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第1話 発端

初めて冬香の中身が夏奈と入れ替わったあの日のことは、よく覚えている。


あれはまだ残暑が残る9月、冬香が初めて僕の部屋に泊まった夜の翌朝だった。


早くに目を覚ました僕はベッドを出て床に座り、冬香が目を覚ましたら一緒にゆっくり朝ごはんを食べようと、近くでおいしいモーニングを出すカフェがないかスマホで検索していた。


ふと、冬香の寝顔が見たくなって振り返ると、ちょうど彼女が目を開けたところだった。


「えっ?あれ?ここどこ?」


目を開けた冬香は、目をこすりながらキョロキョロと周りを見回している。目を覚ましたばかりで少し混乱しているのかな?


「目が覚めた?おはよう。」


こちらを見た冬香と目が合った瞬間、彼女は目を見開き、眉を吊り上げた。


「加嶋栄斗!どうしてここにいるのよ!?」


「ここが僕の部屋だからだけど・・・。」


「なんで私が栄斗の部屋にいるのよ・・・?」


「えっと、それは・・・。」


彼女は、焦った様子で落ち着きなく体のあちこちを触っている。そして、自分が着ているぶかぶかのTシャツの首のあたりを引っ張って中を見た。そのTシャツは僕が貸したものだ。


それからタオルケットをめくって自分の下半身を見つめた。


「下着、着けてない・・・。パンツしか履いてない。ということは、えっ?」


「まあ、確かに寝るときに着けなかったと思うけど・・・。」


突然、彼女は僕をキッと睨みつけてきた。


「栄斗が私を部屋に引っ張り込んで・・・それで私の体をもてあそんだの・・?私の貞操が奪われた・・・。」


「ちょっと、ちょっと待って!!もてあそんだって何?冬香とは、もう付き合い始めてだいぶ経つし、昨日のことだって、ちゃんと真面目に話して、これからもずっと一緒にいるって約束して、冬香も同じ気持ちって言ってくれて・・・。」


突然の豹変に戸惑うしかない。説明しようと冬香に近づくと、バシッと頬に衝撃が走った。


「いつからあんたと付き合い始めたのよ!!どうしてこんなことになってるの・・・。あれっ、昨日の記憶がない。まさか酔い潰して無理やりとか・・・。」


「いや、昨日はお酒は一滴も飲んでないし・・・冬香、いったいどうしちゃったの?」


おかしい・・・絶対におかしい・・・。言葉遣いもいつもと全然違う。そもそも冬香は間違っても平手打ちなんかするタイプじゃない。


僕は事態を掴み切れず、オロオロするしかない。


「そもそも、冬香って誰のことよ!私は夏奈でしょ!八幡夏奈!変なこと言ってごまかさないで!!」


「えっ、夏奈・・・?」


八幡夏奈のことはよく知っている。小学生の頃のランニングクラブで知り合い、中学、高校の陸上部でも一緒だった幼馴染み。いや、幼馴染みという言葉から普通にイメージできるような甘ずっぱい関係なんかじゃないな・・・。


ずっと前に絶交され、今ではすっかり疎遠になって、連絡も取ってない・・・。


「夏奈なわけない!!どう見ても冬香だよ!!」


あまりのことに僕の声も大きくなる。

そもそも冬香と夏奈は見た目が全然違う。

夏奈は、こんがり焼けた肌とちょっと茶色がかったくせ毛のショートヘアが似合う活発でスレンダーな陸上女子。


対して、目の前にいる冬香は、色白で長い髪が美しい、大人しいグラマラスなインドア女子。

そんな対照的な二人を見間違えるはずない。目の前にいるのは間違いなく冬香だ。


もしかして・・・こんなことが現実に起こるなんて全く信じがたいけど・・・。


僕はスマホでカメラ機能を起動すると、黙って夏奈を名乗る彼女に差し出した。


「ほらっ、自分の姿を見てみなよ。」


彼女はタオルケットで身体を隠しながら僕を睨みつけ、警戒しているのかなかなかスマホを受け取らなかった。だけど、僕も手を引っ込めないまま、しばらく睨み合っていると、やがて根負けしたのか、スマホを受け取って画面を見てくれた。


「えっ?これが私?何でこんな丸顔になってるの・・・?」


その驚愕の表情を見ていると、何となく事態が掴めてきた。

どうやら冬香の中身が夏奈に入れ替わってしまったということらしい。


いや・・・正直言えば、僕の理解の範疇を超えている。

だから、まったく事態は掴めてないんだけど・・・。


「えっ?えっ?何で?」


目の前の彼女はもっと状況を理解できず、混乱していた。スマホを見ながら髪を触ったり、胸のあたりの肉をつまんだり、せわしなく動いた後、視線を僕に移した。

その瞳は激しく揺れている。動転して言葉も出ないようだ。


「・・・とりあえず・・・朝ごはん食べよっか?」


とりあえず落ち着いて冷静に状況を整理する必要がある。そのためには服を着て、お腹を満たし落ち着くべきだ。

そう考えて提案すると、彼女も黙ってうなずいてくれた。


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