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狂科学者、人助けをする。


 「~♪」


 鼻唄を歌いながら研究所への歩き慣れた道を進んでいくハルト。


 ようやくバカみたいな負荷をかけるトレーニング用魔道具に慣れたのだ。

 今朝起きると昨日まで感じていた動きにくさが無く、カフェイン中毒の頭痛に似たあの魔力欠乏の怠さもほぼ感じない。


 起きた瞬間、久々の快適な気分に歓声を上げた程だ。

 二つ隣の部屋にいる両親に怒られたが、ハルトのテンションは一ミリも落ちなかった。


 嬉しさの余り両親の目の前で腕輪を外そうとし、ほんの少し漏れ出た魔力の膨大さにアランが慌てて付け直させた程ハルトの魔力は増えていた。というより削られ続ける状況に適応するために超回復した結果、常に身体能力と魔力総量が上がり続けるヤバい肉体に進化してしまったのである。現在のハルトは軽い握手で相手を捻り潰せるのだ。これでマッドの血が騒がないわけがない。


 しかしこれでは外で必要に迫られて腕輪を外した瞬間、一瞬で国から危険人物扱いされてしまうので、そこそこの力までは出せるように制限を自由に調節出来るように改造もした。


 「やめてッ!」

 そういうわけで機嫌良く歩いているハルトの耳に突然届いた甲高い悲鳴。


 何事かと耳を澄ましてみるとどうやら路地裏の方でなにかが起こっているようだ。

 


 「なんだ?」


 少し気になったハルトは路地裏に入っていった。




 ****


 「おい、嬢ちゃん。これから俺様達と一緒に良いことしようぜぇ。」

 「そうそう、良いことだぞぉ?」

 「そんなに怖がると興奮するじゃねえかウヒヒッ」


 「あ......あっちいってっ!」


 わぁお。

 いかにもチンピラという口調のあんちゃん達がいたいけな少女を取り囲んで下卑た面を並べてるぜ。

 お巡りさんこっちです。


 あ、この世界では衛兵か。

 ややこしいな。



 「さて、」

 どうしよう。

 見捨てるという選択肢も無いわけではないが......このままこの少女がオイタされるのをじっと見ているというのは何とも胸くそが悪そうだしな......汚された少女何て言うのは大人な動画の中だけで十分だ。


 ......と結論付けたは良いが、

 どうやって仲裁したものか......


 やっぱ実力行使か?

 今の俺だったら少し制限を緩めるだけで冗談抜きにちょっとした重機並みの力が出せるぞ。

 

 いやいやそんな脳筋っぽい解決法は最終手段だ。

 俺は天才科学者なんだ。すぐに文明的かつ平和的にこの状況を納められるはずっ......!




 ......。


 うん、無理だ。

 なんにも思い付かねぇ。

 


 「あ」

 ヤバい、あいつ等少女の服を脱がせにかかっていやがる。


 仕方ない、今回だけは力でごり押そう。緊急事態だ。

 ということで制限一割解除。



 タンッという音が響き、ハルトは宙を舞う。


 「とりゃ。」

 と気の抜けた掛け声と共に錐揉み回転をして空中回し蹴りを放つ。


 存在自体を鍛え上げられた肉体は軽々と本人の意思を実現し、一瞬で不埒者達の意識を刈り取る。

 そしてフワリと降り立ち、

 「大丈夫か?」

 

 怯えている少女に話しかけた。




 

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