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狂科学者の御披露目ぱーてぃー(4)

 「......でね、ハル君......?」

 「......ん? この魔力は......。」





 貴族達に今か今かと近付く機会を伺われているハルト。


 しかし公爵令嬢と仲睦まじく話しているため中々隙を見せない。





 それが、

 不意に相手との会話を断ち切って首を回した。

 同様に何かに気付き、それを探すように横を向く公爵令嬢。




 然り気無くだが、ハルトを観察していた者達はビクッと震えた。


 ポーカーフェイスが上手くない者は物理的に。

 なんとか表情を繕うことができた者は精神的に。




 その目の瞳孔の奥で光が無機質に瞬いたような錯覚を覚えて。



 ......いや、そんなわけがない。

 人の目は光らないのだ。




 そう思い込むことで必死に己の中の恐怖を沈める。





 彼等は未だに囚われていた。

 常識と言う名のフィルターに。


 いや、

 彼等を責めるのも少し酷なのかもしれない。

 むしろ向こうの方が異常なのだ。


 誰もが進んで己の目に魔法陣を刻むなど考えないのだから。



 それは神話に語られる魔眼であり、

 その何れよりも遥かに論理的な眼。



 人為的に超分子で形作られた器に論理的な情報という異物を割り込ませ、共存させる。



 言葉で表すのはとても簡単だが、実際にやるとすれば様々なリスクを覚悟しなければ不可能なその業。

 


 それが目の前にあると誰が咄嗟に思い付けようか。









 

 ......まあ、それを成した張本人にとっては何でもない、ただの実験の一貫だった訳だが。



 己の身体を差し出し、好奇心を満たす。

 そのようなことをあっさりと行える程度には何処かずれているのだろう。




 

 そんなやや狂っているハルトだが、周囲を見回して直ぐに一点を見つめ、まっすぐ歩き出す。


 思わず移動して道を開ける貴族達。



 その先にいるのは、礼服に身を包み、眼鏡を掛けた壮年の男性。



 そして、袖から覗く右手は、巧妙に偽装されているが、人の物ではない、作り物のそれ。



 「叔父さん......どうしたんですか? 義手の調子でも悪くなりました?」


 そう似合わぬ敬語で声を掛ければ、少し苦笑しながら伊達眼鏡を外す。


 「いや、甥の晴れ姿を見に来ただけだよ。それにしても、一応目立たないように動いていたんだけど、どうやってわかったんだい?」

 「周囲にある義手の製造番号に覚えのあるものがあっただけですよ。」

 



 製造番号000002(ライト)(メカニカル)(アーム)

 この世界でハルトが二番目に作った右の義腕。

 改良を重ね、現存するなかで最も性能が高い義手の持ち主。



 

 


 つまりハルトの叔父であった。


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