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届かぬ思いは泡沫に消え
「男らしくありなさい」
母はそう言った。
此方には、そんなの似合わないと主張した。だけど、母はことあるごとに、此方にそう言い聞かせるんだ。
「あなたは男の子なんだから」
誰がそう決めたと言うのか。
誰がそうあるべきと言ったのか。
男でない此方なんて、必要がないのだろうか。
なら、もう一方の此方は何だって言うのか。
正直、母がいなくなって清々している自分がいるんだ。これで、誰も此方のことを否定しないって。
でもね、母の言葉は呪詛なんだ。
此方は、此方であることに罪悪感がある。
自分自身が、気持ち悪くてたまらないんだ。
どちらでもない此方は、果たして生きていていいのだろうかって。そう思うんだ。