1-11.潮騒海岸での激闘
「『ウゴクンジャーに告ぐ。潮騒海岸へ来い。By 敵』。」
綾は窓から見えるアドバルーンに垂れた文字を読み上げた。
「怪しい。これでもかってくらい怪しいというか、罠だ。罠率150%だ。」
彼女の隣に座る冥介が呟く。
「それでもノコノコ向かってる僕達って一体…。」
週一は何か諦めちゃったっぽい情けない笑顔で言った。
「まぁまぁ、それが素敵なんですよ♪」
ハンドルを握る憬教授は普段通りの天然ボケ笑顔だった。
現在、ウゴクンジャー一行は憬教授の車で大学から20kmほどの場所にある潮騒海岸へ向かっていた。
早朝に市内のデパートから浮かぶ謎のアドバルーンを発見し、授業後早速向かっているというわけだ。
ちなみに市民の皆さんはというと…アドバルーンはどっかのアホの悪戯としか捉えてないようで、さしたる混乱も起こさずに平常通りに過ごしていた。
「はい、到着です♪」
時速45kmの超安全運転の旅が小気味良いブレーキの音で終了した。
車から降りた4人は、まず辺りを見回してみた。場所はここでいいはずなのだが…。
どういうわけだか怪人の姿は見えない。
「もしかしてスッポカされたとか?失礼な怪人だなぁ。」
溜息を吐く週一。と、その肩を綾がポンポン叩いた。
「ん?どうした?」
「上。何か変なのが飛んでる…。」
言われて上を向く。
…いた。
「おうおう!おめぇらがウゴクンジャーだか?オラは怪人カカシタゴサークってんだよ。今からおめぇらを血祭りにあげてやるだよ!」
何だか田舎くさい言葉遣いのカカシが飛んでいる。
頭にはタケコ○ターっぽい謎のプロペラ。脱力度は今までの怪人より上をいっていた。
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そしてそれから30分後。
「うはははは!どうだ!?参っただか!?おめぇらの攻撃なんぞ、オラには一歩も届かないだよ!ん?んんっ?」
上空を旋回してうるさくほざいてるカカシタゴサークがいた。
そして地上には…。
「…先生。あのカカシ、凄くウザいです。」
「そうですねぇ週一君。ところで週一君の動き、猫さんみたいですよ?」
「あ~っ!もうっ!さっきから石投げてるけど当たらないし!!」
ストレス爆発のウゴクンジャー一行がいた。
週一はカカシタゴサークの動きを目でキョロキョロと挙動不審みたく追いつつ、何度も溜息を繰り返し、憬教授はそんな週一を見て面白そうに微笑んでいる。
綾は綾でさっきから海岸に落ちてる石を拾ってきてはタゴサークに投げつけ、悉く避けられてはキーキー怒ってらっしゃった。
冥介に至ってはふて寝を始めている。
「…じゃあ、そろそろ帰りましょうか。帰りにココアでも飲んでいきましょう。」
唐突に憬教授が言った。どうやらもう飽きたようだ。
「帰るって…怪人はどうするんですか?」
呆れ気味に週一が訊ねる。
もうこのヒトの暴走には諦めましたって顔つきだ。
「別に無害ですし、このまま空を自由に飛ばせてあげましょう。ほら、あんなに楽しそうに飛んでるじゃないですか。大自然を自由に飛んでるのに捕まえて飼うなんて可哀相です。ね?」
トンボか何かと勘違いしてるような…というか完全にバカにしたような台詞を笑顔でのたまった。
まあ、憬教授は脳味噌が常人と比べてズレてるから悪気はないのだが…、愉快そうに空を旋回していたタゴサークの癪に障ってしまったようだった。
「むおっ!おめぇ!!オラのこと、まるで虫みたいにバカにしただな!?」
カカシだから怒ってるのか笑ってるのか分かんないポーカーフェイスのタゴサークだが、その声は明らかに怒っていた。
でもやっぱりポーカーフェイスだから怖くない。
「むおぉぉぉぉぉっ!あったまきたぁぁぁぁぁぁぁ!!」
そう叫ぶとタゴサークが急降下してきた。
「!?」
…変身が間に合わない!?
ってピンチを感じた週一と綾(冥介はもう熟睡、憬教授は相変わらずにこにこ)だったが、タゴサークは4名の頭上50cm程の高さを通過し、そのまま再び上昇していった。
そして。
「フェイントだ!!」
得意げに叫んだ。
「…先生、私もうダメです。あのカカシ、この手で粉々に…!!」
タゴサークのフェイント攻撃に迂闊にもビビッてしまい、綾の堪忍袋の緒が千切れた。
まあ、さっきからすでに怒ってらっしゃったが、今度で完全にキレたようだ。
目が血走ってる。
「飛んでるから無理だよ。」
そうコメントした週一は綾にオニの形相で睨まれて沈黙した。
「綾さん。週一君が泣いちゃうから怖い目で見るのは止めましょうね。…まあ、それはともかく確かにカカシさんはアブみたいで危険かもしれません。」
フェイント攻撃にアブの面影を見たか、さっきまで帰る気でいた憬教授も考え直したようだった。
「でも飛んでるから…、」
また週一が言おうとしたが、綾に殺されるかもしれないので途中で口をつぐんだ。
「うはははははは!!どうだべ!?オラの飛行能力に、おめぇらは何の抵抗もできないだよ!うっはははははは!!」
ウザいカカシはなおも頭上を飛び回り、勝手なことをほざいている。
でも確かに手出しできない。
しかも前回のキヨスクみたいに疲れる様子もないから隙を叩くこともできそうにないし…。
「どっかに降りれば捕まえられるんだけど…。」
悔しそうに綾がぼやく。
しかし週一がかぶりを振った。
「どこかに停まるにしても、あの塔に停まるだろうから…無理だよ。」
彼はタゴサークの飛ぶ軌道上にある塔を指差した。
それはけっこう高い塔で、風力観測とかやる塔らしかった。
タゴサークの飛んでる高度よりも10mほど高いから、あの上に停まれば捕まる心配もゼロそうだ。
「カカシさんは頭がいいですね。ちゃんと安全地帯を確保してるんですから。」
にこにこ笑顔で憬教授は感心していた。
「うぅ…確かに。停まってから追いかけたんじゃ、塔を登りきる前に逃げちゃうだろうし…。」
「今回の怪人は別に強くはないけど…倒すのには苦労しそうだなぁ…。」
週一がぼやく。
今まで1体も怪人を倒してないヤツが言うのもなんだが、タゴサークを倒す手段が見付からない。
それを知ってか知らずか、タゴサークはうはうは笑っている。
手が出せず、唇を噛み締めるウゴクンジャー達(でも憬教授はまた帰ろうとしてるし、冥介はまだ寝てるから実質2名だけ)。
そんな時だった。
「…来たね、待ってたよ。アンタがこの真下に来るのを。」
タゴサークの飛行軌道上にあった風力観測塔の上から、気の強そうな女の声が響いた。
「…え?」
自分の上からの声にタゴサークは頓狂な声を出して振り向いた。
風力観測室の小部屋のドアが開いており、何者かが立っている。
でも、逆光で誰だか分かんない。
「うは!?誰だ?おめぇ?」
「黙んな、カカシ野郎。」
その瞬間、その人影は塔のてっぺんから飛び降りた。
コードレスで。
「自殺志願者!?」
「いやぁぁぁぁぁぁ!死亡現場目撃なんていやぁぁぁぁぁぁ!!!」
叫ぶ週一と綾。
でも憬教授はあらあらと言ってるだけで別に驚いてないっぽい。
…まあ、こんな状況の中でもまだ寝てる冥介はもっと凄いけど。
バキッ!!
やっぱり驚いてるタゴサークの背に、自殺志願者(仮)の蹴りが叩き込まれた。
「おうっ!?」
叫ぶタゴサーク。
自殺志願者は蹴りに続き、空中でタゴサークのタケコ○ターを掴むと、そのまま引き千切った。
「おおうっ!!?」
大きく叫び、推進力を失ったタゴサークは自殺志願者と一緒にけっこうな高さから落下し始めた。
これは落ちたらヤバいだろう。
下は砂浜だが死ぬ確率120%だ。
なぜにこんなアホ怪人と心中する気になったんだろうと誰もが思う中、一緒に落ち行く自殺志願者は逆光の中、両手を十字に構える。
そして、その十字から右手を素早く引いた。
「接着!!」
カッ!!
どう考えても蟹やその他のヤツラとは差別的な、眩い光が自殺志願者を包んだ。




