1-10.豪傑
「『人間などという下等生物に変身したくない』…とか言ってたけど、大根の方がよっぽど下等生物なんじゃないかなぁ…。何せ植物だし。」
ハンバーガーショップで週一は苦笑した。
あの後、大根に変身したキヨスクを屋根から降ろし、憬教授のおごりでハンバーガーショップに寄っているのだ。
「でも本当にその大根があの小物なのか?もしかして変わり身の術とか…?」
海老バーガーを片手に冥介は言う。
彼の視線は憬教授のハンドバッグからハミ出てる例の大根に向けられていた。
「キヨスクに間違いないですよ。だって私の拳の痕がついてるし、それに大きさも丁度60cm。ピッタリです。…でも、それはともかく先生、それをどうするんですか?」
週一が店内ポスターを見ている隙に彼のポテトを2本ほど抜き取りつつ、綾が訊ねる。
「いえ、いつ元に戻るのかなぁと思って♪ちょっと飼ってみます。」
笑顔の憬教授は大根をポンポン叩いて答える。
「それにしても…その小動物、もうバレてるってことに気付いてないんでしょうか?それとも今さら元に戻るのは恥ずかしいとか?」
週一は綾に奪われたポテト2本をしっかりと取り返しながら呟いた。
「俺がこいつだったら恥ずかしくて元に戻るに戻れないが…この小物のことだ。まだバレてないとでも思ってるんじゃないか。」
…談笑を続けるウゴクンジャー。そんな中、憬教授のバッグに入れられた大根…キヨスクは思っていた。
(…オレの変身がバレるわけねぇ!隙を見てこいつらをやっつけてやるぜ!)
その野望が果たされる望みは…タマネギの皮より薄かった…。
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翌日。
週一は無言だった…というより、絶句していた。
彼の目の前には虫カゴに入れられた大根がある。
しかも『80円』と値札の貼られた瑞々しい大根…。むろん、これはキヨスクではない。
怪我が回復して綺麗になったっていうだけなら分かるが、いくらなんでも値札は貼られないだろう。
しかも机の上にはレシートがあった。
「…せ、先生、これは…?」
ようやく出た言葉はそれだった。
「あ、それはキヨスクっていう昨日のお米さんです。でも昨日の大根は傷んでいたので、新しいのに替えました。」
笑顔で答える憬教授。
週一はちょっぴり震える声で訊ねる。
「じゃ、じゃあ痛んでた方の大根は…?」
「今朝、お味噌汁にして食べました。とっても美味しかったですよぉ?大根と油揚げのお味噌汁♪あ、そうです、今度食べさせてあげましょうか?」
週一に答える気力はなかった。
彼は大きく溜息を吐き、憬教授の朝ご飯と消えたキヨスクに冥福を祈った。
と、ドアが開き綾が顔を出した。
「失礼しま~す。…と、今日はまだ八又乃さん来てないんだ。」
綾はキョロキョロ周りを見回した後、虫カゴの中の大根(憬教授はキヨスクだと信じている)を発見した。
「あっ!昨日の白い小動物ですね、先生。まだ元の姿に戻ってないんですか?…それに値札なんか装着しちゃって!芸が一段と細かくなってますね!」
鈍い綾。しかし。
「いえ、値札は買ってきた時からついていたんです。私の単なる剥がし忘れですよ。」
「…。」
そこで綾も気付いたようだ。
この大根は『大根』だ…。
「じゃあ週一君に綾さん、冥介君がまだ来ないので、それまでゆっくりしていて下さい。私、昨日作った塩ケーキを持ってきますから♪」
また怪しいモノを用意していた憬教授は、にこにこ笑顔で準備室へ消えていった。
残った2人はどちらともなく、顔を見合わせる。
「キヨスク…だったっけ。一体どうなったの?」
「先生が味噌汁にして今朝食べたって。」
「…そう。何か、ちょっと同情しちゃうね。」
「うん。でもそれより、僕は先生が豪傑だなぁって思った。」
「豪傑って言うか…何か、凄いよね。」
「僕、ある意味…尊敬したよ…。」
そしてヘビー級に重い沈黙。
その沈黙はまだまだ続きそうだった…。
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太平洋の微妙な位置にある、例のダークキャン・D要塞。
そこでは四天王の1人がいきなりやられたってことでパニックになってると思いきや、意外とみんな冷静だった。
「ですが…まさかキヨスクがやられるとは。私たち四天王の中で最高の素早さを誇っていたのに…。」
落ち着いた女性の声。
でもあんまり落ち着いているから、その口調からは驚きも残念さも感じられない。
「素早さだけだったしな。それに奴は甘かった。それが命取りとなったのだ。」
冷たい男口調の女性。
口調同様に言うこともキツかった。
「確か…ウゴクンジャーだったっけ?はははっ、やるじゃないか。…いいねぇ、そういう奴らがいた方が面白れぇってもんだ。」
若い男の声は本当に愉快そうに笑う。
…なんともバラバラな四天王だったが、そんな中、また威厳溢れる悪役声が響いた。
「皆の者。」
その声と共に一同は静まる。
「四天王、キヨスクが敗れたそうだな。そればかりか怪人もだいぶやられたと聞く。」
「…。」
押し黙る四天王たち。すると声は大きく溜息を吐いた後、再び話し始めた。
「…こういうことは先ず報告。侵略の前に皆で決めたろう?ちゃんと守らないと規律が乱れる。まあ、今日は許すが、今後は報告を厳守するように。…以上だ。」
それだけ言うと声は消えていった。
残された四天王(もう3名しかいないけど)は、怒られずに済み、ほっと溜息を吐いた。
「どうやらマスターもお怒りではないようですね。助かりました。」
で、またしても雑談を始める。
「でもよ、あんまり失敗が続くといくらマスターでも怒るぜ?ここらで気を引き締めないとな。」
「よし、では今度は私の配下を派遣しよう。これまでのD級怪人とは比べ物にならない強力な奴だ。」
男口調の女性は、指をパチンと鳴らした。
すると、どっからともなく照明が部屋の隅っこにいた怪人に当たった。
「お任せ下さいってばよ。このオラが、一発ぶっちゃけてやりますだよ。」
…そこにいたのは頭にタケコ○ターを装備したカカシ。
「ゆけ!カカシタゴサーク!貴様の飛行能力でウゴクンジャーを血祭りにあげるのだ!」
悪役感がにじみ出てる声で叫ぶ四天王。
そんな中、丁寧口調の四天王が呟いた。
「…飛行能力で、どうやって血祭りにあげるのでしょうか…?」
【初登場キャラ】
・カカシタゴサーク




