1-9.四天王『白隼のキヨスク』
4人は何者っ!?ってな感じでそっちを見る。
そこにいたのは何か米みたいな形をした60cmほどの生き物だった。
「…チーフ、あの小物は何でしょう?」
リアクションに困った冥介がその生き物を指差して訊ねた。
でも小物ってことだけは早々に決め付けていた。
「さあ。お米さんみたいですねぇ…。でも手足はけっこうムキムキです。」
「また新しい怪人かな?クリティカル米とか、そういう感じの…。」
「小さいし弱そうだね。石でも投げてみる?」
驚愕どころか反応が薄いウゴクンジャー達だが、米は全く気にしてないようで、得意げにニヤリと笑った。
「へへへっ!成る程なァ、どうやらこのオレの出番ってわけだな?このダークキャン・D四天王、キヨスク様のなァ!!」
どうやら米の名前はキヨスクっていうようだ。
何にしてもカッコ悪い…。
「とぉっ!」
キヨスクは民家の屋根から回転しながら飛び降りた。
2回も前転する派手な降り方だったが、キヨスク自身がカッコ悪いのでその演出も可哀想なだけだった。
「む、小物が降りてきたぞ。どうする?追い払うか?」
週一に訊ねる冥介。キヨスクをまるで野良猫みたいに指差し、酷いことを言ってる。
「害はなさそうだし、少し話を聞いてみましょう。綾もそう思うだろ?」
「そうね。いつでも倒せそうだし…。」
「けっこう可愛いじゃないですか。しばらく観察しましょう。」
他の3名もキヨスクを完全に小馬鹿にしていた。
一応さっき、ダークキャン・Dの四天王だって言ってたのに、誰もその点に関しては触れていない。
人畜無害な小動物みたく扱っている。
その証拠に綾は変身を解除してしまっていた。
敵にそんな扱いを受け、さぞかしキヨスクがヘコんでいるかと思いきや。
「さあウゴクンジャー!まとめてかかって来い!このオレのスピードに翻弄されろ!」
全然気にしてない…というか気付いてないようで、愉快そうに反復横跳びみたいな動きを繰り返していた。
「小物が横に跳んでいるぞ。一体何がしたいんだ?」
「威嚇しているんじゃないですか?小動物特有の行動だってテレビで見ましたよ。」
「週一君、物知りだね。私はてっきり発情してるのかと思ったよ。雌の米が近くにいるかなって、思わず探しちゃった。」
「うんうん、みんなよく観察していますね。そういう探究心があるってことは素晴らしいですね。先生、ちょっと感動です。」
可哀相なキヨスクはそれでも一生懸命に反復横跳び運動を繰り返し続ける。
「かかって来い!オレの素早い動きでお前らの攻撃なんて全部かわしてやる!」
ちょっと息切れし始めたキヨスクだが、まだ敵が攻撃してくるのを待っている。
「つまらないな。さっきから威嚇ばっかりして、小物はそれ以外の動きを見せないぞ。」
「仕方ないですよ、きっと僕らが怖いんです。」
「小動物って精神的にも弱いもんね。ストレスとか与えすぎると死んじゃうんでしょ?」
「うんうん、みんなけっこう雑学の知識があって素晴らしいですね。ご褒美に後でハンバーガーをおごってあげます!」
一方のキヨスクは…。
「ハァ、ハァ!ど、どうしたウゴクンジャー!ハァハァ!余りの速さに目が追いつけんのか!?ハァハァハァ!そ、そうなのか!?ヘ、ヘヘッ!ヘヘヘッ!」
もうバテバテながらも一生懸命に動いていた。
それでもまだ相手にされてないってことに気付いてないのは不憫だ。
そんな時。
「…飽きた。」
唐突に冥介が呟いた。
それに続き、週一や綾、そして憬教授も…。
「そうですね、もう観察はいいや。綾、倒しちゃおう?」
「そうだね。先生、もう倒しちゃっていいですか?」
「綾さん、チーフって呼ばなきゃダメですよ。…まあそれはともかく、もうそろそろ倒してもいいですよ。それとも捕まえて虫カゴか何かに入れて飼いますか?」
「飼うのはちょっと…。じゃあ、倒しますね。」
綾が指をボキボキ鳴らした。
待ち望んでいた敵の攻撃に、さぞかしキヨスクが喜んでいるのかと思いきや…。
「ゼェゼェゼェ…、ちょ、ちょっと待てや…。さすがのオレも疲れて…。」
バテていた。
しかし綾はそんなことに構ってくれない。
疲れて座り込んでしまったキヨスクに詰め寄ると、その頭を掴んで持ち上げた。
「な、何だよぉ?待てって言った、」
ベキョ!
キヨスクの無防備な顔面に綾の拳がめり込んだ。
「あばっ!?」
鼻血を流し、驚いたように綾を見上げるキヨスク。
しかし綾はそんなキヨスクに第2、第3の拳を叩き込む。
バキッ!ゴキャッ!!
「ばァッ!?おぼォッ!?」
殴られながらキヨスクは怯えた目で綾を見た。
(こ…殺される…!何とかして逃げないと…!)
「おい暴力女!!せ、背中に毛虫がとまってるぞ!」
「うそっ!?」
キヨスクの命を賭けた一言に、綾はうまく反応してくれた。
慌てて背中に手を回した綾はキヨスクを離してしまったのだ。
「しゅ、週一君!毛虫どこ!?取って!!」
パニックになってる綾。
その隙にキヨスクは4人から間合いを取った。
「綾、毛虫なんていないよ。あの小動物の嘘だよ。」
週一の言葉で綾が正気を取り戻した時、すでにキヨスクはもといた民家の屋根に逃げていた。
「おい、小物が逃げたぞ。」
「綾さんがぶったので、すっかり怯えてしまったようですねぇ…。」
悲惨な言い草のウゴクンジャー達。
しかしそれもあながち嘘ではないようだ。
その証拠にキヨスクは本当に怯えている。
「ち、ちくしょう!まさかこのオレが苦戦を強いられるとはな!!ここは一旦出直した方が良さそうだ!!」
かなりの重傷を負っているようだった。
それに飛び跳ねてたから余計にバイタルが低下している。
「お~い、降りて来いよ。もう苛めないから!」
「もう殴らないから降りておいで~。」
週一と綾が木の上に上った猫を呼ぶような感じでキヨスクに呼び掛ける。
苛めないとか口で言っているものの、降りてきたら倒す気マンマンだ。
「誰がお前らの言葉になんて騙されるか!オレはこう見えても四天王の1人!この星の生物に変身してまんまと逃げてやる!お前らはタップリと悔しがるがいい!!」
説明口調で捲し立て、キヨスクは無理して笑った。
疲れと痛みを堪え、それでも余裕をみせようとするそのハッタリ笑顔はある意味健気で感動だ。
「変身能力?まさかお前…人間の姿になれるっていうのか!?」
「さすがは四天王って感じですねぇ。でも、60cmの人間は目立ちすぎませんか?」
冥介と憬教授がそれぞれ訊ねる。
「そうか…いいだろう。冥土の土産に教えてやろう!」
キヨスクはニヤリと今度はハッタリじゃない笑みを浮かべた。
これでようやく自分が四天王で、凄いってことをウゴクンジャーに教えることができるので相当嬉しいようだ。
「メイド…?家政婦のことか?あいにく今は雇ってないぞ。」
「そのメイドじゃないですよ八又乃さん。あの世って意味です。でも…どっちにしろこの状況で使う台詞じゃないな。どっちかっていうと僕らが使うべき台詞だね。」
「だよね。ピンチになってる相手に対して使うんだよね、その台詞。よくアニメとかで悪役が使ってるし。」
アホが3名話し始めた。
このままじゃキヨスクの説明ができないってことで、憬教授が彼らの暴走を止める。
「どうどう、みんな落ち着いて。それよりお話を聞いてあげましょうね。」
4人が再びキヨスクを見る。
「…我らダークキャン・D四天王は人間どもの目を欺くため、人間の姿に変身する能力を持っているのだ!しかしオレは人間などという下等生物になぞ変身したくない!というわけで、オレは他の四天王と別の変身を身に付けたのだ!」
誇らしげに言うキヨスク。
そして彼は口元をニヤリと歪ませると、腕を天に掲げた。
「変身ッ!!」
ピカッ!
ウゴクンジャーの変身シーンよりしょぼい光と共にキヨスクの姿が屋根上から消えた。
「消えたっ!?」
驚く冥介だが、彼以外はキヨスクが消えた屋根上を一瞥すると苦笑した。
「…?どうした、お前達は驚かないのか?あの小物の姿が消えたんだぞ?」
訊ねる冥介に、週一は屋根上を指差して答えた。
「アレに変身したんですよ、アレに。」
彼の指が指し示す先には…やけに傷ついた大根が1本転がっていた。
【初登場キャラ】
・ダークキャン・D四天王:キヨスク




