狂科学者は仕事を知る
「......以上でございます。」
成程。
ボルグの話を一通り聞き終えたハルトは思考を巡らす。
主な領主の仕事。
まあ、当たり前だが領地の統治。
領民から徴収した税のうちから規定額を国へ納める。
この領地の場合だと、最近まで領主不在で代官が代行していたため、領民、代官、国でそれぞれ取り分が4:1:5ぐらいだったらしい。
通常は領民、領主、国で4:4:2だが、強欲な貴族だとその分領民の取り分が減るといった感じだ。
それなりに税は重い模様。
加えて治安の維持。
今までは自警団を作って対処していたらしい。
......これは直ぐには変えられないな。
人材不足なのが現状だ。
以上の2つ。
......意外と少ないな。
少し気になってボルグから聞いてみると、どうやら貴族が忙しそうにしていることの半分以上は見栄張りに割かれているとのこと。
パーティーの主催や、準備。
力関係から来る大人な金銭のアレコレ。
利権の交渉。
書類仕事は多いが、それでも二日に一日程度やれば問題ない程度の範囲らしい。
つまり、
意外と面倒臭くない。
確かに、何らかの功績でただ貴族になったものは何処かの陣営に入らなければーとか、何処どこにご機嫌取りの賄賂を送らなければー等と苦労するんだろうが......あいにく俺は国王の作った出来レース上で貴族となったからな。その分障害も少ないのだろう。
バックに国王がいる。
その事実が俺に振る舞いの自由を許すわけだ。
それより......
「......これが書類......何だよな?」
そう確認気味にハルトが言いながら、つまみ上げた紙に書かれているものは......治水工事の申請。
机の上に散らばっているものには税収の帳簿等もある。
書かれているのは非常に簡潔。
何処で何をするか。
今年何処どこの村で取れた作物はこれだけの量だ。
この書類を作成したのはどこの誰で、承認するのは誰か。
それだけ。
非常に簡潔で、わかりやすいし、面倒くさくなくて良い。
しかし......
「......随分と統一性がないな。」
「はあ......そうですかね?」
よく分からないと首を傾げるボルグ。
気付かないか?
「取り敢えず......これでは非効率だ。」
「はあ......。」
ま、理解する必要はない。
実際にやってみれば理解できるだろうし、これらに認可を出す程度、やる必要性自体無くなるかも知れないのだから。
取り敢えず......書式の統一はさっさとした方がよさそうだ。
建物の改築もしなければならないし......忙しいな、全く。
覚悟していたとは言え、
貴族になって浮上してきた案件に早速面倒くさくなってきたハルトであった。
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