狂科学者、本を所望する。
「今日こそ自分で開けて見せるっ!!」
ひたすらジャンプをして足の瞬発力を鍛え上げた俺はドアノブという強敵にとびかかる。
体重でカチャッという音とともに下がるドアノブ。つかんでいる手が抜けそうになるが、鍛えた握力でキープ。ぶら下がっている体全体を揺らしてドアを引っ張った。
「よしっ」
小さくガッツポーズした俺は床に着地して、食事とかでかなり見慣れた家の中を縦横無尽に歩き回り、今世の両親を探す。会話を聞いていて知ったのだが、どうやら父親はかなり大手の商会長らしい。女神が良い仕事をしてくれた証拠だ。家が広いぜ。
今までは親の出入りに便乗して部屋の外に出てもすぐに戻されてしまったが......これからは自由に出入りできるのだ。
数分てくてく歩き回れば、彼らはすぐに見つかった。
「パパ、ママ、歩けるようになった~。」
俺の外見は赤ん坊なのだ。素の口調で喋り出すわけにもいかず、羞恥に耐えながら頑張って可愛らしい口調を演じる。
まあこんなに流暢に言葉を話せる時点で変なのだが、そこには気付かないハルト。
「「ハルト!!??」」
歩けるようになったのか!? と早すぎる息子の成長に口をあんぐり開ける優しげな男、もとい今世の父親であるアラン。
「うん。頑張った。」
「頑張ったって、ハルト......普通の一歳児はまだ立てないししゃべれないんだぞ?」
「ね? 前もいったでしょう? ハルトは天才だって。」
なぜか自慢げな母さんに父さんは頷いて、
「そうだな......よし、今日はパーティーでも開くか!」
「わーい」
その場のノリに合わせて、棒読みだが歓声を上げるハルト。
「そうだ、ハルト?」
「なに?」
「何かほしいものはあるか? プレゼントだ。」
「いろんな知識についての本が欲しい!」
「......あ、ああ。わかった。一歳でそこまで考えられるとはすごいぞ、ハルト。」
おい、何でちょっと引いたのだ我が父よ。