狂科学者、腹をくくる。
「大丈夫か?」
そう言って手を差し出すも、
「ヒィッ......あ、ありがとう。」
お礼を言いつつも、なぜかさっきのごろつきより恐ろしいものを見たと言わんばかりに怯えられた。
ハルトの精神に20のダメージ。
(やべ、制限を戻し忘れた。)
叔父のベテランドラゴンスレイヤーすら威圧できる存在感を一割とはいえ、駄々漏れにしていたと言う致命的なミスに気付き、慌てて制限を戻すハルト。
「これで大丈夫だろ? 俺はハルト。よろしく。」
そして再度手を差し伸べれば、突然消えた圧迫感に困惑しながらもハルトの手を握る少女。
「えっと、私の名前は......ユーフォリアです。ユアって呼んで。」
服装や雰囲気から見て、それなりに地位のある家柄なのか?
まあいい、
「ところでどうしてここにいたの?」
「えっと......お家の近くをお散歩していたら騎士の人がどっか行っちゃって、その間に......」
そこに転がっている三人に引っ張ってこられたと。
取り敢えず判ったことがある。
その前に、
「ユアのお父さんはここの領主なのか?」
「? うん。」
ビンゴ。
ユアが凄まじく近付きたくない所の子だということだ。
先ほどユアは騎士がいなくなったと言った。
つまりそれまで付いてきていたということ。
十中八九、護衛だろう。
つまりこの領地を治めている領主の娘だ。
名前も聞き覚えがある。
年齢もマッチするのでまずまず間違いはない。
今の俺は端から見る限りとんでもなく魔力と知識を持っているだけのただのガキだ。
何も武功を挙げていないのだから、貴族のような欲深い連中には金の成る御しやすいガキにしか映らない。
普通に舐められる。
そんなことがないようにダディと叔父さんが全力で俺の存在を隠そうと義手や石鹸の開発者を匿名にしているわけだが、この現状、領主の人格に依るが非常に危ない。
だが領主の娘を放置して何か災難が降りかかるのも御免だ。
ここは腹をくくって送り届けるしかないだろう。
「家までの安全は保証してやるからついて来て。」
俺は研究所に出勤しようとしただけなんだけなんだがな......。
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