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狂科学者の予想外

随分と間が空いてしまった……

薄々感じている方、確信している方もいると思いますが今後執筆活動が仮死状態になります

もしかしたらたまに更新とかしているかもしれませんが。

二年後には本格的に活動再開できるといいな……

 関節が擦れる音と共に勅令を受けた殺戮機械達が疾走する。


 人工筋肉による柔軟な機構と野生の思考回路に従い、機械とは思えぬ生物的な動きで指定された領域内を縦横無尽に駆ける。



 ヒトのそれを模した頭脳は学習、調整された無数のノードを通して世界を認識し、設定された獲物を探し求めていた。


 

 

 「グギャッ!?」

 「グゴゴッ!?」

 「グフッ!?」


 ある場所で一体。


 またとある場所で十体。


 また別の場所で二体。



 ゴブリンと人が呼称する魔物が死んでいく。







 驚き。

 それは予想外の状況に対して生物が見せる情動であり、時として様々な感情が含まれる反応。


 低いながらに知性を持つ彼等は死という代金とともに、未知への恐怖と命を削る痛みを感じていた。




 突然現れ、何の躊躇いもなく襲いかかってくる、手足のやたら細い獣。

 だが生気を全く感じられないのっぺりとした外見。

 彼等の脳はそれを理解できなかった。

 知っているわずかな知識から類推し、答えを出力する数秒。



 結果は出なかった。




 わからないという解さえも出せなかった。

 

 当然ではある。

 



 思考する数秒のうちに首を貫かれ、踏み潰されたのだから。

 

 


 その細い指は鋭利な刃物のように易々と肉を引き裂き、骨を破砕する。



 木から削り出したのだろう棍棒を構えていたものも、愛用の武器ごとなます切りにされ、血の池となる。






 範囲内の対象物は皆殺し。

 その命令の下、『殺戮機獣(スロータービースト)』達は殺戮を繰り返した。


 




 瞬く間に領域内のゴブリン達は()()され、数を減らしていく。

 

 数体は最小限の損傷で仕留められ、回収されていく。



 

 

 

 そして、






 最後の一体が爆散した時、それは起こった。




 去ろうとする『殺戮機獣(スロータービースト)』の真下が急激に盛り上がり、その胴体を打ち据える。



 

 『規定数以上の非人間型魔力反応を感知』

 『輪廻(リーンカーネーション)機関(・ドライブ)再起動』

 『防衛機能を解放』

 『駆除を開始します』



 

 即座に体制を立て直した『殺戮機獣(スロータービースト)』の視界に映るのは、土に塗れた巨大な腕。

 学習内容に該当しない状況から本能はデータ収集のための闘争を選択、その凶悪な指で未知を両断せんと飛びかかる。




 だが、向こうはそれよりも速かった。


 


 その五指は圧倒的な速度で『殺戮機獣(スロータービースト)』を捉え、易々とその手中に捕獲、同時に力を強め始める。



 想定されていない圧力に耐えきれなかった外骨格は歪み始め、関節が破壊されていく。

 凶器の指は折れ、潤滑油が流れ出し、人工筋肉は擦り潰され、悉く機能を潰されていく元殺戮機械。

 


 『獲得データ転送』

 『敵性体対処不可能』

 『迅速な処分を要請』

 『高出力エーテルキャノンの使用を提案』

 『緊急要請受諾完了』

 『座標転送完了』

 『制御システム破棄開始』

 『自壊完了まで0.002s』

 その本能の裏で走るプログラムは物理的な死を認識し、最後の判断を下した。

 


 統率用に作られた施設は魔力炉から膨大な魔力を汲み上げ、座標マーカーを元に多重魔法陣を構築、砲身の向きを決定、魔力収束を開始する。



 そして、


 


 『付近に高魔力反応を検知』

 『脅威度を三段階上方修正します』

 『対魔障壁展開』

 『衝撃吸収機構全開』


 

 打ち出される光の束



 『魔力解析開始』

 『第一級禁忌魔導兵装と断定』

 『脅威度を七段階上昇修正します』 

 『推定出力、当機では防御不可能』

 『左腕大破を確認』







 それは魔力の障壁を易々と突破、地から生えた腕を『殺戮機獣(スロータービースト)』ごと消滅させたのであった。

 

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