2巻 電子書籍記念SS バルドとセシリアの日常
アルロニア帝国での、バルドとセシリアの朝の一場面です。
糖分高めです ∩^ω^∩
「セシリア、朝食できたぞ」
「はい。お化粧をしたらすぐに行きます」
私は化粧台の前で急いで髪を梳かしながら返事をすると、バルドさんがひょっこり顔を出した。
濃い金の髪に、形よい鼻梁、青空を写し取ったような綺麗な瞳、左目には傷痕があるが、それすらも美しい顔が嬉しそうに綻んだ。
「俺が梳かしてもいいか?」
「くせが強いから、梳かすのは大変ですよ?」
私は苦笑してバルドさんに櫛を渡すと、バルドさんがウキウキと髪を梳かし始めた。
バルドさんは、器用に梳かしながら鏡越しに私と目が合うと微笑んだ。
「セシリアの髪は綺麗で触りたくなる。この下ろした強く波打つ髪がすごく色っぽくて好きだ」
そう言うと、私の髪を一房すくって口づけた。
途端に私は真っ赤になった。
バルドさんは何事においてもストレートに愛情表現をしてくれる。嬉しいが、とても恥ずかしい気持ちになる。
「バルドさん、恥ずかしいのでそこまでで」
私がストップをかけると、バルドさんはクックッと笑っておとなしく髪を梳かすのを再開した。
「俺が結ってもいいか?」
「はい」
バルドさんは手先も器用で、私が髪をお団子に結ぶのを見てすぐに覚えてしまった。
今では、編み込みまでマスターしていた。
「バルドさん、上手ですね」
今日はサイドも編み込みをしていた。
「練習したからな」
バルドさんは、練習用のウィッグも買って来て、さまざまな結い方を練習している。私も、覚えの早いバルドさんについつい色々教えてしまっていた。
「よし、できた。完璧」
バルドさんがきっちりと私の髪を綺麗なお団子にした。
「はい。完璧ですね!」
そろそろ王城の侍女にも負けない技術になってきているような気がする。
私が化粧水を顔に付けていると、バルドさんがじっと私を見つめていた。
「どうしましたか?」
「いや、やっぱりそばかすが可愛いなと思って」
バルドさんが顔を赤くして言った。
「バルドさん……」
私も顔を赤くした。
初夜の時に、化粧をしていない素顔の、いつもより散った私のそばかす顔を見たバルドさんは、「可愛い……」と呟いてそばかすにたくさん口づけた。
私は、ヘンリーに散々虫だのパンクズだの言われてきたそばかすに、バルドさんがそんな反応をするとは思わなかったので、とにかく驚いてしまった。
バルドさんが、ヘンリーのような態度を取るとはもちろん思っていなかったが、しかし、まさかこんなにそばかすを「可愛い、可愛いすぎる……」と、止まらなくなるなんて想像もしていなかった。
それからずっと、そばかすはバルドさんのお気に入りだ。
「こんなに可愛いのに隠しちゃうのはもったいないな……。ああ、でも俺だけが見られるっていうのもいいんだよなぁ」
バルドさんが真剣な顔をして悩むのも、毎朝のことだった。
あれだけコンプレックスのそばかすだったのに、バルドさんがあんまり褒めてくれるので、今は私もそばかすが可愛らしく思えた。
とはいえ、お仕事の時はやはりそばかすは消しておいた方が無難なので、しっかりお化粧はしてしまうが。
「そろそろお化粧をしてもいいですか?」
「ああ、悪い。邪魔しちゃったな」
バルドさんは、名残り惜しそうにそばかすにチュッと口づけた。それから、当然のように左右の頬にも口づけた。
そろそろ、このそばかすから両頬への口づけも毎朝のルーティンになってきている。
「隣で見ていてもいいか?」
「はい」
バルドさんは、そのうちお化粧の仕方まで覚えてしまいそうだ。
「お化粧しているところを見るのは、おもしろいですか?」
「おもしろいっていうか、仕事するキリッとしたセシリアに変わっていくのを見るのが好きなんだよな。俺だけに見せるセシリアから、出会った頃のセシリアになってく感じでまた惚れ直す」
目尻が柔らかく下がり、その青空のような瞳が甘やかに蕩ける。
私はとうとう顔を覆ってしまった。
「バルドさん……。もう、本当にそこまでで」
顔はもちろん、耳も手も全てが熱い。
「セシリアが可愛いのが悪い」
バルドさんが、ニカリと言い切った。
『私の人生にあなたは必要ありません〜婚約破棄をしたので思うように生きようと思います〜②』
☆ コミックシーモア様より2巻先行配信 ☆
シーモア特典SS「レッツ・クッキング!」が付いてます。
料理が苦手なセシリアが、バルドからスープの作り方を教わるドタバタクッキングのお話です。
2巻には4つの番外編を書き下ろしました ♪
「シルビア・コカックの末路」
学園時代にセシリアに嫌がらせをしていたシルビアの因果応報のお話です。
「とある貴族令嬢たちの誓い」
バルドとシュリガンのデートを目撃した令嬢の熱い思いが描かれております。
「ユリアの運命の出会い」
ユリア視点で、セシリアが王女宮に配属されることになった裏側や思いが綴られています。
「マーバリー・マイヤーの決心」
なぜ、マーバリー先生はすぐにセシリアの礼儀作法の先生にならなかったのか? ……それは、このお話を読めば分かります。
https://www.cmoa.jp/title/1101459278/vol/2/
ぜひ、読んでいただけたら嬉しいです o(^▽^)o
他書店様→9/15(月)配信開始 予約受付中
よろしくお願いします。





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