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再起するアホ
「お、俺は… なんて…なんてバカなことをッ…!」
無様に床を泣き濡らすこと早5分。
自力で立ち上がらずとも、「その辺にある棚に体を這わせながら立てば良くね?」
なる理論を考案、こんなアホでも真っ先に思いつきそうなことすら思いつかなかった自分に戦慄しつつ、実行。
そして、なんなく立ち上がることが出来た男は、尿意にかまけて無駄にした、大切な5分を悔やんでいた。
たった5分、されど5分。
尿意に追われている身にとって、「5分」という貴重な時間は、どんな宝の山よりも大切なものである。
それを、ただ床をのたうち回ることに消費するなど、金塊をドブに捨てるが如き愚行。
許されざる所業である。
だが、まあ、過ぎたことを悔やんでも仕方がない。今度こそ、悲願である「トイレに行く」というミッションを達成しなくてはならない。
再度、絶望の淵から這い上がってきた男は、そう気を引き締め、ついでにはち切れんばかりの膀胱も引き締め、鬼の形相で悠然と一歩を踏み出した。
––––––そしてまたもや、床を涙で濡らした……。