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プロローグ

 二一世紀の高校生杉崎栄一郎は普通の高校生だった。

 ただ、趣味の分野が武器や戦術などの方向、特に技術革新が盛んだった十九世紀後半以降、特に日露戦争が好きだった。

 同級生は動画かネット小説の俺TUEEEEEEEE系などのスキルチート系の小説が好きだった。

 だが、栄一郎は武器やその武器を使って最高のパフォーマンスをどう発揮させるか考える戦術が好きだった。

 だからめっきり減ってしまった架空戦記や仮想戦記を読み、同時にその時代の出来事を学び、どうしれば有利に日露戦争を戦えたか考えるのが楽しかった。

 交通事故で亡くなる時にも古本で手に入れた学研M文○の日露戦争上下巻を持っていた程だ。

 それだけに日露戦争への憧れが強く、明治期に生まれたかったと思っていたほどで死んだことが残念ではなく、二一世紀に生まれたことを残念に思っていた。

 それを神様が聞いたのであろうか、次に気が付いた瞬間、栄一郎は赤ん坊になっていた。

 いきなり体の自由が効かなくなるし体が小さくなって驚いた。

 しかも、明らかに日本人ではない小麦色の肌をしている。

 周りもハワイのような南国風の気候と建物だった。

 母親は明らかに肌の焼けた南国系の女性であり、そこまでは納得できた。

 だが、何故か周りには、丁髷を結っていたり、明らかに和服を着て刀を下げている日本人がいた。

 彼らの話を聞く限り、自分の父親はいま大事件の起こった日本に帰っており、間もなく戻ってくると。

 暫くして父親がやってきて、生まれ変わった栄一郎は驚いた。

 父親の顔をよく知っていたからだ。

 勿論二一世紀の父親では無い、

 歴史の教科書に載っている偉人、幕末明治を駆け抜けいくつもの本や映画、ドラマ、大河の主人公として描かれ日本人ならば誰もが知っているであろう有名人。


「ほう、この赤子が儂の息子か。小さいぜよ」


 土佐弁混じりに話す長身の後ろで髪を纏めた男。


「この坂本龍馬の息子に産まれたんじゃ。龍になれるよう、龍の子供、鯉の名を付けて鯉之助と名付けるぜよ」


 あの坂本龍馬だった。

 しかも近江屋事件を生き延び、海外へ進出、戊辰戦争が箱館政府との和睦で終了していて海援隊が大きくなっている。

 おまけに勝海舟と共同経営で会社を作り海龍商会を作り上げた。

 赤子だからといって龍馬は栄一郎改め鯉之助の横で話すのだから間違いない。

 これが異世界転生、いや時代遡行だから遡行転生とでも言うべきなのだろうか、まさかファンタジー好きでは無く、歴史好きのみに降りかかってくるとは栄一郎は思わなかった。

 驚いたが、栄一郎は、同時にわくわくした。

 誕生日は西暦1868年10月23日――明治元年当日に生まれた。

 明治を坂本龍馬と共に駆け抜け、日本を発展させ列強に誤するだけの国に発展させる。

 日本史上最もエキサイティングな時代を生きていけることに鯉之助は興奮した。


 だが、その後は苦労の連続だった。

 日露戦争と明治が好きで他の高校生や大人に比べて膨大な知識を持っていても、各事件の細かいところまでは覚えていない。

 スマホもグーグルも無いので調べようとしても明治にそんなものない。

 おまけに、龍馬の放漫経営がたたって海援隊は財政的にピンチになっている。

 そして技術が進歩し始めたとは言え所詮は一九世紀。

 中世ヨーロッパに比べればマシとは言え、かなり不便で衛生環境も生活も悪い。


 だがピンチはチャンス。

 鯉之助は一人で歩けるまで成長すると必死に動き回りはじめる。

 龍馬と海援隊の伝手を使い何とか事件の関係者と交友を結んだり、有益な発明者や技術者を援助して関係を作ったりした。

 そうやって海援隊を発展させ、同時に日本を発展させ、外交関係を良くし、いずれ戦うであろうロシアとの日露戦争に備えた。

 開戦までの三十余年の人生を使い、様々な手を打ってきた。

 そして今、鯉之助は待ち焦がれた日露戦争開戦を迎えようとしていた。

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