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第11話 ちょくちょくは困る

それから夏奈は、言葉通りちょくちょく冬香と入れ替わるようになった。


いや、ちょくちょくなんてレベルじゃない。

冬香と会う時は2回に1回は夏奈・・・いやそれよりもずっと多いくらいだ。


入れ替わりのタイミングは予測がつかない。

何度か規則性を見出そうとしたけど、どうやら完全にランダムらしい。


1週間ずっと夏奈だったこともある。


だから、僕はデートの約束をしても、その日に会うまで冬香が来るのか、夏奈が来るのかわからない。

いつも不安なまま運を天に任せるしかない。


しかも、夏奈はどんどん冬香の真似がうまくなり、本気で寄せられると僕には全く見分けがつかない。


入れ替わりが始まってから数か月経ったこの日のクリスマスイブのデートもそうだった。


冬香に来て欲しかったのに夏奈が来た。

しかも途中までずっと夏奈は入れ替わりを隠して冬香のフリをしていた。


もっとも、この後に起ったことを考えると、途中でも入れ替わりを教えてくれただけまだ良心的だったと言えるかもしれないけど・・・。


――


クリスマスデートで訪れたイタリアンバルでメインの肉の盛り合わせの皿が運ばれた時、実は入れ替わっていると教えてくれた冬香こと夏奈は、我を失ったかのように夢中になって、ひととおりの肉料理にかぶりついた後、我に返ったのかきょとんとした顔になった。


「どうしたん、暗い顔して。ほら、栄斗も肉食べなよ。肉食べると脳から幸せホルモンが出るんだよ。」


「そりゃ暗くなるって・・・。せっかくかわいい彼女とデートだと思ったのに・・・。」


「それはしょうがないって。神様の判断なんだし。それよりこんな素敵な夏奈様とデートできる幸せをかみしめた方がいいって!!食べないんだったら栄斗の分までもらっちゃうよ!!」


僕と話している時も食べるのをやめず、このままだと本当に僕の分まで肉料理を食べ切ってしまいそうな勢いだったので、慌てて料理を皿に取る。


「そういえば・・・。入れ替わってない時に夏奈のスマホにLINEでメッセージ送ったんだけど見た?なんかずっと未読なんだけど。」


「そういえば、まだブロックしたままだったかも。ほら、高校の頃に絶交したから、それ以来そのまま。」


夏奈は平然とした顔でスペアリブを食べ続ける。


「そうなんだ。今後の対策についてゆっくり話をしたいから、ブロック解除してくれない?」


なぜか彼女は首をひねって渋い顔をした。


「う~ん・・・。いまあっちでは色々あるし・・・。都合が良くなったらこっちから連絡するよ。」


「そうなんだ・・・。そういえば競技の方はどうなの?ネットでたまにチェックしてるけど、大会にも記録会にも出てないし、大学駅伝のメンバーにも入ってなかったみたいだけど・・・。」


そう伝えると、夏奈は手に取ったスペアリブを皿に降ろし、ジロリと僕を睨みつけた。


「せっかく楽しい気分でいるのに、大学とか競技のこととか思い出したくない。」


「ああ、ごめん・・・。」


中学の時も高校の時も、いつも話題は競技のことばっかりだったのに・・・。大学に行ってからちょっと変わっちゃったのかな?


大学と競技のこと話しちゃダメなんだったら、夏奈と何を話せばいいんだろ・・・?


そんな風に思いながら、取り皿の上のソーセージをフォークでつついていると、急に夏奈がニヤリといたずらっぽい視線を送ってきた。


「そういえば、この後どうする予定だったの?」


「ああ、この料理の後はデザートが来る予定だけど・・・。」


「そうじゃなくて、ご飯食べた後の話!クリスマスだし、どうせエロいこと考えてたんでしょ!!」


夏奈は両手で頬杖をつき、ニヤニヤとしている。この表情ばかりは冬香に見えない。小学生以来、ずっと僕をからかい続けて来た年季を感じる。


「まあそれは否定しないけど。でも、夏奈と入れ替わっちゃったんだったら仕方ない。今日は解散で・・・。」


「え~っ!!それはダメだって!冬香さんのお姉さんに今日は泊ってくるって言っちゃったし!!」


頬杖をついた夏奈の不敵なニヤニヤが止まらない。これはいつもの悪だくみをしてる時の顔だ・・・。


「じゃあカラオケでも行く?そのままオールで・・・。」


おそるおそる切り出した僕に、夏奈は「ふうっ」っと不機嫌そうなため息をついた。


「イブの夜にそれはないんじゃない?冬香さん、お泊りセット用意してたよ。楽しみにしてたんじゃない?栄斗の部屋に泊まるのを・・・。」


ニヤリと笑いかけて来た夏奈の顔を見て背筋が震えた。


こいつ、うちに泊まる気だ!!


「だめだって!!僕には冬香という彼女がいるのに夏奈を泊めるなんて・・・。」


「へ~き、へ~き。だって、今は私が冬香なんだよ。大丈夫だって。栄斗に手は出さないから。栄斗から手を出されたらわからないけどね~。キャ~ッ!!」


両手で肩を抱きながら、からかうような声を上げるニヤついた夏奈。


「でも、さすがにそれはまずいって・・・。ダメだよ。」


さすがにそれは断固として断らないと。

そう思って、おずおずと、だけどキッパリした口調で断ると夏奈の表情が一変した。


「ふ~ん、じゃあ私にこの寒空の下、路頭に迷えって言うの?この冬香さんの体で・・・。」


「それは・・・。」


腕組みをして眉を吊り上げた顔は怒った時の夏奈そっくり・・・いや夏奈にしか見えない。


「あ~っ!そういえば、冬香さんって入れ替わっている時の記憶が残ってるって言ってたよね。まるで自分が経験したみたいな記憶として。そっか~、そしたら冬香さんには、栄斗から突き放されて、寒空の下を一晩中さまようクリスマスイブの思い出になっちゃうんだ~。そうなったら栄斗との関係はどうなるかな~。」


意地悪そうに微笑みかける夏奈の言葉に、僕は観念してがっくりと肩を落とし、うなずくしかなかった・・・。


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