7-15.占いフューチャー
「貴方は…、」
パンダの着ぐるみ以外の何者にも見えないそいつは、夜のコンビニからイクラ煎餅を齧りながら出てきた冥介にいきなり話し掛けてきた。
「貴方は、近い将来、転ぶことになるでショウ。」
微妙に語尾が外人っぽいアクセントだ。
冥介は眉を顰める。
「何だ?いきなり。」
「ワタシはダークキャン・Dの怪人、占いフューチャー。100%くらいの確率で当たる予言が特技デス。」
着ぐるみパンダ野郎は言った。
でも全然説得力がない。
まあ、ダークキャン・Dの怪人のデザインはどれも人をナメてるようなのが多いけど、コイツはどっから見たって着ぐるみパンダだ。
「…そうか。で、戦うのか?」
半信半疑のまま冥介は訊ねる。
するとパンダ野郎はかぶりを振った。
「それは無理デス。ワタシ、戦うなんて野蛮なことできマセン。予言するだけデス。」
…もの凄く胡散臭い。
怪人ならどいつもこいつも有無を言わせず戦うはずだ。
だから冥介はコイツは怪人じゃないと判断した。
「そうか。まあいい、俺は家路を急ぐ。悪いがこれ以上はお前に構っていられない。」
「そうですカ。ではお気を付けテ。」
パンダ野郎はそう言って手を振る。
冥介は小首を傾げながらも再び歩き始めた。
そして…。
「!?」
何かにつまずき、派手に転んでしまった。
彼は溜息を吐きながら立ち上がり、ふと後ろを向いて見る。
そこにはもう、パンダ野郎の姿はなかった。
「予言?」
そう呟いたがすぐにかぶりを振る。
「…まさか、な。」
◇◆◇
「おはようございマス。」
翌朝、登校しようと家を出た沙紀の前に、パンダの着ぐるみみたいなヤツが現れた。
昨晩冥介の前に現れたヤツだ。
「…着ぐるみパンダ?」
沙紀は怪訝そうに呟く。
彼女もコイツがダークキャン・Dの怪人なんて思ってもいないようだ。
「予言デス。…『待ち人、現レズ』、貴方は今日、会いたい人に会うことができないでショウ。そして貴方が思う以上ニ、貴方にはライバルがいマス。近いうちにまた1人、貴方にはライバルができるでショウ。」
「はぁ?」
意味不明なことを言われて眉を顰める沙紀。
昨夜の冥介と同じような反応だ。
「それではご機嫌ヨウ。」
パンダ野郎はそう言って手を振ると、どこかへテクテクと歩いて去って行った。
◇◆◇
所変わってダークキャン・D要塞の幹部特別室。
通称居間。
自作のヨーグルトタルトを食べているカイネとコノハ。
そして盆栽をいじくっているウェキスの前でキヨスクが得意そうに語っていた。
「聞いて驚け!俺の怪人、『占いフューチャー』の予言は100%くらいの確率で当たるんだ!今朝、晴れることだってピタリと言い当てた!!」
「ヨーグルトタルトは美味しいですね。カイネ、今度はチーズタルトの作り方を教えて下さい。」
「いいだろう。あれは焼き加減が他のより難しいんだ。」
もちろん女性幹部2名は聞いちゃいなかった。
でもキヨスクは得意げに語り続ける。
「オレはヤツを街に送り込み、ウゴクンジャーの連中に恐ろしい予言を聞かせてやるってわけだ!想像できるか?もし今日カネを落とすとか言われてみろ!もう心配で心配でメシも喉を通らねぇぜ!!」
「…少し切り過ぎたか?いや、俺の盆栽は完璧なはず…。」
もちろんウェキスも聞いちゃいない。
でもめげないっていうか気付かないキヨスクは堂々と胸を張った。
「まあ、言ってみれば無敵の精神攻撃ってわけだ!知的なオレ様以外じゃ思いつかねえ作戦だな!!」
…もちろん、残りの幹部3名全員が聞いちゃいなかった。
幹部特別室にキヨスクの笑い声だけ、何だか虚しく響いている…。
◇◆◇
「…パンダの着ぐるみ?」
もうすぐ大学に到着って時に現れたパンダ野郎を見て週一は呟いた。
「違いマス。ワタシはダークキャン・Dの怪人、占いフューチャーと言いマス。」
「悪いけどもうすぐ講義始まっちゃうんだ。行っていい?」
週一もコイツの言うことをまともに受け取る気はないようだった。
まあ、いくら週一君がヘタレとはいえ、目の前にいるのは貧弱そうな着ぐるみパンダ。
しかも通行人の方々もそう思っているらしく、怖がりもしない。
お子様なんか一緒に写真を撮りたがっている。
だからいくら自分は怪人ですって言っても信じる気ゼロなのだ。
「その前に予言デス。聞いておいて損はないですヨ?無料ですシ。」
「僕、占いとかそういうの信じないんだ。ずっと前に手相見てもらって、金運最高って言われたにも関わらず、慢性的な金欠病が治る気配ないし。」
「ワタシの予言は当たりマス。お願いデス、占わせて下サイ。」
懇願するパンダ野郎。
基本的にお人よしな週一は苦笑した。
「う~ん、まあいっか。減るもんでもないし。いいよ、予言しても。」
「それは嬉しいデス。では言いますヨ?…貴方は、」
「うんうん。」
彼は聞く気ゼロって感じで頷く。
「貴方は今、とても強大な運が現れていマス。しかもとても珍しい運勢デス。」
「ほうほう。」
返事はするものの、話は聞いてない週一。
「ふむ…、本当に珍しい運勢をお持ちですネ。ワタシも今までこんな運勢を持った人間を見たことがありまセン。」
パンダ野郎はそう言うと少し沈黙した。
そして唾を飲み込み、顔を上げる。
「貴方は、『変人に好かれる』資質を秘めているのデス!!しかもその運勢は貴方がウゴクンジャーになったことによってより強大にナッタ!身に覚えがありませんカ?今まで異性との接触がほとんどなかったのに、ウゴクンジャーになってからは急に出会いが多くなったトカ?そうデス、ウゴクンジャーと関わった人間はだいたいが変人!ということはとても貴方と波長が合うということなのデス!!つまり貴方は、」
そこまで言った時、占いフューチャーは気付いた。
…いつの間にか、週一が消えている。
「…。」
彼は肩を落とすと、トボトボとその場を去って行った。
【初登場キャラ】
・占いフューチャー




