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下等生物戦隊ウゴクンジャー  作者: 深爪リオ
SECTION7-待ち人、現レズ-
114/150

7-12.偽善と善

その夜。

憬教授はベッドの上で何かレポートのようなモノを読んでいた。


「うん、さすがは山田君。凄いのは眼鏡だけじゃないですね。」


笑顔で呟く。

そう、コレは例のレポート用紙35枚以上、文字にすると3万字は必要っていうやつだ。

課題は『偽善と善』。

山田君は何とこれをこなしたらしい。


「正義感溢れる意見ですね。少し説得力が足らないけど、頑張ったので6点です。」


そう言って出席簿のような手帳に数字を記入する。

ちゃんと家でも仕事をしているようだ。

ベッドに寝転がってだけど。

彼女は山田君の力作を椅子に置くと、他のレポートも手に取った。

提出率はやっぱり低い。

35枚のレポートを書くなんて酔狂なヤツはそうそういないのだ。


「これは…綾さんですね。」


レポート用紙1枚を全部使って、彩綾と巨大な名前が書いてある。

多分これで1枚をカウントしているのだろう。

セコい。

しかも学年と学部、クラスに出席番号まで1枚ずつ使って書いてあった。

それだけで5枚を使っている。


「うん、文字数は特に指定しませんでしたからね。こういうことに頭が回るのはいいことです。」


にこにこ微笑む憬教授。

心が広いのかただのバカなのかは不明だが、これで怒るような教授よりは器が大きいのだろう。

多分。


「それで残りの30枚は…なるほど、イラストを交えての例え話ですか。」


…絵日記みたいな作品だ。

1枚につき、文字は3行くらいで後は絵。

しかもその絵のレベルは小学生以下。

ひでえ。


「うん、素晴らしい策です。結局何が言いたいのかはさっぱりですが、35枚をいかに埋めるかにかけては彼女が文句なしの1等でしょうね。7点あげます。」


…こんなんで、山田君の血と汗の結晶より点数が高いなんて。

山田君が可哀相過ぎる。


「さてと、次は…細川君ですか。」


例のタンクトップ野郎だ。

なぜか3枚半だけ描いてあり、最後に×10と記してある。


「うん、3,5枚×10で35枚というわけですね。…1点、と。」


ほとんど読みもせずに憬教授は記した。

まあ、読まなくても題が『女体に関する偽善と善』だから内容は知れてるけど。


「やっぱり35枚は少し多かったですね。提出率が悪いです。でも努力くらいしなくちゃダメですから、出さなかった人は-1点。」


そう言うと名簿のほとんどに-1点を書き込んでいく。

そして。


「残るは、週一君のですか。」


彼女は起き上がるとベッドに座った。

もう手元にあるレポートはたった1枚だ。

そしてその1枚だけのレポートを手に取る。


――――――――――――――

『偽善と善』

蟹令李 週一


偽善は善です。

というか、善よりいい善です。

善っていうのは見返りを期待せずに人を喜ばせる、いわば片道の幸せです。

でも偽善は人を喜ばせ、なおかつ自分も目的を達成して喜びます。

下心アリでも、相手もハッピーで自分もハッピーならそれ以上にいいことなんてないです。

だから偽善は往復の幸せなんです。

でも、条件があります。

それはバレないことと、続けることです。

バレたら相手は幸せじゃなくなるし、途中で止めても幸せじゃなくなるからです。

でも、例外として利用しあう関係っていうのがあります。

こっちは向こうに感謝されたくて、向こうはこっちを利用したい時なんかいい例です。

その場合はバレていても向こうは感謝して、こっちは偽善を続けられます。

言ってみれば蟹とかもやっている共存関係というやつです。

というわけで、偽善とは条件付きの素晴らしい善です。

善は、条件なしの普通の善です。

どっちがよくてどっちが悪いかなんて、それは人それぞれで違うものです。

僕はそれを蟹から学びました。

やっぱり蟹は最高です。

食べても最高です。

蟹味噌が好きです。

おわり

――――――――――――――


…1枚にも満たない内容だった。

憬教授はしばらくそれを眺めていたが、やがて小さく微笑む。

さっきまでのアホ系笑顔じゃなく、大人の女性の微笑みだ。


「…君もそう思っていたんですね。」


そう呟くと、彼女は名簿に0と書き込む。

そしてその左側に1本の線を付け足した。

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