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襲撃の真相 前編 

 まず、結論を言うと貴族至上主義は消え去った。

 そう、消え去ったのだ。綺麗さっぱり跡形もなく。

 そして、王太子殿下が王として即位していた。

 いや、何を言っているのかと思うだろう。

 私も未だに訳がわからない……。




 まずは順を追って整理しよう。

 

 私は昨日、グラビス様がウルブシュア様にご助力を願いに行った少しあと、ロザリー様への不敬罪で問答無用で捕まった。

 平民である私は、一般の牢に入れられた。

 隙間風の吹き込む、石で造られた牢だった。

 ここまでが、昨日の出来事で私が把握していることだ。


 さて、私が牢に入れられたあとだが――。


 まず、キャサリン様だ。

 キャサリン様は、「よくも、私のオシの二人を!」とそれはそれは、口から火を吹く勢いで怒ったそうだ。


 そして、机に向かうと怒涛の勢いで何やら描き上げたとか?

 ロザリー様との出会いの、頬を打たれた出来事から始まり、数々の暴言、そして、指導侍女となったロザリー様が休憩を取らせることなく働かせたこと、私が王女宮で孤立するように仕向けたこと、青い薔薇の一件など、嫌がらせの数々を赤裸々に絵に文字を添えて、私が捕えられたところまでを数十枚に亘り描いたとか……?


 それを、メイド達や侍女達に手当たり次第配ったのだそうだ。

 結果は、百聞は一見に如かずだった。


 メイド達や王女宮の侍女達は、もちろん顔馴染みだ。

 しかし仲がよかったかといえば、そうではないと思っていた。


 私はあまりしゃべらなかったし、浮いた存在であった。

 しかし彼女達は、キャサリン様の描かれた絵を読み、私のために怒り、助けるために立ち上がってくれた。


 メイド達は仕事をボイコットして、王妃宮の前に抗議の座り込みをしたそうだ。侍女やメイドを統括するのは、王妃殿下の仕事だ。


 そして、王女宮の侍女達もまた私を助けるべく立ち上がった。

 すぐさま、キャサリン様の絵は真実であるとみんなで署名をして配りまくった。キャサリン様の描いた絵にしっかり信憑性がついた。


 王女宮以外の私のメイド班出身だった侍女達が、大激怒したそうだ。

 瞬く間にキャサリン様の描いた絵は回し読みされ、私の話はどこまでも広がり、根強い貴族至上主義の侍女以外はおかしいと怒った。

 こちらもみんなで仕事をボイコットし、王太后宮の前に座り込みの抗議をした。


 それに対して、王太后殿下がカレン様とマーバリー様にどうにかしろと言ったらしいが、お二人も抗議の座り込みにスッと交ざったとか。


「私は、メイド時代からセシリアさんを知っております。そんな彼女が、ロザリー様に不敬罪などありえません」


「私も短い間でしたが、セシリアさんの礼儀作法の講師として人となりはわかっております。彼女は、不敬罪になるギリを上手に狙うでしょう。なので、これは冤罪です」

 お二人はきっぱりと言い切ったそうだ。


 ユリア様は、様子を見るばかりであった王妃殿下に代わり、ボイコットしている彼女達の仕事を容赦なく王太后宮を筆頭とした貴族至上主義の侍女達に振った。


 ユリア様の命で王太后宮に乗り込んだアルマ様は、抵抗する貴族至上主義の侍女達を、それはそれはいい笑顔で働かせた。もちろん、他の宮にいる貴族至上主義の侍女達も逃がさず働かせたそうだ。


 それから、この騒ぎに文官も加わった。

 こちらは、シュリガンさんが煽ったらしい。


「平民だからと、冤罪を簡単にかけられるなんて王城は恐ろしいです。僕は命を守るために、文官を辞めた方がいいのかもしれません」

 と、あちこちで呟いたらしい。


 今の文官の、特に計算系を支えるのはシュリガンさんなのだそうだ。

 その彼が辞めてしまった場合の、負担はとんでもないらしい。

 楽を知ったあとには、昔には戻れないというやつだ。


 文官達は、みんなで一人一通しっかり冤罪かどうか調べてほしいと、文官らしく小難しい言い回しで長々とした書簡を書いて陛下に提出したという話だ。

 結構な量の分厚い書簡が陛下の執務室に届けられたそうだ。


 陛下が大量の書簡を前に頭を抱えていると、今度は貴族家からも抗議の書簡が届いたらしい。


 そちらを煽ったのはグラビス様だ。


 今は嫁いで貴族夫人になった、私の元メイド班だった彼女達を訪ねて、「セシリアさんの危機だよ?こんなおかしなことが起こったよ?」と触れ回って来たらしい。

 それを聞いた彼女達は旦那さんや親戚、友人達に嘆き訴え、こちらも抗議の書簡が山ほど届いたそうだ。


 こんなに多くの人達が私のために動いてくれたことは、やはり素直に嬉しかった。きちんと認められていたのだと思うと、よくがんばってきたねと褒められたような気持ちになった。


 おかげで異例の速さで徹底的に調査をされ、冤罪と証明されて翌日には釈放となった。


 こちらは、それから大分経って知った後日談だが……。

 冤罪で訴えたロザリー様は、私と入れ替わりで隙間風の吹く牢に入れられていたそうだ。

 王城もバタバタと忙しかったせいなのか、しばらく放置され、やっと気づいた騎士に牢屋から出されると、すでに生家は潰されていて誰もいない。

 グラビス様によると、ウルブシュア様がロザリー様には()()()()()()()()なったからと、いい感じにしてくれているそうだ。

 お二人に接点があったとは知らなかった。


 時を昨日の話に戻すが、ここまで盛りだくさんの情報量に私はアップアップであったが、さらに訳がわからないとんでもない話が続く……。

お読みくださり、ありがとうございます。


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― 新着の感想 ―
キャサリン様GJ! 絵に文字をつけてって…絶対コマ割りマンガ仕立ての諸悪の根源断つべし!な暴露本原稿ですよね?! きっと登場人物がそっくりだったので詳細解説しなくてもバレてますよね! やんややんや!!
急転直下と言う感じですね。 存分にヘイトを集め、それなりにストレスを溜めてくれた貴族至上主義の輩たちですから、もう少しはじっくりと、奈落へ落ちていく阿鼻叫喚の様子を見たかった気もします。 例えば、レイ…
 ──これが後の世に言う『セシリア推し隊の乱』である。  本人とロザリーが思ってた以上に方々に影響が波及しましたねぇ。次は愛妻家たちか(笑)
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