狂科学者、目をつけられる。
「ほら、こっちだ。」
そういいながらユアの手を引き、雑踏をくぐり抜ける。
この街は王都に近いのもあって割りと人口が多い。歩き慣れていない奴はボケッとしていると普通にはぐれる。俺達みたいに幼くて背の低い奴は尚更だ。
「わっ、ちょっと待ってよハル君。」
ハルトを略してハルと呼ぶユア。
なんか懐かしいな。
「ほれ、ここだろ?」
「うん。ハル君ありがとう!」
そんな純粋な笑顔で感謝されるとむず痒いぜ。
そう言ってタタタッと領主館に帰宅するユア。
さて、もういいだろう。
門の向こうへ行くユアを見送った俺は踵を返し、研究所へ向かう。
大分遠回りになってしまったな。
さて、今日はなんの研究をしよう?
人間に魔石の粉末を少しづつ投与するのはどうだろうか。
もしかしたら魔力が増えるかも。
義眼もそろそろ着手した方がいいか?
光受容体の微細化がネックなんだよなぁ......。
そろそろ硝酸の量産も始めないといけないし、やりたいことが多すぎる。
困ったもの......
「あ、あの子!」
背後から聞こえる、ここにはいないはずの声。
この声はユアか?
だが何でここに?
疑問はつきないが、よく判ったことは、
「さっきぶり、ハル君!」
「御屋形様が面会をお望みだ。一緒に来てもらおう。」
面倒なことになったということ。
予想通りというかなんというか、
貴族に目をつけられたらしい。
恩を仇で返されるというのはこういうことを言うのか......。
はあ、
だるいな......。
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