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下等生物戦隊ウゴクンジャー  作者: 深爪リオ
SECTION7-待ち人、現レズ-
107/150

7-5.気絶する蟹♪

「馬鹿な…。」


理工学部3年の村岡は膝をついた。

髪を派手な金髪に染めた頭のあんまりよくなさそうな男だ。

彼の周りにも同じような男たちが呆然としている。

ここは週一の大学の中央ホール。

彼ら軽音部は外が雨だってんで、今日はこのホールで歌っていた。

軽音部はこの大学でも巨大な文化部だ。

だからホールを使っても学校は文句を言わない。

しかし!いつもはけっこう人が集まってくるはずなのに、今日に限って集客数はゼロ。

しかも…。


「何で…何で誰も来ないんだ!!」


彼の声は疑問っていうよりも、叫びに近かった。


◇◇◇


で、場所は哲学研究室。

外まで黒山の人だかりができており、いつもは閑散としている。

(原因は隣の社会情勢学研究室。時計の音が外まで鳴り響き、かなりコワイから。)

その研究室棟はやたらと熱気に包まれていた。

雨だから蒸れてるってのもあったけど、人数が半端じゃないのだ。


「~♪Club lose consciousness…La La La ~♪」


美しいピアノの音色と共に透き通るような歌声が響いている。

よく分からない民族楽器に囲まれたグランドピアノを弾いているのは黒いジャケットを羽織ったハンサム青年。

歌っているのは音楽サークル唯一の部員、ぐるぐる眼鏡の水那方さんだ。

普通に学校へ来るような格好と、美しい歌声が何ともミスマッチ。


「…ふむ、まだまだ改良の余地はあるな。この『気絶する蟹』…。」


演奏が終わり、青年…冥介はそう呟くと立ち上がった。

そして初めて自分たちを見詰める数十の視線に気付く。


「部屋の鍵を掛け忘れたか。今日子、いつの間にかギャラリーができているぞ。」


「え…?」


唄い終えた水那方もギャラリーの皆さんに気付き、驚きの声をあげる。

地味にかけては他の追随を許さない彼女だ、性格もやっぱり内向的。

だから思わず後ず去る。


「あ、あの~、」


今までずっと静かに歌を聞いていた学生の1人がおずおずと2人の前に進み出る。


「何だ?」


「ここって確か…音楽サークルっすよね?」


冥介は眉を顰め、水那方を見る。

彼女はコクコクと頷いた。


「そうらしいな。」


「やっぱり!!俺、今の歌聞いて感動しました!!ホールで軽音が演ってるんすけど、比べ物になんないっす!」


ギャラリーの皆さんがうんうんと同意する。


「この曲、オリジナルっすか?」


「ああ。不完全だがな。」


お~!!って声が鳴り響く。

彼らが感動しているのは誰が見ても明らかだ。

泣いてる奴も1人や2人ではない。

曲名は『気絶する蟹』なんだけど。


「凄いっす!天才的っす!テレビに出てもおかしくないっす!」

「ホント!素敵だったわ!!」

「アンコール!!」

「ファンになっちまったよ!!」


声が次々に投げ掛けられる。

でも冥介は憮然としているし、水那方さんに至ってはすっかりビビってしまいカーテンの陰に隠れようとしている。


「…これでは今日はもう無理そうだな。今日子、ここらで止めにするぞ。」


◇◇◇


その頃、誰もギャラリーのいないホールでは、軽音部部長の村岡君はというと…。


「どうして!どうしてだぁぁぁぁぁ!!誰か、俺の歌を聞いてくれ!!!」


跪いたまま床をバシバシ叩く。

と、彼の肩に同じく金髪の男がそっと手を置いた。


「村岡…。音楽サークルのせいだ。あのサークルが俺らの客を奪ったんだ!!俺も偵察がてら聴きに行って来たが…凄えレベルだ。ありゃ勝てねぇよ…。」


「ま、真中!てめえ!!」


村岡は立ち上がると、真中の胸倉を掴み、壁に叩き付ける。


「音楽サークルだと!?てめえ、何諦めてんだよ!俺たちのバンドで夢を掴み取るんじゃなかったのかよ!!今日たまたま客が来なかったからって、それでヘコんでていいのかよ!?」


青春だ。

彼の叫びに、今まで呆然としていた残りの軽音部員も顔を上げる。


「そうだ!部長!俺らが間違ってたよ!!」


「俺、初心を忘れてたぜ!今日ダメでも明日頑張ればいいじゃねえか!」


「み、みんな…!!そうだ!俺らはやればできる!!きっと今日ギャラリーが来なかったのも音楽サークルなんかが珍しく演ってたから物珍しさでそっちに行っちまったからに違いない!俺たちのレベルはもうプロ並なんだ!!」


村岡の目が涙で潤んだ。

と、真中がポケットからレコーダーを取り出す。


「『~♪Club lose consciousness…La La La ~♪』」


レコーダーからさっきまで哲学研究室で歌われてたのが流れた。

その途端、興奮気味に決起してる軽音部のみなさんが沈黙する。


で、曲が終わった。

…しばしの沈黙が流れる。


「よし!!」


数秒後、村岡が沈黙を破った。

彼は希望に満ちた顔で、部員達に向き直る。


「みんな!こうなったら方法は1つ!」


部員達は部長の次の言葉を待った。


「音楽サークルへ転部だ!!」


ホールを揺るがす歓声があがる。

…その日、水那方さん1人しかいなかった音楽サークルは一気に十数人の転入部員をゲットしたのでした。

めでたしめでたし。

【初登場キャラ】

・軽音部部長の村岡君

水那方みなかた 今日子きょうこ ・・・フルネームは初登場

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