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下等生物戦隊ウゴクンジャー  作者: 深爪リオ
SECTION7-待ち人、現レズ-
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7-16.蕎麦屋の変わった店員さん

綾は大きく伸びをするとバッグを肩に引っ掛ける。

今日は午前中の1時限しか講義がなかったのでもう帰れるのだ。

ちなみに仲良しっていうか腐れ縁の週一はまだ講義を受けてる。


「さてと…どうしよっかな?ウゴクンジャー本部に寄ってくか、それともこのままアパートへGO!か…。」


彼女はポケットからサイコロ(普通の女子大生の携帯品ではない)を取り出すと、それを上へ投げた。

そしてキャッチする。


「3以下だったら本部、それより上だったら帰宅。」


そう呟いて手を広げると、サイコロは4の目を出していた。

綾は頷く。


「ギリギリで帰宅かぁ。でもアパート直行ってのも芸がないよね。」


そしてまたポケットから何かを取り出す。

それは将棋の歩(これも普通の女子大生が携帯している物じゃない)だった。

彼女はその駒を転がす。


「…成金になったらファミレス、ならなかったら蕎麦屋。」


ファミレスはともかく蕎麦屋って発想が凄い。

1人で蕎麦屋に寄る女子大生なんて多分コイツくらいなもんだろう。

で、駒は歩のままだった。

綾は再び頷く。


「うん、蕎麦屋に決定。八又乃さんが言ってた寛和蕎麦ってお店に行ってみようっと。」


そして彼女は歩を拾い、なぜかスキップしながら去って行った。

ここはまだ大学構内だから多くの学生が彼女の奇行を見ていたが、綾はそんなのを気にするような小者じゃなかったようだ。

まあ、誰も彼女のような間違った『大物』になりたいとは思わないだろうけど。


◇◇◇


「いらっしゃいませ。寛和蕎麦へようこそ。お1人様でよろしかったでしょうか?」


綾を笑顔で迎えたのは腰くらいまである漆黒の髪の女性だった。

なぜかやたら重厚な着物…十二単を着ており、背中には大きく『寛和蕎麦』と刺繍されている。

どうやらここの店員らしいのだが…ボロい店の外見に似合わない美人だった。


「あ、はい。」


「ではこちらへどうぞ。ご注文がお決まりになられたらお呼び下さい。」


女性はペコリとお辞儀をする。

綾はどうもと言ってから、店内に貼られたメニューを見た。


「いらしゃいませアル。お茶とサービスの蕎麦スナックどうぞアル。」


そんな彼女の前にお茶と蕎麦を揚げたモノが差し出された。

持ってきたのはヒヨコ柄のラーメンどんぶりを被った少女だった。

胸に寛和蕎麦って刺繍された拳法着を着ている。

しかも口調が…エセ中国人風味だ。


「どうも。あの、注文いいですか?」

「どうぞアル。」


少女はあんまり賢くなさそうな笑顔で頷き、拳法着のポケットから注文票を取り出した。


「ざる蕎麦と日本酒。以上で。」


…さすが綾だ。

ダメとは言わないが渋すぎる。

でも店員の少女は別に変な顔をすることもなく注文を書き込んだ。


「どうもネ。ご注文、繰り返させていただくヨロシ。ざる蕎麦と日本酒、日本酒はこの時期冷酒しかないけど、いいアルか?」


「はい。」


「分かたアル。ではしばらくお待ち下さいネ。」


そして少女はもう1度頭を下げると店の奥に去って行く。

彼女が去って数分、しばらく無言でいた綾はポツリと呟いた。


「2人とも変わった店員さんだなぁ…。」


ちなみにその2人の正体が何者であるかは…バレバレなのであえて言わないでおく。


◇◇◇


週一は今日も睡魔との激戦を繰り広げていた。

講義は哲学。

例によって澤田教授は雑談をして興奮している。


「蟹令李君、大丈夫?」


で、また例の如く眼鏡が素敵な山田君が心配そうに声を掛けた。


「あんまし大丈夫くない。」


「うん、見ていてよく分かるよ。でもそろそろ話も佳境だよ?」


「…またど~せ赤味噌の話だろ?もういいよ…聞き飽きた…。」


「いや、今日の話は沖縄で水牛に乗った話だよ。」


…どっちにしろ聞いても人生に何の役にも立たない話だ。

週一は溜息を吐いた。


「で、それって何回目?」


「まだ4回しか話してないよ。なかなかレアな話だね。」


「…おやすみ。」


ボクもう何だか眠くなっちゃったよパト〇ッシュ…って感じで週一は目を閉じる。

彼から安らかな眠りが聞こえてくるまで5秒もかからなかった。


「そこでワシは言ったんじゃ!牛はホルスタインよりも水牛の方がアレに似ているんじゃなかろうか?しかしそうは言っても…、」


で、澤田教授の雑談は延々と続いていく…。


◇◇◇


蕎麦を食べて日本酒を1合飲み干した綾は、ご機嫌で昼間の住宅街を歩いていた。

買い物袋を下げておりやたらたくさんのゴマと大豆、そしてなぜかすりこぎを持っている。


「まさかゴマと大豆をすり潰した薬味があんなに美味しいなんて…。」


…どうやら寛和蕎麦で出された薬味が気に入ったようだ。

しかもそれを自分でも作る気でいる。

普通の女子大生なら酔っ払っているせいだと考えられるけど、綾の場合は正気でもやりそうだ。

だから彼女がすりこぎを持って歩いているのが何のせいなのかを推し量ることはできない。


「そこの貴方、待って下サイ。」


そんな彼女の背に声が掛かった。


「…?」


振り返る綾。

そこにはパンダの着ぐるみ以外の何者にも見えないヤツがいた。

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