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下等生物戦隊ウゴクンジャー  作者: 深爪リオ
SECTION9-めでたしめでたし-
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9-1.旅は道連れ世は情け容赦なし

それから3日後。

遂に全ての前学期の講義が終了した。

だから暴走女子大生の綾は講義終了のその日にリミッターを解除したのだ。

まあ、最初からタガが外れているようなモノなんだけど、それを完全に外したわけだ。


「…というわけで八又乃さん。今日の目標は15匹!クワガタ虫は認めないから!」


現在、夜の10時。

場所は例の豪邸廃墟だ。

ここの裏庭には小さな林になっていた。

虫取り網と虫カゴを装備した綾はコンビニ前を通る時、可哀相な被害者(冥介)を発見、連行したというわけだ。


「甲虫よ、俺はお前に2つばかり質問がある。」


コンビニで虫取り網と虫カゴを買わされた(自腹)冥介はもの凄く不機嫌な顔で言う。


「何ですか?」


「まず1つ目。お前は現役女子大生だ。それが何故にカブト虫を取りに夜中徘徊する?虚しいとか大人気ないとか思わないか?」


「全然!」


綾は、ない胸を張って答えた。

冥介はちょっとげっそりしながらも続ける。


「2つ目だ。…何故に俺がその虫取りに付き合わねばならん?」


「会ったから。他に理由はなし!ちなみに八又乃さんに会わなかったら週一君呼び出してました。1人じゃつまんないですよね。」


「俺は2人でも3人でも、例え数十人のツアーであっても楽しくないがな。」


「ま、旅は道連れ世は情け容赦なしってやつです。」


言い放つ綾。

その答えに冥介は本格的に肩を落とした。色んな意味で。


「…。」


「そういうわけで八又乃さん、私は変身して能力で樹液のありかを探しますから、冥介さんは街灯の下とかを重点的にお願いしますね!」


「何が『そういうわけ』か知らんが…了解だ。というか、嫌だと言っても無駄だな。」


大きな溜息を吐きながら、冥介は懐中電灯をONにする。


◇◇◇


「…ふぅっ。」


変身完了した甲虫は小さく息を吐き、そして両手を軽く広げたまま静止する。


「…『センサー』の策敵(策樹液)範囲は半径10kmだけど…この林はそんなに大きくないから…半径20mくらいでいいかな?」


タクティカルフレームのヘルメット内部に3DのCG映像が現れる。

樹液のありかを見付けるだけの『センサー』のくせしてハイテクだ。

彼女には読めないが、何だかよく分からない文字で色々データみたいなのも表示されている。

…まあ、ウゴクンジャーだからきっとハッタリなんだろうけど。


「よし!出た!」


甲虫は嬉しそうに声を上げると、樹液を求めて駆け出した。


◇◇◇


その頃、冥介は疲れ切った表情で街灯の下の虫を探していた。

蛾やら妙なカゲロウやら、何だかよく分からない虫がたくさん飛んでいる。

ここで虫取り網を一閃させれば、きっと10匹は入るだろう。変な虫が。


「…俺はただイクラ煎餅が食べたかっただけなのにな…。それに、虫取りなどヒーローのすることか?」


そう言いつつも、地面をのそのそ歩いているカブト虫を虫カゴに放り込んでいく。

仕事は律儀にこなしているのだ。


「それに、捕まえた虫をどうする気だ?飼うのか?それともデパートに売るとか…?まさか食べはしないだろうが。」


しかしあの綾が動物を飼う姿はとても想像できない。

ウサギとかを見て、可愛いから買って来たものの自分では世話をせずに親に任せるタイプの人間だろう。

で、気が向いたときに触るのだ。

まあ、簡単に言えばダメ飼い主。


じゃあ売るのか?しかしそれも考えにくい。

この辺りではカブト虫はそんなに珍しくはないのだ。

2215年に施行された市街環境法によって、1つの街に最低4つの林を残すことが義務付けられた。

だからそこから生まれる虫が、街の至るところで見付けられる。

林に来ればより多く見付けられるといった程度だ。

買うほどのものでもない。


「…。」


もしかして…食べるのか?

想像してみると、恐ろしいことに一番しっくり来る。

笑顔でカブト虫の唐揚げを頬張る綾。それが容易に想像できた。


「いや…まさかな。いくら甲虫でもそこまで暴走するはずがない。」


何だか怖くなったのでその思想を頭から追い払う。

そして再び街灯の下を探し始めた。


「しかし…本当にどうするつもりなんだ…?」


◇◇◇


闇夜を駆けるタクティカルフレーム。

でも別に戦ってるわけじゃない。

カブト虫を捕まえているのだ!


「20匹完了♪じゃあ次の樹液に…、」


その頭の悪いタクティカルフレームが小さくガッツポーズをしたその時だった。


カッ!!


空に稲妻が走る。

そして一瞬遅れて轟音&豪雨が。


「!?」


凄まじい勢いで降り注ぐ雨と、立て続けに鳴り響く稲妻。

甲虫は思わず手にしていた虫カゴと虫取り網を落とした。


「…甲虫!」


そんな彼女の肩をいつの間にかやって来て、しかも変身していたヒュドラが掴む。

雨の音が余りにもの凄いため、ほとんど叫び声に近い大声でないと聞こえないのだ。


「え?あ、何…、」


カッ!!


「ひっ!?」


再び大きな稲妻。

甲虫は情けない声を上げて尻餅を付く。


「甲虫!雨宿りするぞ!!このままだと…危険だ!」


何が危険なのか全然分からないが、濡れたりすることは確かだろう。

彼は、なぜか硬直している甲虫の腕を掴んだ。

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