狂科学者、世間の狭さを知る。
騎士を三人ほど蹴り倒してすっきりしたハルトは、応接間にて公爵とソファーに向かい合わせで座っていた。
向こうがさっきから無言なので、出された紅茶をちびちび飲んでいると、
公爵はいきなり佇まいを正して、頭を下げながら、
「疑うような真似をして、すまなかった。」
一気にしおらしくなったぞ?
貴族ってもっとこう、高慢ちきな奴しかいないと思っていたが、少し認識を改める必要がありそうだ。
それならば俺も態度を改めた方がいいな。
「わかっていただけたならそれで十分ですよ。」
「感謝する。......ところで、礼がまだだったな。」
いや、要らんから今すぐ解放しろ。
「いえいえ、気にしないでください。」
「だが、わが一人娘を救ってくれた者へ礼をしないのは公爵家の恥となる。何か望みはないか? 疑ったことへの詫びも含めてわしの力が届く範囲でかなえよう。」
ふむ......今のところ不足はないし、
「では私の父が経営をしている二コラ商会を御贔屓ください。それで今回の件は流しましょう。」
親孝行をするに限るね。
これで俺の立場がさらに安定するからな。
なんせ国で二番目に偉い公爵家が後ろ盾になるのだ。
下手な貴族より強いに決まっている。
「ふむ、お主はアランの息子だったのか。」
お前からお主に昇格したようだ。
てか、
「私の父を知っているのですか?」
「そうだ。アランとわしは学園時代の旧友でな。アランが王都ではなくここに住んでいるのもその縁だ。その息子を疑ってしまうとは......すまない。」
世間ってせまいな。
まあ新しい情報も得られたし、
「それでは」
「まて、」
お暇します、と言いかけて突然入るストップ。
まだ何かあるのか?
「アランの息子であるお主の強さを信頼したうえで、折り入って頼みがある。」
え、絶対面倒くさい頼みだろ?
「わしの娘、ユアの友達になってやってほしい。」
ほら。
「知っての通り、ユアはまだやんちゃでな、時々いつの間にかこっそりと屋敷の外へ遊びに行ってしまうのだ。」
おい、門番仕事しろ。
「だから、せめて時々で良い。お主がユアと一緒に行動してくれれば安心できるのだ。」
「私は結構忙しいのですが......」
「そこを何とか。」
「いえ......」
「頼む。」
いやどんだけ娘に甘いんだよっ!!??
しかしこの公爵......いや過保護親父か、は引きそうにない。
数分のにらみ合いの後、折れたのは俺だった。
「......せいぜい七日に一日。それが限度です。」
「感謝する。」
はあ、なんで子供のお守りをしないといけないんだか......
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