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狂科学者の出発

 お披露目パーティーの翌日、



 貴族となったハルトはメルガルト領の元研究所本部跡地―――現在は「充填屋」として機能し、最低限の生活空間と通信機構のみを備えている小さめの建物があるだけの広い土地だが―――に戻ってきていた。


 

 そこに残していた、資材とデータの塊である「車のような何か」を取りに。




 「いやはや......ここから引っ越す日が来るとはな。」


 この世界に転生したときは思いもしなかった。



 十数年暮らしてきた土地を離れるわけで、少し感慨深いものを感じているハルト。


 両親はここに残るそうなので、実質科学者一名プラス魔改造人間軍団でやっていくことになる。




 「集合ー!」


 そう掛け声をかければ、片付け作業を終え、雑談をしていた職員達が集合する。




 さて、

 ここには誰を置いていくか。

 支部の方も従業員で回しているし、別に金で雇った正規の労働者でもいいんだが......


 「三番。お前はここで留守番だ。」

 「まじっすか。」

 

 ここは三番を採用しよう。


 「お前の中枢は施設に固定する。なに、案ずるな。お前の仕事は充填屋の経営と防衛だけだ。魔力は潤沢にあるし、中枢が死なないよう外殼の強化もしてやる。給料も出すぞ。」


 こいつは精神体だが、中枢を端末の中ではなく外に固定することで縛り付けられる。

 よって施設から長時間離れる恐れがない上に、殺される心配がない。

 


 防衛に関しては人間の判断が必要な非常事態以外要らないし、「充填屋」自体ほぼ自動化されて客が勝手に金を入れて勝手に金額の量充填している。

 入れた金額以上の量充填することはないし、時々ある質問や難癖、ないと思うが故障の対応以外することはない。

 そして端末を遠隔操作して外出することは可能であり、給料も結構な額出る。

 恐らくこの世界でも最上位の待遇なのではないだろうか。



 人間を捨てさせたからな。

 この程度は優遇してやらなければバチが当たると言うものだ。




 そういうわけで、三番がもっとも適任なのだ。



 「ということで三番、ささっと固定するから出せ。」

 「はあ......わかったっす。」



 諦め顔の三番。


 かぱっと言う音とともに開く後頭部。


 そこから金属製の球体を摘まみだし、ハルトに手渡す。



 

 それを受け取り、

 「他は全員乗り込んでおけ。半日ほどは暇になるだろうから時間を潰せるものを持ち込んでもいいぞ。すぐに出発するから、置いていかれないようにな。」



 「「「「「「はい!」」」」」」




 そして「車のような何か」に乗り込んでいく職員達。



 抗議虚しく中枢を施設の中心へ厳重に埋め込まれ、内心涙目の三番。



 引っ越した後の計画について思考を巡らし、にやけ顔が止まらないハルト。






 「出発だ。」

 大量の魔力が回路へ流れ込み、低い駆動音を響かせながら回り始める複数の車輪。

 前進を始める巨体。



 唸りだした巨大な金属のオブジェに戦き、野次馬根性丸出しで見守る街の住人達。




 様々な思いが交錯するなか、「車のような何か」は走り出したのであった。

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