狂科学者の楽しい兵器開発(5)
光は波であり、粒子である。
この理論は比較的有名だ。
某人型決戦兵器が出てくるアニメでは、敵生命体を構成する物質が波と粒子の特性を併せ持つもだという設定があったな。
まあ全身が素粒子でできている不思議生物は置いておいて、俺は光の特徴に目をつけた。
光というのは波であり、光子という素粒子だ。
素粒子は大きさがあるとかないとか色々あるが、俺は波としての性質に目をつけた。
電磁波、X線、γ線等、前世で知られていた波は多い。
波は波長が短いほど高エネルギーを内包し、物質としての特徴が強くなってくる。
高エネルギーを持つ波は放射線で有名だが、照射した先にある分子を破壊または傷つけることが可能だ。
何が言いたいのかっていうと、
俺はこれまで電子という素粒子を物質として捉え、発生させてから集束し、打ち出すという面倒くさいことをしていた。
陣のリソースを無駄な事象を顕現させるためだけに消費していたわけだ。
単にエネルギーの波動を打ち出せばそれで問題なかったのにも拘わらず。
そりゃあこの武器は性質上魔力消費は激しい。
魔石数百個分の容量を持つバッテリーを数十個まとめて食い潰す。
そのエネルギー量は核爆弾にも匹敵するだろう。
にも関わらず、この武器の出力はそこまでの大きくない。
精々核半分ほどだ。
残りの半分は見事に無駄だった。
そしてもう一つ気付いたことがある。
いや、気付いたというか思い出した。
生き物は脆い。
遺伝子が傷ついただけで内部から狂うし、酸素供給が絶たれただけで生命活動を完全に停止する。
神経が一本切れただけで運動能力に深刻な支障を来すし、場合によっては死亡する。
そしてドラゴンも生物だ。
存在値という訳のわからないシステムを導入されていても、生物だ。
俺だって首を飛ばされれば死ぬだろう。
癌になれば治さない限り治らないだろう。
目を潰されても再生はしない。
大量出血でも死ぬだろう。
俺が思うに存在値というのは許容能力を数値化したものだ。
どれだけの外部からの物理ダメージを無視できるか、
どれだけの変化を受け入れられるか、
どれだけエネルギーを増大させられるか。
俺やドラゴンはその数値を訓練や年月を経て向上させられるだけだ。
決してミュータントにありそうな高速で再生する能力ではない。
今の俺は向上し続けるダメージを増大し続ける耐久性で許容している状態だ。
だから、
分子レベルでの異常、自壊には対応できない。
外的要因は弾けても、肉体の中から起きた異常には存在値のシステムは対応していない。
直接壊すのではなく、過剰なエネルギー入力によって分子レベルで自壊を誘発させる。
魔力ではなく波動力学。
この世界で異質であるがゆえに対応されにくい。
ようやく形ができてきた。
そう思い、ハルトは一人ほくそ笑んだのだった。
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