8-5.カライドの起動
「…おはよう、キヨスク。もう朝なのかなぁ。」
太平洋の微妙な位置にあるダークキャン・D要塞。
そこにあるとある暗い部屋にガキンチョっぽい声が響いた。間延びしたお子様っぽい声だ。
「朝じゃねえけど、『おはよう』だ。気分はどうだ?」
「そうだねぇ。少しお腹が空いてるかなぁ。」
「そりゃそうだろ。何せ5年も眠ってたんだからな。…カライド。」
ガシャン。
金属音が響き、灯りの下に声の主が現れた。
ロシアっぽい帽子を被った小学生くらいのガキンチョだ。
でも左腕と右足はガチンゴチンの機械。メタルだ。
でも機動野菜キヨスクみたいな意味のないメタルじゃなく、必要とされているパーツだった。
「それで…どうしてボクが起こされたの?誰か欠員?ウェキス?カイネ?コノハ?」
カライドと呼ばれたガキンチョが訊ねると、キヨスクはかぶりを振った。
「欠員じゃねえよ、今日は俺の手下として起こしたんだ。」
「そっか。じゃあボクは何をすればいいのかなぁ?」
キヨスクの口元が歪む。
「…ウゴクンジャーって野郎どもがいてな…、」
◇◇◇
数時間後、所変わって幹部特別室。通称居間。
キヨスクから何やら話を聞いていた3名の四天王は眉を顰めた。
「…カライドを機動させた?ヤツは我々四天王に欠員が出た時の手段だぞ?」
手にボールとピューラーを持ったカイネ。
ボールの中には大量のジャガイモが入っていた。
「ああ、あなたの代わりですか。四天王キヨスクは実質死亡したわけですし。」
なるほど、と手を叩くコノハ。
今日は料理ではなく、ファッション誌を読んでいる。
「じゃあこれから四天王は俺とカイネ、コノハ、そしてカライドか。」
盆栽をいじりながら笑うウェキス。
そんな3人の言葉にキヨスクは大きな溜息で答える。
「勘違いするなって。確かにオレは1度死んだ。しかし甦ったこの身体でも四天王の実力は十分にあるんだぜ?カライドを起動させたのはヤツを一介の怪人として繰り出すためだ。まあ、ヤツはオレには遠く及ばないながらも四天王補欠。ただの怪人よりはマシなわけだ。だからヤツを送り込むってわけだ!」
「ああ、そうか。」
「そうですか。」
「何だ、ヤツが四天王になるんじゃないのか。」
途端に3人は興味をまるで無くしたように適当に答えた。
そして自分たちの作戦(趣味)に戻る。
「まあ、確かにヤツには欠点がある。しかしだな、計算高いオレは…、」
でもキヨスクは得意そうに喋り続ける。
幹部特別室には今日もキヨスクの虚しい独り言が響いていた…。
◇◆◇
大学の講義室にはクスクスという笑い声に包まれている。
毎度おなじみ、憬教授の暴走社会情勢学。
しかし今日は珍しく意味不明な講義は行われていなかった。
代わりに…。
「口紅でも塗ってみましょうか。」
ハンドバッグから口紅を取り出す憬教授。
彼女は教壇ではなく、生徒が座る椅子に腰掛けており、しかも後を向いている。
その目の前にいるのは…いい子で寝んねしてる週一君だった。
そう!授業中に居眠りを始めた週一で遊んでいるのだ!
すでに彼の髪はムースで逆立たされており、額には『肉球』とマジックで書かれている。
社会情勢学の講義を受けてる生徒たちが一丸となって悪戯した結果だ。
しかも悪いことに憬教授も公認。
自分も今、彼に口紅を塗ろうと画策している。
「…よしと。うん、可愛くなりました♪」
微笑む憬教授。
週一はいつの間にかタラコ唇と化してしまっている。
可哀相に。
「ん…うん…。」
週一に目覚めの気配。
その瞬間、憬教授を含めた全員がさっと元の位置に戻った。
「ええと、そこでエジソンは言ったわけですね。全ての人民がネコを飼うとしたら、」
憬教授が何事もなかったかのように講義を始める。
生徒たちも同じくだ。
「少し寝ちゃったかな?まあ、バレてないみたいで良かった。」
起きた週一が呟く。
逆立った髪、額の文字、口紅の完全体のまま。
生徒一同の口元がニヤリと歪んだ。
大成功。
これも教授&生徒が一丸となった結果だ。
…それにしても社会情勢学、こんなことをやってていいのだろうか?
【初登場キャラ】
・四天王補欠:超戦略型自律兵器・カライド




