狂科学者の相棒、死す。
シリアス回?
サルマ商会から襲撃を受けて早数か月。
俺は相棒に最後の別れを告げていた。
物心ついてから親よりもそばにいた存在。
最初はお互い仲良くなかったが......それでもお前は特別な存在だったな。
俺が実験するときには必ず傍で見守ってくれ、時には快く協力してくれた。
四肢が無くなっても俺の実験に付き合ってくれた。
薬も結構注射したけど耐えてくれた。
腕を六本にしても怒らないでくれた。
仲間が死んでいく中、お前だけは俺と共にいてくれたよな。
体が削れていく中、最も元気だったのもお前だ。
ありがとう。
お前の残したモノは決して無駄にしない。
お前が俺にとって初めての友人で良かったよ。
じゃあな。
モルデモート一世
ピーと研究室の鳴り響く音。
計器の波が一直線になって停止する。
「......とうとう死んだか。」
出会ってから約七年。
前世にいたドブネズミの二倍以上生きた。
過酷な実験を繰り返していたのもあって奇跡的と言ってもいい。
最後には実質脳だけになっていたのも関係しているだろう。
勿論俺も治癒魔法で老化を遅らせるなど延命に手を尽くした。
だが老化は止められない。
生物が世代を重ね、遺伝子だけを残し、進化するための死。
より優れた種が生き残るための戦略。
魔法があるこの世界、止める方法もあるだろうが、今の俺には無理だった。
最終的に頭蓋骨が露出するほど改造を繰り返したその肉体にはもう、魂はない。
義眼に宿っていた光は消え、あれほど活発に動いていた腕も今は力なく垂れさがるだけだ。
俺は無言でそれを眺め、おもむろに作業台に置く。
殺菌し、一時的に液化した魔石を隙間なく流し込む。
琥珀にとらわれた古代の虫の如く四角柱の魔石に埋め込まれるモルデモート一世の亡骸。
それをハルトは壁に飾り付ける。
そして目を閉じ、黙祷する。
心に溢れるのは尊敬と感謝の念のみ。
発狂するほどの苦痛を伴う数々の実験に耐え抜いた唯一の個体であり、長年の相棒。
不遜で少々ずれた感性を持つハルトが初めて尊敬をした生命体。
「たくさんの思い出、ありがとな。」
そう一人、別れを告げたのだった。
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