狂科学者の親不孝。
「む......ここは......」
どこだ?
確か私はハルトの様子を見に研究所まで行って......
「あ、お父さん。起きた?」
声のする横を見ると、そのハルトがなにやら作業をしていた。
金属の小さな板を沢山穴が開いている作業台の穴へ出し入れしている。
「ここは......研究所か?」
「そ。お父さん急に倒れたからびっくりしたよ。」
ふ、ふふふ......
思い出してきたぞ......
「びっくりしたのは私の方だ。何だあの兵器は? どうやって作った? なぜ作るときに私へ一声かけなかった?」
質問したいことが尽きないので、取り敢えず問い詰めて全て吐かせよう。
****
「......というわけ。」
ハルトを問い詰めた私は頭を抱えた。
思った以上に息子の開発したものが厄介な代物だったのだ。
おまけにハルトの思考が異常であることに気付いたのもある。
ドラゴンの鱗を数十枚ほど貫通できる遠距離魔法兵器。
攻城兵器として戦争で使われてもおかしくない破壊力だ。
破城槌など相手にもならない。
ハルトはドラゴンを狩る我が弟を思って開発していたらしいが、やりすぎだ。
魔力さえあれば運用できるこの兵器、少しでも漏れたら国が目を付けないわけがない。
良くて差し押さえだろう。
悪ければ幽閉だ。
まあハルトだけならば普通に逃げ出せるだろうが。
こいつの魔力は世界一といっても過言ではない。
というか逆にハルトを超える魔力の持ち主なんていないと断言できる。
親心から忠告してもハルトの奴、
「差し押さえられるかもしれないなら、自爆装置でも組み込んでおこうか? 悪用される前に城ぐらい余波で瓦礫の山にできると思うよ?」
なんて平然と言うのだ。
城を吹き飛ばしたらダメだろうが!?
大商会の会長人生を過ごして来て、感情の操作は当たり前のようにできるが、これは抑えられなかった。
ハルトは興味のためなら世界すらも壊すだろう。
なんの証拠もないが、そう確信できるのだ。
途中で入ってきた新入り助手とやらもハルトの手術を受けて無くした足の代わりに義足を自由に操っている。
ハルトは十にも満たないのにもかかわらず、生命の理にまで手を伸ばしているのだ。
何でこのように育ったのかはわからない。
だが、もう止めることは不可能だろう。
ハルトは止まらない。
例え無人島に流されても魔法を惜しみ無く使って生き延び、研究を続けるだろう。
せめて国に目をつけられないように。
無力な私は神にそう願うしかないのであった。
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