コント【殺人現場に幽霊】
ゲラゲラコンテスト4の応募作品です。
よろしくお願いいたします。
刑事(刑)
幽霊(幽)
刑「この現場で殺人事件が起きて数ヶ月。依然として犯人は特定できずにいる。何か見逃したものがないかもう一度調べてみよう! 現場百回が先輩刑事の口癖だったからな」
幽「百回も調べないと犯人を特定できないなんて無能ですね?」
刑「誰だ! ここは立入禁止だぞ!」
幽「おや? 私の声が聞こえるのですか?」
刑「うわーー!! 男が宙に浮いている!」
幽「幽霊見たくらいで大声出さないで下さいよ」
刑「いやいや、大声出るよ。殺人現場に幽霊だぞ?」
幽「まだ昼間ですよ?」
刑「幽霊って昼間でも出るんだ」
幽「基本、暇ですから」
刑「殺人現場に幽霊って事は被害者か!? 殺された恨みで成仏出来ずに化けて出たんだな。よし俺がお前の無念を晴らしてやる! お前、犯人の顏を見たのか? 一体誰がお前を殺したんだ?」
幽「刑事さん、あなた……調書読んでないでしょう? ここで殺されていたのは五十過ぎの男性だった筈。こんなピチピチの幽霊とジジイを間違えるなんて刑事辞めた方が良いのでは?」
刑「ピチピチの幽霊て……」
幽「そんなことより早く犯人に繋がる証拠を見付けますよ?」
刑「はっ? あんたも一緒に探してくれるのか?」
幽「あなた馬鹿なんですか? 何故私がここに居ると思っているのです?」
刑「何で居るの?」
幽「捜査するからに決まっているでしょう?」
刑「あんたまさか……元刑事なのか?」
幽「違いますけど?」
刑「違うんかい!? ホント何で居るんだよ?」
幽「決まっているでしょう? 推理オタクだからです! 孤高の探偵と呼びたまえ」
刑「帰れ! いや、成仏しろ!」
幽「生前から事件が起きるとコッソリ現場に侵入して推理すると言う趣味を嗜んでいました」
刑「軽く犯罪犯しているぞ?」
幽「幽霊になってからは自由に警察署に出入りできるから未解決事件を推理し放題」
刑「押収物の保管庫がやけに寒いのはお前の所為じゃないだろうな?」
幽「この現場で起きた事件も容疑者が複数いるのにもかかわらず、誰のアリバイも崩せないと言う難事件……推理し甲斐があります」
刑「ほう? じゃあ、その推理をきかせて貰おうか」
幽「一番怪しいのは被害者の秘書であり愛人の鈴木栄子」
刑「鈴木栄子は被害者の愛人だったのか?」
幽「ええ。浮気が妻にバレて別れる別れないで揉めカッとなり犯行に及んだとみています」
刑「愛人だとは知らなかった。なにせ鈴木栄子は定年間近のおばさんだからな」
幽「定年間近のババアかよ! 社長秘書って漏れなく社長の愛人だって決まっているから栄子で間違い無いと思ったのに!」
刑「偏見が過ぎるぞ? 全国の社長秘書に謝れ!」
幽「栄子じゃないとすると……次男の悠人だな。ギャンブルで借金がかさみ被害者に金の無心をしてすげなく断られカッとなり犯行に及んだ」
刑「悠人には借金があったのか? 会社を立ち上げて成功してタワマンに住んでいるのに」
幽「タワマンに住んでんのかよ! 次男って漏れなく甘やかされて育って親のすねをかじるって決まっているのに勝ち組かよ!」
刑「だから偏見が過ぎるって! 全国の次男に土下座しろ!」
幽「悠人じゃないとすると……後妻に入った若妻の紗枝。多額の保険金を掛け犯行に及んだに違いない」
刑「紗枝は国外に居たと言うアリバイがあるし、そもそも被害者は多額の保険には入っていない」
幽「普通社長は一億円の保険に入るもんだろう? あと、若い後妻は漏れなく金目当てで結婚するって決まっている」
刑「今直ぐ全国の若い後妻に慰謝料払ってこい!」
幽「じゃあ、近隣トラブル?」
刑「田舎暮らしで半径二キロ圏内にお隣さんは居ない」
幽「病死だったんじゃ?」
刑「刃渡り30センチの包丁でぐさり」
幽「自殺かも?」
刑「背中からぐさり」
幽「もう、行き当たりばったりの無差別殺人しか考えられないけど?」
刑「投げやりだな? 後は俺たち刑事に任せて成仏しろや」
幽「志し半ばで死んだから、せめてひとつでも事件を解決したい」
刑「志し半ば……病気か事故で死んだのか?」
幽「事故だ」
刑「そうか……気の毒に……」
幽「連続殺人の死体遺棄現場の廃ビルに忍び込んで誤って転落死」
刑「何やってんだよ!」
幽「当時、新たな被害者かって話題になった」
刑「俺たちの仕事増やすんじゃねーよ!」
幽「ね~ね~いっしょに事件を解決してよ~相棒~」
刑「キャラがブレてるぞ」
プルルルル。プルルルル。刑事のスマホが鳴る。
刑「犯人が出頭した? 被害者と面識のない行き当たりばったりの無差別殺人!?」
幽「マジかよ! 適当に言った推理が当たったよ!」
刑「これで成仏できるな。ご愁傷様」
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