭を軽く小突く。
そして憬教授に訊ねた。
「で、憬はどこの高校?」
…やっぱり憬教授を同年齢だと勘違いしていたようだ。
でも憬教授はちょっと人とズレてるから気付かない。
少しハテナ?と首を傾げたが、やがて笑顔で自分の出身校を挙げた。
「私は鳳烙苑高校です。」
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その頃、憬教授の車にて時速55km(憬教授の時より10kmも速い)で進んだ週一たちは社会情勢学研究室に到着していた。
「しかし…重大問題だな。」
大学に着いてやっと起きた冥介は、頭に妙な寝癖を残したまま深刻げに呟いた。
「何がです?仲間が2人も増えたんだから大助かりじゃないですか。」
よく分からんことを言う冥介を週一は不思議そうに見る。
「そう、確かに仲間は当初の予想通り2人だった。しかし…2人とも女なんだぞ?これは明らかに当初考えていた男女1人ずつという予想に反している。」
「…。」
週一はちょっぴり目眩を覚えた。
確かに戦隊ヒーローものだと男3女2っていう比が大体だけど、別にそれに当てはまらなくたって…。
「くそっ!因果律の乱れは予測不能の未来を産む!!このままだと世界が!!」
拳を握り締めて意味不明なことをのたまう冥介の前に水の入ったコップが置かれた。
持って来たのは綾だ。
「まあ大丈夫ですよ、時代は変わったってコトで。たまには男女比だって反転しますよ。ね、週一君?」
彼女は週一の前にも水を置き、自分だけはちゃっかり紅茶をすすっている。
「いや、別に男女比は決まってるわけじゃないから…。それより、先生たちはまだかな?」
「電車だと遠回りになるから。あと30分くらいはかかるんじゃない?」
「やっぱり僕が車で迎えに行った方が良かったかな?」
そう呟き、週一は憬教授の車のキーをくるくる回した。
あんまり運転テクが上手じゃない週一だったが、憬教授の車はオートマの軽自動車だったので何とか運転でき、ちょっぴりいい気になっているようだ。
「事故るからやめて。」
綾がぴしゃりと言い放ち、週一は沈黙する。
可哀相に、ヘコんでしまった。
「…まあ、チーフたちが戻るまでは大人しく休んでいよう。」
コップを水に運びつつ、冥介にしては珍しくまともな台詞を言った。
【初登場キャラ】
・歐邑沙紀
・ウゴクンジャー蝶
・海月水面
・ウゴクンジャー海月
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これでようやく「SECTION1」終了です…。
年始休みの間にどうにかここまでは、と考えていなのでミッションコンプリート。
これからもできる限り毎日更新していきますので、できれば読んでいただけると幸いです。




