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狂科学者の苦手な場所


 ある日の夕食の席にて、

 「ハルト? お前も十歳になったことだし、王都の学園に行ってもらうぞ。」


 そうアランは告げた。

 不意打ち気味に言われたため少々思考停止するハルト。


 「......入学試験は?」

 「お前の頭が良いのは知っている。楽勝で通るだろうってこともな。」

 「試験の範囲は?」

 「算術、歴史、魔法、武術の四つだ。」

 「いや武術とか知らないよ?」

 「お前の馬鹿力があれば大丈夫だ。教官に怪我をさせないようにな。あと魔法で学園を吹き飛ばさないこと。」


 なんかやけに期待が大きいぞ。

 まあ歴史以外勉強することはなさそうだが。

 この世界の算術は基礎的な四則演算止まり。

 楽勝である。


 だが学園ねぇ......


 特に小学生時代は嫌な思い出しかない。

 前世では俺の趣味が誰とも一致しないせいでハブられていたしな。


 人間の不可解さもあの頃理解した。

 結局同窓会もなにも行ってないし、自立してから誰かと会うってこともなかったしな。


 第一、学園というのは個人の自由を著しく制限する。

 授業が暇だと消しかすを練っていたら怒られる。

 小学生レベルの勉強なんてボーッと聞いていれば分かるだろ。

 牛乳が体に悪いと主張するアホに栄養のなんたるかを丁寧に説明してやろうとちょっと難しい話をしたら意味わかんないとキレられた記憶もある。

 女子を泣かせたやつは徹底的に叩けなんて決まり、誰が作ったよ?

 論破されただけで泣き出す奴が悪い。

 

 それに、


 今世の俺は忙しい。

 魔法の使い方なんてそこらの錬金術師よりも理解しているし、歴史なんてどうせ都合の良い事しか教えない。

 

 素振りに費やす時間なんてないのだ。

 計算なんてお話にすらならない。

 魔力なんて最近は毎秒ごとに増えている。



 だが......まあ、


 父さんには今世で世話になったし少しは希望を聞いてやらんとな。

 「......わかった。行くよ。」

 ハルトは承諾した。




 その先の落とし穴には気づかずに。


 


 ****



 学園で友人の一人や二人つくって欲しいものだ。

 もうすぐ十歳になる息子を見て、そう思うアラン。



 見返すその目には不満の色がありありと浮かんでいる。

 私よりも賢いハルトのことだ。

 歴史が都合良くできていることや算術を学び直すことの馬鹿らしさで行きたくないのだろう。

 魔法もそこらの錬金術師を上回っている。


 確かにハルトは賢い。

 二歳にして魔法を習得し、どこから持ってきたのかわからない不思議な知識を駆使して様々なものを創り出す。

 控えめにいって国の宝だ。

 ハルトの石鹸や消毒液が流通してから、世の中の衛生状態は格段によくなった。


 だが、ハルトはまだ十歳。

 本来なら町中を駆け回って遊ぶ年齢だ。


 できた友達の中には生涯の付き合いになる奴もいる。

 何かと助けてくれることもあるしな。

 だから私はハルトを学園に入れたいのだ。

 友人を作る為の場として。



 「......わかった。行くよ。」


 声に元気がないな。

 図太いハルトも一人では心細いのか?

 「安心しろ。ユーフォリア孃も居るからな。」

 「......それを先に言ってくれ。」


 おや?

 ハルトの言葉遣いがいきなり荒くなった。 

 これが反抗期と言うやつか?

 初めて見るが......話に出てくるよりも意外とおとなしいのだな。


 

 

  


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